catch-img

仮想通貨の税金対策とは|「法人化」は実はリスク大!?正しい考え方と方法を解説

オンラインアシスタント・秘書サービスなら「サポーティア(SUPPORT+iA)」税務業務の外注ならサポーティア(SUPPORT+iA)

個人で仮想通貨投資を行って取引等で利益が発生した場合、そこに税金がかかります。特に、大きな利益を上げた場合、その額によっては所得税の税率が高くなり、思わぬ多額の税金を支払わなければならないこともあります。そこで気になるのが、節税対策として有効なものがあるかということです。よく「個人事業主になること」「法人化」をすすめる意見を見かけますが、現時点では適切とはいえません。本記事では、仮想通貨にかかる税金を抑えるための方法とその是非について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.仮想通貨(暗号資産)にかかる税金(個人の場合)
    1. 1.1.原則は「雑所得」
    2. 1.2.雑所得の必要経費にできるものは限られている
    3. 1.3.仮想通貨取引で「マイナス」が生じても他の所得から差し引けない
  2. 2.仮想通貨(暗号資産)の税金対策として現実的な方法
    1. 2.1.よくいわれる「個人事業主になる」も「法人化」も実は「ムリゲー」…
    2. 2.2.現実的な節税対策①|経費を正確に把握して計上する
    3. 2.3.現実的な節税対策②|年間の損益の調整を行う
  3. 3.仮想通貨(暗号資産)の節税対策として実はムリゲーな2つの方法
    1. 3.1.実はムリゲーな節税対策①|個人事業主になる(事業所得として申告する)
    2. 3.2.実はムリゲーな節税対策②|法人化
  4. 4.まとめ

仮想通貨(暗号資産)にかかる税金(個人の場合)

仮想通貨(暗号資産)にかかる税金(個人の場合)

まず、仮想通貨にかかる税金についておさらいしておきましょう。

仮想通貨は法令上「暗号資産」と呼ばれますが、本記事では基本的に「仮想通貨」と表記します。

原則は「雑所得」

仮想通貨の取引によって生じた利益は原則として「雑所得」と扱われ、所得税の課税対象となります。例外として「事業所得」にあたる場合もありますが、後述します。

仮想通貨の取引で利益が生じるタイミングは以下の通りです。いずれも、仮想通貨の価値が現実のものとなり、その時に仮想通貨が取得時よりも値上がりしていた場合です。

【仮想通貨の取引で利益が生じるタイミング】

  • 仮想通貨を売却した場合
  • 仮想通貨で商品を購入した場合
  • 仮想通貨を他の仮想通貨と交換した場合
  • 仮想通貨の分裂によって暗号資産を取得した場合
  • マイニングの報酬を受け取った場合

これはやや細かい話ですが、2024年の12月の終わりに仮想通貨を売却する契約を結び、2025年1月に引き渡した場合は、どの年の所得と考えるべきでしょうか。この点については、原則として、引き渡しがあった年(このケースでは2025年)の所得として扱いますが、選択すれば、契約した年(2024年)の所得と扱うこともできます。

暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)|国税庁(nta.go.jp) 

雑所得の必要経費にできるものは限られている

雑所得の計算式は以下の通りです。

【雑所得の計算式】

 収入金額-必要経費

雑所得の計算上、「必要経費」とできる費用は限られています。

必要経費とは、仮想通貨の売却等のため直接必要と認められる金額をさします。典型的なのは以下の4つです。

【必要経費の典型例】

  • 仮想通貨の原価
  • 売却等をする際にかかった手数料
  • 暗号資産を保管するウォレットの使用料
  • 暗号資産に関する学習にかかった費用(書籍の購入代金、セミナー等の受講料)

問題は、インターネットやスマートフォン等の回線使用料や、取引に使うパソコンやソフトウエア等の購入費用です。これらが必要経費として認められるには、厳しい条件をクリアする必要があり、手間がかかることを覚悟しなければなりません。

この点については「現実的な節税対策①|経費を正確に把握して計上する」で詳しく説明します。

暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)|国税庁(nta.go.jp)

仮想通貨取引で「マイナス」が生じても他の所得から差し引けない

仮想通貨取引等で年間通算して「マイナス」が生じた場合、雑所得の額もマイナスになります。もし、これを給与所得等の他の所得から差し引ければ好都合です。

しかし、雑所得については、他の所得から差し引く「損益通算」が認められていません。

なお、損益通算が認められているのは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」のみです。 

税務業務の外注ならサポーティア(SUPPORT+iA)


仮想通貨(暗号資産)の税金対策として現実的な方法

仮想通貨(暗号資産)の税金対策として現実的な方法​​​​​​​

よくいわれる「個人事業主になる」も「法人化」も実は「ムリゲー」…

このように、個人が仮想通貨取引等をして利益が出た場合、基本的に雑所得扱いになり、税制上不利です。そこで、以下の2つが節税方法として推奨されることがあります。

【有効とされてきた「節税」の方法】

  1. 個人事業主になって「事業所得」として申告する方法
  2. 法人化する方法

しかし、詳しくは後述しますが、「事業所得」として申告するのは要件が厳しく、また、法人化する方法はリスクが大きいので、一般的におすすめできるものではありません。強い表現を使えば「ムリゲー」といわざるを得ません。

そこで、現実的な節税対策として以下の2つが考えられます。

【現実的な節税対策】

  1. 経費を正確に把握して計上する
  2. 年間の損益の調整を行う

なお、「売却益を年間20万円以内に抑える」という方法が挙げられることがありますが、これはあまりおすすめできません。以下、それぞれについて解説します。

現実的な節税対策①|経費を正確に把握して計上する

前述の通り、仮想通貨取引等による利益は雑所得と扱われ、収入金額から必要経費を差し引いて算出されます。

そして、必要経費に算入できるものは、仮想通貨の売却等のため直接必要と認められる金額に限られます。

特に、以下の2つを正確に把握して計上することをおすすめします。

  • インターネットやスマートフォン等の回線使用料
  • 取引に使うパソコンやソフトウエア等の購入費用

インターネットやスマートフォン、パソコン等は、仮想通貨の取引等以外にも使うことが多くなっています。したがって、他と明確に区別できる場合のみ、その分の金額を必要経費に算入できます。

毎日、インターネットを使用した時間と、そのうち仮想通貨の取引等を行った時間を記録しておき、その時間が使用時間全体のうちの何%だったか分かるようにしておく必要があります。

暗号資産の取引に使うために購入したパソコンやソフトウエアの購入代金については、10万円以上であれば減価償却という処理を行わなければなりません。

減価償却とは、事業用の固定資産の購入代金を、複数年にわたって費用計上していくことです。パソコンやソフトウエアは1年で使い終わることはなく、複数年使います。したがって、購入代金も複数年にわたって計上していくことになっているのです。

また、パソコンやソフトウエアを他の用途と併用する場合には、仮想通貨の取引に使う割合をはっきりさせる必要があります。上述したように、仮想通貨の取引等のために使用する時間の割合が分かるように記録を残しておくことが大切です。

面倒ではありますが、必要経費に計上できるものを確実に計上していくことで、税金を抑えることができます。

暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)|国税庁(nta.go.jp)

現実的な節税対策②|年間の損益の調整を行う

仮想通貨取引では、その年度の取引による損益を通算して雑所得を計算することになります。そこで、「損切り」や「利益確定」を適切に行うことによって、年間の損益を調整することが考えられます。

なお、雑所得については、金額が20万円以下であれば申告義務が生じません。

■「売却益を年間20万円以下に抑える」は不適切?

この点に関連して、仮想通貨の節税について触れた書籍やインターネット記事で、よく、「売却益を年間20万円以下に抑える方法」が紹介されています。

しかし、これは、仮想通貨取引の現状を踏まえると、誤解を招きかねず、あまり適切とはいえません。

というのも、仮想通貨の長期保有は、現状では投資としての不確実性が高いといわざるを得ないからです。

すなわち、株式や投資信託と異なり、仮想通貨は実体経済の成長等の裏付けがありません。また、金やダイヤモンド等の資産と異なり、それ自体が物質としての価値を持っているわけではありません。

したがって、現時点では、仮想通貨の長期保有によって利益を得ようというのは、冒険度が高いといわざるを得ないのです。

将来の需要拡大を見通して長期投資をするというのは一つの考え方ですが、株式等と比べると、確実性がさらに低いといえます。

仮想通貨のこのような性質にかんがみると、現状では長期投資には向かず、「投機」の側面が大きいと考えられます。高騰したタイミングで売却するという心構えのほうが重要です。

このような現状を踏まえず、税金のことを考えて売却益を20万円に抑えよ、と指南するのは、無責任だとさえいえます。

あくまでも、年間トータルの損益が微妙で、その調整を行う際に、一つの考慮要素として頭の片隅に置いておくにとどめてください。

税務業務の外注ならサポーティア(SUPPORT+iA)


仮想通貨(暗号資産)の節税対策として実はムリゲーな2つの方法

仮想通貨(暗号資産)の節税対策として実はムリゲーな2つの方法

仮想通貨(暗号資産)の節税方法として、前述のように、従来、よく「有効である」と説明されてきた以下の2つの方法があります。

【有効とされてきた「節税」の方法】


  • 個人事業主になって「事業所得」として申告する方法
  • 法人化する方法

しかし、現時点において、これらはいずれも現実的ではなく、しょせんは「ムリゲー」と切って捨てざるをえません。以下、それぞれについて一応説明を加えておきましょう。

実はムリゲーな節税対策①|個人事業主になる(事業所得として申告する)

まず、個人事業主になることによる節税について解説します。

■個人事業主になることのメリット

個人事業主になり「事業所得」として青色申告すれば、主に以下のメリットを受けられます。

  • 年間65万円の控除を受けられる(青色申告特別控除)
  • マイナスを他の所得から差し引ける(損益通算)
  • マイナスを翌年以降3年間繰り越せる(繰越控除)

なお、個人事業主になるメリットとして、よく、家族を従業員として雇用して「青色事業専従者」とし、給与を支給して経費にする方法が紹介されます。しかし、仮想通貨取引の場合、非現実的なので、敢えて挙げません。

上記のメリットは、あくまでも仮想通貨取引による利益が事業所得と認められた場合のものです。実際には、次に述べるように、認められることはきわめて難しいといわざるを得ません。

そもそも「事業所得」として認められる条件が厳しい

仮想通貨取引による利益が事業所得として認められるには、仮想通貨取引が「事業」に該当しなければなりません。

最高裁判所は以下の基準を提示しています。

【最高裁判所が示した「事業」の基準(最判昭和56年4月24日)】

  • 自己の計算と危険において独立して営まれる
  • 営利性、有償性がある
  • 反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる

そして、国税庁は通達で、以下の2ついずれもみたす場合には、原則として事業所得になるとの解釈を示しています(所得税法27条、35条、36条、所得税法基本通達35-2参照)。

【国税庁の通達が示した基準】

  • 仮想通貨取引による収入金額が300万円を超える
  • 仮想通貨取引に関する帳簿書類を保存している

仮想通貨取引は多くの場合、本業の片手間で行うものなので、事実上、この2つの条件をいずれもみたさない限り、事業所得とは認められにくいといえます。

そして、その年度の収入金額が300万円を超えるかどうかは不確実なことが多いことを考えると、事業所得と認められるケースはきわめて限られるといわざるを得ません。

暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)|国税庁(nta.go.jp)

実はムリゲーな節税対策②|法人化

次に、「法人化による節税」について解説します。

法人化した場合、たしかに、税制上のメリットは格段に増えます。しかし、同時に、そのメリットを台無しにしかねないデメリット・リスクも背負い込むことになります。以下、メリットとリスク・デメリットのそれぞれについて説明します。

■法人化した場合のメリット

法人化を推奨する理由としてよく挙げられるメリットは、主に以下の4つです。

【法人化を推奨する理由として挙げられるメリット】

  • 実効税率の上限が個人よりも低い
  • 仮想通貨取引以外の法人所得があれば損益を通算できる
  • 1個10万円超~30万円未満のパソコン・ソフトウエア等の購入費を一気に経費として計上できる(中小企業者等の少額減価償却資産の取得原価の損金算入の特例)
  • マイナスが出たら翌期以降9年間の所得から差し引ける(雑損失の繰越控除)

第一に、法人の実効税率が個人よりも低いことが挙げられます。個人の所得税の税率は最高で45%で、これと住民税が10%程度かかります。これに対し、法人の場合、法人税や地方税を合わせた実効税率は最高でも34%程度です。したがって、仮想通貨取引等による収益を法人の収益として計上することにより、税金を抑えることができます。

第二に、法人の所得は個人と異なり所得類型による区別がありません。すべて一括して法人所得として扱われます。したがって、もしも法人に仮想通貨取引以外の所得があれば、仮想通貨取引で生じたマイナスを差し引いて損益を通算することができます。

ただし、そもそも仮想通貨取引以外の事業を行っていないのであれば、無意味です。

第三に、青色申告をしていれば、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得原価の損金算入の特例」によって、1個10万円超~30万円未満のパソコン・ソフトウエア等の購入費については、減価償却の処理をせず、一気にその年度の経費として計上できるというメリットがあります。

第四に、青色申告をしていれば、マイナスが出た場合に翌期以降9年間の所得から差し引くことができます。「雑損失の繰越控除」という制度です。

■法人化のリスク・デメリット

しかし、仮想通貨取引を事業として法人化する場合、同時に、以下のリスク・デメリットを背負い込むことになります。

【法人化のリスク・デメリット】

  • 法人を設立するコストがかかる(30万円程度)
  • 仮想通貨を現物出資する際に所得税(譲渡所得)がかかる
  • 利益がなかった年度も法人住民税(7万円)の支払義務を負う
  • 毎期末の「含み益」にも課税される

これらのうち、特に深刻なのは、最後の「含み益」に対する課税です。仮想通貨の時価が前年度より上昇したら、その分の利益が発生したとして課税されるのです。

個人の場合、仮想通貨を実際に取引して換金等をしない限り、課税されません。また、換金したお金を納税資金に充てることができます。

しかし、法人の場合、実際に取引をしていなくても、期末に仮想通貨に含み益が生じていれば、そこに課税されるルールになっています。しかも、その分の納税資金を別に用意しなければなりません。

もちろん、仮想通貨を売却して用意することもできますが、その際に仮想通貨が暴落していたら、取り返しのつかない損失を被ることになりかねません。仮想通貨取引は不確実性が高いため、そのようなことは大いにあり得るのです。

このことを考慮すれば、法人化はよほどのことがない限りおすすめできません。

もし、法人化を検討するのであれば、信頼できる税理士等の専門家に相談してください。

税務業務の外注ならサポーティア(SUPPORT+iA)


まとめ

所得税の計算で重要な給与所得控除を徹底解説!

仮想通貨取引等で利益を上げた場合、節税方法は事実上、限られています。よくいわれる「個人事業主になる」「法人化する」は、いずれも現状では、よほどのことがない限り、おすすめできません。

その理由は、仮想通貨取引においては、仮想通貨(暗号資産)という資産の将来性も含め、確実性が低いことにあります。

あくまでも、雑所得の計算上、許容される最大限の対策をするしかないといえます。つまり、経費を正確に把握して計上すること、および、年間の損益の調整を行うこと。この2つを徹底するようにしてください。

税務業務の外注ならサポーティア(SUPPORT+iA)

監修|筧 智家至(公認会計士・税理士)
監修|筧 智家至(公認会計士・税理士)
慶応義塾大学商学部卒。監査法人トーマツにて会計監査、株式上場支援、企業の経営改善支援に従事。平成24年筧公認会計士事務所(現:税理法人グランサーズ)を開設。常に現場に入り、経営者とともに課題に取り組み、経営者と常に相談しながら経営者のニーズに応え、解決策を導き出すことをモットーにしている。スタートアップ企業からIPO(上場)準備支援まで、あらゆる成長段階の企業のサポートをしており、税務会計顧問にとどまらない経営を強くするためのコンサルティングサービスに中小企業経営者の信頼と定評を得ている。東京商工会議所専門家エキスパート、セミナー実績多数。経営者向け人気YouTubeチャンネル「社長の資産防衛チャンネル」にも出演中。
グランサーズグループに興味を持っていただけたという方は、お気軽にご相談ください。
人気記事ランキングBEST 5
PDF資料ダウンロード
カテゴリ記事一覧
オンラインアシスタントの記事一覧
業務効率化・DXの記事一覧
経理の記事一覧
税金・税制の記事一覧
起業・ベンチャーの記事一覧
IPO・上場の記事一覧
ビジネスコラムの記事一覧