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事業所得とは?個人事業主が知っておきたい基礎知識と税金の仕組み

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個人事業主として新たに事業を始めると、税金の問題は避けて通れません。特に「事業所得」は、個人事業主の収入に直接関わる重要な概念です。この事業所得に基づいて、所得税や個人事業税、個人住民税などが計算されます。

しかし、事業所得の定義や関連する税金の仕組み、確定申告の方法など、初めて事業を始めた人にとっては複雑に感じるかもしれません。

そこで、これらの点について、個人事業主向けに分かりやすく解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.事業所得とは
    1. 1.1.事業所得と給与所得の違い
    2. 1.2.事業所得と雑所得の違い
    3. 1.3.雑所得に該当する収入の例
    4. 1.4.事業所得の計算方法
  2. 2.事業所得にかかる税金
    1. 2.1.所得税
    2. 2.2.個人事業税
    3. 2.3.個人住民税
  3. 3.事業所得を確定申告する際の注意点
    1. 3.1.青色申告と白色申告の違い
    2. 3.2.適切な経費計上 
  4. 4.まとめ

事業所得とは

事業所得とは

事業所得は、個人事業主が事業から得た所得のことを指します。自ら独立し、反復継続して商品やサービスを提供する業務を行い、その対価として得た所得が事業所得に該当します。

例えば、フリーランスのWebデザイナーとして活動している場合、クライアントから受け取る報酬が事業所得になります。また、個人で飲食店を経営している場合、お客様から受け取る代金も事業所得です。

事業所得と給与所得の違い

事業所得の他にも、対価性のある所得があります。事業所得との違いが問題になるのは、主に給与所得と雑所得です。

そこで、まず、事業所得と給与所得の違いについて説明します。

給与所得は会社員として雇用主から受け取る給与のことを指します。一方、事業所得は個人事業主として自ら事業を営んで得た収入です。

事業所得と給与所得の計算方法の最大の違いは、経費の取り扱いにあります。給与所得の場合、経費を差し引くことができない代わりに、給与所得控除という一定の控除が自動的に適用されます。しかし、事業所得の場合は実際にかかった経費を自ら計算し、収入金額から差し引くことができます。

また、税金の納付方法も異なります。給与所得者の場合は、毎月の給与から所得税が天引きされる源泉徴収制度が適用され、確定申告をする必要はありません。一方、事業所得者は自ら税額を計算し、確定申告を行う必要があります。

事業所得と雑所得の違い

事業所得と雑所得も、しばしば混同されがちです。雑所得は、他の所得区分に該当しない所得のことを指します。

事業所得として認められるためには、一定の規模があり、反復継続して得られるものであることが要求されます。それをみたさない所得、つまり比較的小規模で不定期な所得は、雑所得となります。

雑所得に該当する収入の例

雑所得は、他の所得区分(利子、配当、不動産、事業、給与、退職、山林、譲渡、一時所得)に該当しない所得です。典型的な例として、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業収入(原稿料、講演料、シェアリングエコノミー関連収入など)があります。

事業所得との区別が曖昧な場合もあり、慎重に判断しなくてはなりません。雑所得の特徴は、規模が小さく、継続性が低いことです。

例えば、不定期な副業収入、一回限りの原稿料や講演料、非継続的なインターネットオークションの利益などが該当します。

これらは事業としての規模や継続性が認められないため、通常、雑所得として扱われます。

事業所得の計算方法

事業所得の計算式は以下の通りです。

事業所得 = 総収入金額 - 必要経費

必要経費とは収入を得るために必要な費用のことです。具体的には、売上原価、従業員の給与・賃金、地代・家賃、減価償却費などが含まれます。

例えば、年間の総収入が500万円で、必要経費が200万円の場合、事業所得は以下のように計算されます。

500万円 - 200万円 = 300万円

この300万円が、課税対象となる事業所得となります。適切な必要経費の計上は、正確な事業所得の計算と適切な納税額の算出につながるため、重要です。

なお、必要経費の計算上、家事上の経費は含まれません。事業との関連が明確に区分できる場合は、その部分に相当する金額を必要経費として計上できます。


事業所得にかかる税金

事業所得にかかる税金

事業所得に関連する主な税金は、所得税、個人事業税、個人住民税の3種類です。これらの税金は、事業所得に基づいて計算され、それぞれ異なる特徴と計算方法を持っています。

以下、各税金について詳しく解説します。

所得税

所得税は、個人の所得に対してかかる国税です。事業所得に対する所得税は、累進課税方式で計算されます。

所得税の計算方法は以下の通りです。

  1. 事業所得から所得控除を引く
  2. 課税所得金額を計算する
  3. 課税所得金額に応じた税率を適用する

例えば、事業所得が300万円で、各種所得控除の合計が100万円の場合、課税所得金額は200万円となります。

所得税の速算表に基づくと、課税所得金額が195万円~329万9,000円の場合、税率は10%となります。

【所得税の速算表】

課税される所得金額

税率
控除額

1,000円 から 1,949,000円まで

5%

0円

1,950,000円 から 3,299,000円まで

10%

97,500円

3,300,000円 から 6,949,000円まで

20%

427,500円

6,950,000円 から 8,999,000円まで

23%

636,000円

9,000,000円 から 17,999,000円まで

33%

1,536,000円

18,000,000円 から 39,999,000円まで

40%

2,796,000円

40,000,000円 以上

45%

4,796,000円

したがって、所得税額は以下のように計算されます。

200万円 × 10% - 9万7,500円(控除額) = 10万2,500円

この10万2,500円が、納付すべき所得税額となります。

個人事業税

個人事業税は、事業を営む個人にかかる都道府県税です。現在、法定業種は70の業種があり、ほとんどの事業が該当します。

個人事業税の課税対象となる主な事業は以下の通りです。

  • 物品販売業
  • 不動産貸付業(所得類型は事業所得ではなく不動産所得)
  • 製造業
  • 請負業
  • 料理店業
  • 医業
  • 弁護士業、税理士業などの専門サービス業

個人事業税の税率は、事業の種類によって異なりますが、一般的な事業の場合は5%です。ただし、事業所得から290万円の控除があるため、年間の事業所得が290万円以下の場合は課税されません。

個人住民税

個人住民税は、1月1日現在の住所地の都道府県および市区町村に納める税金です。前年の所得を基に計算され、均等割と所得割の合計額となります。

個人住民税の計算方法は以下の通りです。

  1. 総所得金額等から所得控除を引く
  2. 課税所得金額を計算する
  3. 課税所得金額に税率(一律10%)を掛けて税額控除額を引く
  4. 求めた所得割額に均等割額を加える

例えば、課税所得金額が200万円の場合、所得割額は以下のように計算されます。

200万円 × 10% = 20万円
 
これに均等割額(標準的には年間5,000円)を加えた額が、納付すべき個人住民税額となります。

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事業所得を確定申告する際の注意点

事業所得を確定申告する際の注意点

事業所得がある場合、確定申告が必要となります。確定申告の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 年間の収入と経費を集計する
  2. 所得金額を計算する
  3. 所得控除を適用する
  4. 税額を計算する
  5. 申告書を作成し、提出する

確定申告の際には、特に以下の点に注意が必要です。

青色申告と白色申告の違い

確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。両者の主な違いは以下の通りです。

青色申告と白色申告の記帳の違い   

青色申告の場合は、複式簿記による詳細な記帳が求められます。

日々の取引を借方と貸方に分けて記録し、現金出納帳、売上帳、仕入帳、経費帳などの帳簿を作成しなくてはなりません。この方法により、事業の財務状況を正確に把握します。

一方、白色申告の場合は、収入金額と必要経費を記録する程度の簡易な記帳で構いません。

青色申告のメリット

青色申告には以下のようなメリットがあります。

  • 最高65万円の控除(青色申告特別控除)が受けられる
  • 青色事業専従者給与を必要経費にできる
  • 赤字を3年後まで繰り越して控除すること(繰越控除)が可能
  • 貸倒引当金を計上できる
  • 少額減価償却資産の特例を使える

これらのメリットを考えると、青色申告をするのが望ましいと言えます。

青色申告の手続き方法

青色申告を始めるためには、以下の手続きが必要です。

  1. 「青色申告承認申請書」を税務署に提出する
  2. 提出期限は、開業年の3月15日まで(1月16日以降に開業した場合は、開業から2ヶ月以内)
  3. 承認されると、その年分の所得から青色申告を行える

必要書類は「青色申告承認申請書」のみですが、期限に注意が必要です。

適切な経費計上 

経費を適切に計上することは、事業所得を正確に把握し、適切な納税を行うために非常に重要です。また、経費を適切に計上することで、結果として納税額を抑えることにもつながります。

経費として認められる項目 

一般的に経費として認められる主な項目は以下の通りです。

  • 仕入れ費用
  • 家賃・光熱費
  • 通信費
  • 交通費
  • 広告宣伝費
  • 接待交際費(上限あり)
  • 減価償却費
  • 消耗品費
  • 専門家への報酬(税理士費用など)

これらの項目は、事業を行う上で直接関係するものであれば、原則として経費と認められます。

経費計上の際の注意点       

経費計上時によくある間違いや注意点として、以下のようなものがあります。

  • 事業用と私用の明確な区別が必要
  • 経費の証拠となる領収書は必ず保管する
  • その経費が発生した事業年度に計上する(発生主義)
  • 10万円未満の固定資産は減価償却の処理をする必要はなく、即時償却が可能

これらの点に注意しながら、適切な経費計上を心がけることが重要です。

家事按分の方法

個人事業主の場合、事業用と私用の支出が明確に分けられないケースがあります。このような場合、家事関連費として按分計算を行う必要があります。
 
自宅の一部を事業用として使用している場合、光熱費や家賃の一部を経費として計上できます。按分方法の例としては以下のようなものがあります。

  • 面積比:事業用スペースの面積 ÷ 自宅の総面積
  • 時間比:事業に使用する時間 ÷ 1日の総時間
  • 使用頻度:事業での使用回数 ÷ 総使用回数

面積比だと、例えば、自宅の面積の20%を事業用として使用している場合、光熱費の20%を経費として計上できます。


まとめ

まとめ

事業所得は、個人事業主が事業から得た収入のことを指します。給与所得や雑所得との区別が微妙なケースがあるので、正確な定義を押さえたうえで処理を行う必要があります。

事業所得に関連する主な税金には、所得税、個人事業税、個人住民税があり、それぞれ計算方法が異なります。

確定申告の際には、青色申告を選択することでさまざまなメリットが得られます。また、事業に関する費用を適切に経費計上することで、納税額の抑えることにもつながります。

事業所得について正しく理解することで、スムーズな事業運営と適切な納税ができます。記事の内容を参考に、自身の事業に合わせた税務管理を行ってください。


監修|筧 智家至(公認会計士・税理士)
監修|筧 智家至(公認会計士・税理士)
慶応義塾大学商学部卒。監査法人トーマツにて会計監査、株式上場支援、企業の経営改善支援に従事。平成24年筧公認会計士事務所(現:税理法人グランサーズ)を開設。常に現場に入り、経営者とともに課題に取り組み、経営者と常に相談しながら経営者のニーズに応え、解決策を導き出すことをモットーにしている。スタートアップ企業からIPO(上場)準備支援まで、あらゆる成長段階の企業のサポートをしており、税務会計顧問にとどまらない経営を強くするためのコンサルティングサービスに中小企業経営者の信頼と定評を得ている。東京商工会議所専門家エキスパート、セミナー実績多数。経営者向け人気YouTubeチャンネル「社長の資産防衛チャンネル」にも出演中。
グランサーズグループに興味を持っていただけたという方は、お気軽にご相談ください。
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