接待交際費の上限額|個人事業主・中小企業・大企業で異なるルール、注意点等を解説【2024年4月からの新ルール対応】
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企業が支出する取引先・顧客等のための接待交際費には、経費(損金)に算入できる額に上限が設けられています。そのルールを理解して上手に活用すれば「節税」の有効な手段となる可能性があります。しかし、注意しなければかえって損をすることにつながります。本記事では、接待交際費のルールについて、損金算入の上限額に関する規律を中心に解説します。
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接待交際費とは
接待交際費とは、交際費・接待費等の費用で、得意先・仕入れ先その他事業に関係のある者に対する接待・供応・慰安・贈答等のために支出するものをいいます。
法人の場合、接待交際費は損金への算入が制限されています。というのも、経費が損金に算入されるには、事業のため必要性・関連性が必要ですが、接待交際費の中には事業との関連性が少ないものもあるからです。なお、理由として、接待交際費の損金算入を無制限に認めると、会社の無駄遣いが助長されるからだと言われることがありますが、余計なお世話だという感が否めません。
法令上、以下の費用については、接待交際費に含まれないことになっています。
【接待交際費から除かれる費用】
- もっぱら従業員のために行われる運動会・演芸会・旅行等に通常要する費用
- 一人あたり1万円の飲食等の費用(2024年3月までは5,000円)
- その他、ノベルティ、会議等での飲食物の提供、取材等のため通常要する費用
1のもっぱら従業員のための費用は「福利厚生費」なので、接待交際費に該当しないのは当然です。また、3に挙げられた費用も、通常の業務の範囲内のものなので、接待交際費とはいえません。微妙なのは「2. 一人あたり1万円の飲食等の費用」です。これは「会議費」と呼ばれます。詳しくは「接待交際費より『会議費』(一人1万円以内)としての計上を優先」で解説します。
No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁(nta.go.jp)
接待交際費の経費(損金)算入上限額のルールは事業者ごとに異なる
接待交際費をどこまで経費(法人は損金)に算入してよいかは、個人事業主と法人とで大きく異なります。また、法人でも規模によってルールが3つに分かれています。
以下、「個人事業主」、「巨大企業(資本金等100億円超)」、「大企業(資本金等1億円超~100億円以下」、「中小企業(資本金等1億円以下)」の順に説明します。
個人事業主|全額経費算入可
まず、個人事業主の場合、接待交際費の経費算入については上限がありません。全額を算入できます。
巨大企業(資本金等100億円超)|全額損金算入不可
これに対し、法人税では原則として全額について損金算入が認められないことになっています。
ただし、資本金(合同会社等の場合は出資金)100億円以下の会社については例外が設けられています。2013年以降、日本経済が停滞する中、消費拡大による景気刺激策としておかれたものです。
その結果、全額を損金算入できないという原則があてはまるのは資本金等100億円超のごく一部の巨大企業のみです。
現実には日本の企業のほとんどが資本金等100億円以下なので、例外の範囲がきわめて広くなっています。
例外は会社の規模により2つに分かれます。この後、順次説明します。
大企業(資本金等1億円超~100億円以下)
資本金等が1億円超~100億円以下の大企業の場合、接待交際費のうち「接待飲食費」の50%まで損金算入できます。
あくまでも「飲食費」のみが対象であることに注意が必要です。また、年間の総額なので、1回あたりの限度額は特に設けられていません。
なお、資本金5億円以上の会社の100%子会社は、このルールは適用されません。全額が損金不算入です。
中小企業(資本金等1億円以下)
資本金等1億円以下の中小企業は、以下のいずれかを損金算入できます。
- 「接待飲食費」の50%
- 接待交際費全体のうち年800万円まで
理論上はどちらか有利な方を選べばいいことになります。
しかし、現実には、中小企業の多くは「接待飲食費」だけで年間1,600万円を超える額を使う余裕はないので、事実上、「接待交際費全体のうち年800万円まで」ということになると考えられます。1回あたりの限度額は特に設けられていません。
また、資本金5億円以上の会社の100%子会社は、全額について損金算入が認められません。
接待交際費より「会議費」(一人1万円以内)としての計上を優先
以上が接待交際費の経費(損金)算入に関するルールです。しかし、現実には「会議費」として処理することが多くなっており、実際にそうすることがおすすめです
会議費は、本来接待交際費にあたりますが、「接待交際費とは」で述べたように、「1人1万円」までは除外されたものです。
会議費は後述する所定の要件さえみたせば全額損金算入できるので、税務調査で細かく指摘されることが接待交際費と比べて少なくなっています。
なお、会議費の上限の「1人1万円以内」というのは、もともと、「一人5,000円以内」だったのが2024年4月以降、引き上げられたものです。このところの飲食代の急激な上昇に配慮したものといえます。したがって、今後、会議費として処理するという実務の流れがさらに加速すると考えられます。
接待交際費・会議費の注意点
最後に、接待交際費・会議費を損金計上する際の注意点を挙げておきます。以下の通りです。
- 領収書等を保管し、記録を残しておく
- 経費の無駄遣いにならないようにする
- ルール変更の可能性がある
領収書等を保管し、記録を残しておく
まず、接待交際費として計上するにしても、会議費として計上するにしても、領収書等を保管し、また、参加者、会議の目的・内容等についてごく簡潔な記録を残しておく必要があります。
参考までに、国税庁は、会議費については以下の事項を記載した「書類」を保存することを要求しています。
【会議費として認められるために必要な「書類」の記載事項】
- 飲食等のあった年月日
- 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
- 飲食等に参加した者の数
- その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
- その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
ただし、これらの記載のためにわざわざ書面を作成する必要はありません。
通常は店から受け取る領収書に「1」の年月日、「4」の金額や飲食店等の情報は記載されているので、その他の事項を領収書の余白や裏面にメモしておけば大丈夫です。
No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁(nta.go.jp)
なお、以上は「会議費」に関するルールですが、「接待飲食費」全般についても同じようにすることが望ましいといえます。
経費の無駄遣いにならないようにする
節税の手段としてよく「飲食代を経費で落とす」ということが挙げられます。しかし、必要もないのに接待交際費を支出するのは貴重な経費の無駄遣いになってしまいます。
接待等はあくまでも、取引先との関係維持や新規顧客獲得に結び付く範囲で行うべきものです。
なお、純粋に私的な飲食代を経費として計上するのは、税務調査で指摘され追徴課税されるリスクがあるので、NGです。
ルール変更の可能性がある
接待交際費や会議費についてのルールはこれまで複数回変更されてきました。
上述のように、法人の場合は原則として損金不算入というルールがありながら、政策的考慮によって例外が設けられ、その例外の適用範囲が極めて大きくなっています。
また、つい最近でも会議費の上限額が「1人1万円」へと上がりました。これにより、接待交際費が機能する範囲が事実上狭まったといえます。
ルールの変更がなされれば、最も有利な方法も変わる可能性があります。その意味で、ルール変更については毎年、特に与党・政府の税制改正大綱を確認することが大切です。
もっともこれは、接待交際費等だけでなく税金全般にいえることです。
まとめ
接待交際費は、個人事業主は全額を経費に算入できますが、法人の場合は損金算入額に上限が設けられています。
資本金等1億円以下の中小企業については、「接待飲食費の50%」、または「接待交際費全体のうち800万円」という制限があります。ただし、ほとんどの企業は後者のみ気にすればいいと考えられます。
また、飲食代等が「1人1万円以下」であれば接待交際費にあたらず全額損金算入できるので、現実にはなるべくこちらで処理することをおすすめします。
いずれにしても、領収書に人数、目的・内容等を簡単に記載しておく必要があります。