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固定比率とは?計算方法と会社経営における意味、業種ごとの目安等について解説

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固定比率は、会社の固定資産が自己資本に占める割合をいいます。一般に、会社の支払い能力や経営の健全性の指標とされています。本記事では、固定比率の計算方法とそれが何を意味するか、経営に生かすための視点、および、業界や会社の規模ごとの目安について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.固定比率とは?その計算式と内容
    1. 1.1.固定資産
    2. 1.2.自己資本
  2. 2.固定比率の意味|長期的な安全性を示す指標の一つ
  3. 3.固定比率が高くても「固定長期適合率」が低ければ安全
  4. 4.業種別の固定比率・固定長期適合率の相場
  5. 5.固定比率と他の指標との違い・関係
    1. 5.1.自己資本比率|長期的な安全性を示すもう一つの指標
    2. 5.2.流動比率・当座比率|短期的な安全性・支払い能力を示す指標
  6. 6.高すぎる固定比率を抑えるには
  7. 7.まとめ

固定比率とは?その計算式と内容

固定比率とは

固定比率とは、会社の固定資産が自己資本に占める割合です。計算式は以下の通りです。

【固定比率の計算式】

 固定資産÷自己資本×100(%)

そこで、固定資産と自己資本の意味について、それぞれ簡単に説明しておきます。

固定資産

固定資産は、大きく以下の2種類をさします。

【固定資産】

  • 企業が経済活動を行うため1年を超えて利用する「事業用資産」
  • 現金化されるまで決算日から1年超かかる「金融資産」

いずれも、1年以内に現金化することが想定されていません。事業用資産は1年を超えて長期的に使用するもの、金融資産はそもそも1年以内に現金化が不可能なものです。つまり「固定」されている資産というイメージです。

貸借対照表には、事業用資産は不動産、機械設備等の「有形固定資産」と、ソフトウェアやのれんのような「無形固定資産」に分けて記載されます。また、金融資産は1年超の貸付金「投資その他の資産」として記載されます。

なお、固定資産と異なり、1年以内に現金化できる資産は「流動資産」といいます。

自己資本

自己資本は、会社の自前の資金をいいます。以下の3種類です。

  • 資本金:株主が会社に出資した額
  • 資本剰余金:全ての剰余金から利益剰余金を除いた残額
  • 利益剰余金:事業から得られた利益の額

なお、自己資本は「純資産」とほぼイコールです。純資産との違いは「自己株式」を計算に入れていないことです。

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固定比率の意味|長期的な安全性を示す指標の一つ

固定比率の意味|長期的な安全性を示す指標の一つ

では、固定比率は会社にとってどのような意味をもつのでしょうか。一般的に言われているのは、固定比率が低いほど、以下の2つが良好だということです。

【固定比率が示すもの(低いほど良好)】

  • 会社経営の長期的な安定性
  • 会社の支払い能力

 固定比率は、自己資本で固定資産をどれくらい賄えているかを示すものです。一般的には、固定比率が100%以下であれば長期的な安全性が高いと考えられています。

すなわち、固定資産は長期的に使用するもの、あるいは直ちに現金化できないものなので、他からの借入金ではなく自己資本によって100%賄えることが理想的です。

たとえば、新たに工場の建物を建てるのに多額の借入をしなければならなかった場合と、借入をせず自前の資金(自己資本)だけで賄えた場合とでは、後者の方が支払い能力に余裕があるといえます。

ただし、固定比率が低いほどよいというのは、あくまでも一般論です。特に、異なる業種の会社を比較することは無意味です。固定比率は業種によって、あるいは規模によっても大きく異なるからです。

たとえば、製造業は工場を構え機械設備を保有しなければならないので固定比率が高くなります。これに対し、インターネットサービス業(情報通信業)は事務所とパソコンさえあればいいので固定比率が低くなります。実際の数値については「業種別の固定比率・固定長期適合率の相場」で紹介します。

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固定比率が高くても「固定長期適合率」が低ければ安全

固定比率が高くても「固定長期適合率」が低ければ安全

また、固定比率が高くても、必ずしも経営が不安定とは言い切れません。

典型的なケースが、事業拡大中・成長中の会社です。すなわち、業績が好調で経営が安定している会社が、さらに事業を大きくしていくため、あるいは新規事業を立ち上げるために長期の借入をして設備投資等を行う場合、固定比率は高くなりがちです。

つまり、固定比率が高くても、返済までの期間が1年超の長期借入金等の「固定負債」があり、それで賄えているならば、比較的安全性が高いといえます。

なぜなら、当面の間、返済に追われることがないからです。今後、収益を上げながらその一部を順次、借入金の返済に充てていけばよいのです。

そこで、この固定負債を反映した指標を「固定長期適合率」といいます。計算式は以下の通りです。

【固定長期適合率の計算式】

 固定資産÷(自己資本+固定負債)×100(%)

固定長期適合率が低ければ、長期的な安定性、支払い能力が高いということになります。

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業種別の固定比率・固定長期適合率の相場

業種別の固定比率・固定長期適合率の相場

以上を前提に、業種別に固定比率と固定長期適合率の相場がどうなっているのか、実際の数値を紹介します。

経済産業省の2022年度「中小企業実態基本調査」(2021年度決算実績ベース)の結果に基づき、業種別に固定比率と固定長期適合率の平均値を算出すると、以下の通りです。ご自身の会社が属する業種の値がどうなっているか、参考にしてみてください。

【業種別の固定比率・固定長期適合率の平均値】
業種
固定比率   
固定長期適合率

全体

113.8%

63.8%

製造業

94.0%

58.3%

建設業

75.5%

48.2%

情報通信業

56.4%

42.5%

運輸業、郵便業

164.0%

73.4%

卸売業

80.0%

53.3%

小売業

117.9%

63.5%

不動産業、物品賃貸業

177.7%

77.5%

学術研究、専門・技術サービス業

104.1%

74.8%

宿泊業、飲食サービス業

463.0%

83.7%

生活関連サービス業、娯楽業

169.0%

77.1%

その他サービス業

153.3%

71.3%

2022年度「中小企業実態基本調査」|経済産業省(meti.go.jp/)

固定比率が高い業種の大半は、事業の性質上、多くの固定資産を保有しなければならない業種です。また、それらの業種であっても、固定長期適合率は100%を切っていることがわかります。

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固定比率と他の指標との違い・関係

固定比率と他の指標との違い・関係

以上のように、固定比率は、長期的な経営の安全性、支払い能力を示す指標の一つです。そして、固定比率に加え固定長期適合率も見ることによって、より的確な見極めができるようになります。

そこで、経営の安全性や支払い能力を示す他の指標についても、簡潔に紹介しておきます。

自己資本比率|長期的な安全性を示すもう一つの指標

自己資本比率は、借入金等の「他人資本」を含めた「総資本」のうち、自己資本が占める割合です。自己資本は返済の必要がないので、長期的な経営の安全性が高いといえます。

自己資本比率の計算式は以下の通りです。

【自己資本比率の計算式】

 自己資本÷総資本(自己資本+他人資本)×100(%)
 
ただし、安全性の高さは、成長性・将来性とイコールではありません。自己資本比率が高いということは、借入をして事業拡大や新規事業に乗り出すようなチャレンジをしていないからかもしれません。

そこで、「財務レバレッジ」という指標もあります。これは、自己資本に比して何倍の資本(総資本)を運用しているかを示すものです。レバレッジは英語で「てこ」という意味です。少ない自己資本で多くの資金を運用しているというイメージです。

財務レバレッジの計算式は自己資本比率の裏返しで、以下の通りです。 

【財務レバレッジの計算式】

 総資本(自己資本+他人資本)÷自己資本

自己資本比率・財務レバレッジを見る場合は、事業拡大や新規事業等のチャレンジをしているか、そのチャレンジがうまくいっているかとセットで判断する必要があります。

流動比率・当座比率|短期的な安全性・支払い能力を示す指標

流動比率は1年以内の短期的な支払い能力を示す指標です。以下の計算式で表されます。

【流動比率の計算式】

 流動資産÷流動負債×100(%)

流動資産は、1年以内に現金に換金できる資産をいいます。現預金のほか、「売掛金」「商品」が含まれます。

これに対し、流動負債は、1年以内に返済・支払いをしなければならない負債をいいます。「短期借入金」「支払手形」「買掛金」等があります。

流動比率が高いほど、短期的な支払能力が高い傾向があります。一般には、200%以上であれば適正、つまり資金繰りが良好とされています。これに対し、100%を下回ると資金繰りに支障をきたしていることになります。

ただし、流動比率はその性質上、あくまでも期末の一時点の数値にすぎないので、注意が必要です。たとえば、現預金はその時にたまたま多額の入金があっただけかもしれません。また、売掛金は不良債権化している可能性、商品は不良在庫化している可能性もあります。

なお、流動比率よりもやや精度が高い指標として「当座比率」があります。当座資産の流動負債に対する割合をさします。計算式は以下の通りです。

【当座比率の計算式】

 当座資産÷流動負債×100(%)

当座資産とは、流動資産のうち「現預金」「受取手形」「売掛金」「有価証券(債券等)」をさします。これらは流動資産の中でも特に早く現金に換金できるものです。

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高すぎる固定比率を抑えるには

高すぎる固定比率を抑えるには​​​​​​​

固定比率が高すぎると、長期的な支払い能力に不安が生じるだけでなく、銀行から融資を受けようとする場合や、外部から出資を受けようとする場合にマイナスの評価を受けるおそれがあります。

その場合、固定比率を抑えるには、まず、不要な固定資産を整理することです。買い手がつくものがあれば売却し、そうでないものは処分(除却)することによって、固定資産を減らすことができます。

また、陳腐化している場合には一定の要件の下で評価替えをすることもできます。

なお、補足すると、この場合、損益計算書の上では、帳簿価額より低い額で売却した場合は「売却損」、処分した場合は「除却損」を計上し、その分だけ税金を抑えることもできます。評価替えをした場合にも、一定の要件をみたせば「評価損」を計上できることがあります。

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まとめ

所得税の計算で重要な給与所得控除を徹底解説!

固定比率は、会社の保有する固定資産が自己資本に占める割合をいい、長期的な経営の安全性や支払い能力を示す指標の一つです。一般的には低いことが望ましいとされますが、業種ごとに異なり、かつ、借入をして事業拡大している場合等には高くなる可能性があります。

固定比率は絶対的な指標ではなく、他の指標、とりわけ長期借入金等の固定負債も考慮に入れた固定長期適合率も確認する必要があります。

固定比率が高すぎると、銀行から融資を受けようとする際にマイナスの評価を受けるなどの支障が生じる可能性があります。そこで、もしも不要な固定資産があるならば、売却や除却によって整理することをおすすめします。

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監修|筧 智家至(公認会計士・税理士)
監修|筧 智家至(公認会計士・税理士)
慶応義塾大学商学部卒。監査法人トーマツにて会計監査、株式上場支援、企業の経営改善支援に従事。平成24年筧公認会計士事務所(現:税理法人グランサーズ)を開設。常に現場に入り、経営者とともに課題に取り組み、経営者と常に相談しながら経営者のニーズに応え、解決策を導き出すことをモットーにしている。スタートアップ企業からIPO(上場)準備支援まで、あらゆる成長段階の企業のサポートをしており、税務会計顧問にとどまらない経営を強くするためのコンサルティングサービスに中小企業経営者の信頼と定評を得ている。東京商工会議所専門家エキスパート、セミナー実績多数。経営者向け人気YouTubeチャンネル「社長の資産防衛チャンネル」にも出演中。
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