「繊細さん」の活かし方~やさしい職場環境を作るために知っておきたい「HSP」について~
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最近「HSP」という言葉を聞くことが増えてきています。
聞いたことがない方も「繊細さん」と言えばイメージが湧くかもしれません。
周囲に思い当たる人がいる方、または自覚のある方も少なくないと思います。
一方で、HSPの詳しい定義や種類、HSP当事者でない人がHSP当事者に対してできる配慮にどんなものがあるか、ということについて正しく理解している人は多くないのではないでしょうか?
今回のコラムでは、非当事者の方にこそ知ってほしい「HSP」のことを、詳しく解説致します。少し専門的な内容が多くなりますが、HSPに対して「自分だって大変なのに…」と感じる方!是非最後までお読みください。
目次[非表示]
- 1.そもそも「HSP」とは何か
- 2.HSPにも色々ある
- 3.当事者以外はどうするべきなのか
- 3.1.HSPを活かすためには
- 3.2.非当事者にも、実はHSPの要素がある
- 4.まとめ
そもそも「HSP」とは何か
「HSP」とは、カリフォルニアの心理学者エイレン・アーロン博士が提唱した概念で、高敏感者(Highly Sensitive Person)の頭文字です。
アーロンは次の4つの特徴
「深い処理 Depth of processing」
「過覚醒 Overarousal」
「情動強度 Emotional intensity」
「感覚過敏 Sensory sensitivity」
を高敏感性として整理し、これらの特徴を持つ人を高敏感者(Highly Sensitive Person:HSP)としました。4つの特徴の頭文字を取って「DOES」とすることもあります。
約5人に一人がHSPに当てはまるとされており、近年日本では「繊細さん」という言葉で表現されている場合もあります。
次に4つの特徴「DOES」について簡単に解説します。
「深い処理 Depth of processing」とは、与えられた情報に対して関連付けや比較をしたり、首尾一貫した流れの中で処理しようとしたりすることを指します。例えば、ただの数字の羅列である電話番号に意味を見出そうとする場合があります。
「過覚醒 Overarousal」とは、刺激を受けやすい性質を指します。大きくないはずの音が騒音に感じたりするこの特性のために、HSPは疲弊しやすい傾向にあると言われています。
「情動強度 Emotional intensity」とは、高い共感性を指します。周囲の人に強く感情移入するのが特徴です。
「感覚過敏 Sensory sensitivity」とは、五感の非常に高い感度を指し、周囲のわずかな変化も敏感に察知することができます。
HSPにも色々ある
4つの特徴「DOES」を共通して持つHSPを、「刺激を求めるか否か」や「外向的か内向的か(※)」、「好奇心の強さ」といった観点から更に4つに分類する場合があります。その4種類が「狭義のHSP」「HSE」「HSS型HSP」「HSS型HSE」です。
※「外向的・内向的」は興味や判断基準が自身の外にあるか中にあるかを指す概念です。そのため、コミュニケーションへの積極性を表す「社交的」とは異なります。
少し専門的になりますが、それぞれの特徴を見ていきましょう。
4種類のHSP
・「狭義のHSP」は、刺激に敏感で内向的な性格であり、HSP全体の約70%を占めるとされています。
・「HSE」は、「外向性HSP(Highly Sensitive Extroversion)」の略です。HSPは静かに過ごすことを好む傾向があるため全員内向的だと思われがちですが、実際には外からの刺激を必要とするタイプもあることが分かってきました。そのためこのタイプは、他の人たちと協力したり自分の考えを話したりすることを好むと言われています。
残り二つ(「HSS型HSP」「HSS型HSE」)の頭についている「HSS」とは、「刺激探求型(Highly Sensation Seeking)」を指します。これは高い好奇心や行動力を示す概念であり、HSPやHSEに組み合わせて用いられます。
・「HSS型HSP」は、高い好奇心とそれを満たすための行動力を持っているものの、狭義のHSPの特徴をもっています。この複雑さから、周囲の理解を得ることが特に難しいとされています。
・「HSS型HSE」は、高い好奇心とそれを満たすための行動力を持っており、外からの刺激を求める面もあります。広義のHSPの中で最もアクティブであり、HSEの多くを占めていると考えられています。
エンパス
よくHSPと一緒に語られる概念に「エンパス」があります。
「エンパス」とは“empathy”という英単語から想定されるように、「共感力の高い人」を指す言葉です。
カリフォルニアの精神科医ジュディー・オーロフ博士はこれを、
「高敏感性(=HSP)が発展した状態であり、情動吸収と気疲れ(あるいは人込み回避欲求)の特徴を持つもの」
としました。このような特徴をもつため、エンパスの人は周囲のストレスフルなエネルギーを取り込んでしまったり、他人と自分の不快感を区別できないといった困難があります。
エンパスはHSPの一部とされており、完全には分けられません。しかし、エンパスの性質を持つ人は、HSPとして人に対する不安を感じるだけでなく、違和感・混乱・疲労・スピリチュアルな要素等を感じやすいとされています。
当事者以外はどうするべきなのか
先ほども述べましたが、HSPは5人に1人の割合でいるとされています。そのため、ビジネスや普段の交流において、HSPの当事者と関わらないというのは困難といえます。
しかし、近年急速にHSPが認知されるようになったとはいえ、非当事者からするとなかなか理解が難しいという面があります。
そのため、HSPに対して非当事者が「気合が足りない」「治療すればいいのではないか」といった考えになってしまうことがあります。こういった考えをふりかざすことは、関係の悪化は勿論、ハラスメントに発展するリスクを孕んでいます。
それでは非当事者はどのようにしたらよいのでしょうか?
非当事者に求められることは、大きく次の2つ
・HSPを『いかに活かすか』というマインドでいる
・HSPへの関わり方は自身の生きやすさの向上に繋がると知る
ということです。
HSPを活かすためには
様々な繊細さを持つHSPは、それが悪い方向に進む場面もあれば良い方向に進む場面もあります。そのため、それが活きるように周りが配慮することで、本人の困り感を減らすことができます。更にはその発揮された能力によって、周りの人にも様々な良い影響をもたらしてくれるかもしれません。
具体的には次のような例があります。
・考えている時にはじっくり待ってみる
深い情報処理を特徴とするHSPさんは、即決するよりも熟考して答えを出すことが得意な傾向があります。普通の人よりも様々なことを考えて発言するため、出てきた意見が的を射たものであることも多いでしょう。
・マルチタスクよりも、一つのことに集中する力が必要な役割を任せる
HSPはその特性から、多くの刺激があるとうまく処理できない傾向にあります。しかしその一方で、一つのものに熱中する力は高いことが多いです。その力を活かせるような割り振りを意識すると、ぐっと作業効率が高まるでしょう。
・不快な刺激を排除する
敏感さを持つHSPさんにとって、クーラーの風や周りの大きな音などは脅威となり、心身に影響をもたらします。しかしこれらは、オフィス内の席替えをしたり、作業中の耳栓を許可するなどの合理的配慮を行うだけでも改善できます。
これらはあくまでも一例であり、全てのHSPに当てはまるわけではありません。目の前の人に合っているかを考えることが、最も重要です。
非当事者にも、実はHSPの要素がある
HSP的な要素はHSPの人だけが持っているわけではありません。その要素が濃い人と薄い人がいる、というだけです。そのため、HSPの方に配慮することは自身のHSP的な要素に対しても配慮していくことになります。
またこのような人の多様な特性に配慮することは、他の特性を持つ方々のよりよい環境を考えていくための基盤になります。そのため、HSP当事者ではない方も「自分には関係ない」と切り捨てず、自分と他人の両方にやさしさを持って「全員がそれぞれの特性を認め合い、活かせる社会」を目指すことが必要です。
まとめ
これまで注意が向けられてこなかった様々な多様性に、少しずつ目が向けられるようになった現代。敏感で繊細な面を持つHSPに配慮することは、HSP当事者だけでなく自分や周囲全体へ配慮することにつながる。
「全員がそれぞれの特性を認め合い、活かせる社会」への行動が、今求められています。
みんなにやさしい職場、社会を築いていくために、HSPに対する理解を深め行動してみませんか。