営業外収益とは?勘定科目・仕分け方法、特別利益との違いを解説
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営業外収益とは、企業が本業以外の活動等から経常的に得ている収益をいいます。損益計算書上、営業外収益が肥大化するのは経営上望ましくありません。しかも、金融機関から財務状況に関し疑念を持たれるおそれがあります。そこで、経営者・経理担当者は、営業外収益を正確にとらえることが大切です。他の収益等との違いは何か、営業外収益に含まれる勘定科目とその仕訳方法、および、営業外収益が大きいことにより生じる問題点と対処法等について、分かりやすく解説します。
目次[非表示]
- 1.営業外収益とは?正しく理解しないと損をする
- 1.1.営業外収益を正しくとらえないと損をする
- 1.2.営業外収益と特別収益「売上高」との違い
- 1.3.営業外収益と特別収益との違い
- 2.営業外収益の勘定科目と仕訳方法
- 3.まとめ
営業外収益とは?正しく理解しないと損をする
営業外収益とは、一般に、企業の主な営業活動以外から経常的に生じる収益をさすといわれています。「売上高」と「特別収益」とともに、損益計算書に記載される項目です。
営業外収益の典型的なものとして、金融活動から生じた「受取利息」「受取配当金」が挙げられます。詳しくは「2. 営業外収益の勘定科目と仕訳方法」で解説します。
営業外収益を正しくとらえないと損をする
営業外収益の比重が過大だと、ビジネスモデルとしていびつであるばかりか、金融機関から財務状況が不健全とみられるおそれがあります。
ただし、中には、本来「売上高」に計上すべきものを営業外収益に計上してしまっているケースが散見されます。それによって金融機関からの信頼を損なってしまうことは、大変もったいないことです。
そこで営業外収益について正しく把握する必要があります。そのためには、営業外収益と「売上高」「特別収益」との違いを押さえることが大切です。
営業外収益と特別収益「売上高」との違い
まず、営業外収益と売上高の違いです。
企業の収益のうち最も重要なのは主な事業活動(本業)から生じる「売上高」です。これに対し、「営業外収益」は本業以外の活動からコンスタントに発生するものをとして区別して取り扱っています。
「売上高」を生じさせる「主な事業活動(本業)」の範囲は広く解されています。たとえば、製造業を本業とする会社がサイドビジネスとしてコインランドリーを経営している場合も「本業」であり、収益は「売上高」にあたると考えられます。サイドビジネスだとしても相応の労務負担がかかる事業活動といえるからです。
ただし、この説明によると、「営業外収益」に「不動産賃貸料」が含まれていることとの整合性が論理的に苦しくなるのは否めません。「不動産の賃貸」にも、維持管理等のため相応の労務負担がかかるからです。なお、「不動産の賃貸」自体をメインの事業としている場合は賃料収入は「営業収益」ではなく「売上高」になります。
むしろ、営業外収益は、伝統的にいわゆる「不労所得」と扱われてきたものと割り切って考えると分かりやすいかもしれません。
営業外収益と特別収益との違い
次に、営業外収益と特別収益の違いです。
本業以外から生じる収益であっても、臨時的・一時的に生じるものは「特別収益」として区別して扱います。
たとえば、サイドビジネスで不動産賃貸をしている場合、賃料はコンスタントに入ってくるので「営業外収益」、賃貸物件を売却して得た代金は一時的なものなので「特別収益」です。
ただし、この「臨時的・一時的なものか」という一般論によって営業外収益と「特別収益」をすっきり区別できるとは限りません。
たとえば、同じ売却益でも、売買目的で保有している他社の株式を売却して得た収益(有価証券売却益)は「特別収益」ではありません。後述するように「営業外収益」と考えます。これは、株式が会社の資金を運用するための金融商品であり、売買をコンスタントに繰り返すことが予定されているからです。
営業外収益の勘定科目と仕訳方法
以上を踏まえ、営業外収益の勘定科目で代表的なものを8つ取り上げ、それぞれの内容と仕訳方法について説明します。
受取利息・有価証券利息
受取利息とは、金融機関への預金、第三者への貸付金から得られる利息です。また、有価証券利息は債券等の有価証券から得られる利息です。
受取利息、有価証券利息からは、あらかじめ以下の税金が一律に源泉徴収されています。
【受取利息から源泉徴収される税率】
- 法人:15.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%)
- 個人:20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
受取利息、有価証券利息の仕訳をする場合は、税金の源泉徴収があったことを記載する方法と、現実に入金された金額のみとらえて記載する方法の両方が認められています。
たとえば、法人が源泉徴収後の利息1万6,937円(税引前2万円)を受け取った場合、それぞれの方法での仕訳例は以下の通りです。
借方 |
貸方 |
||
普通預金 |
16,937円 |
受取利息 |
20,000円 |
法人税等 |
3,063円 |
借方 |
貸方 |
||
普通預金 |
16,937円 |
受取利息 |
16,937円 |
受取配当金
受取配当金は、他の会社の株式を保有する場合に得られる配当金等をさします。
受取利息と同様、所得税等が法人ならば15.315%、個人ならば20.315%源泉徴収されます。仕訳方法も受取利息と同じく、源泉徴収があったことを反映させる方法と、入金の事実のみとらえる方法の2パターンあります。
たとえば、法人が源泉徴収後の配当金42万3,425円(税引前50万円)を受け取った場合、仕訳例はそれぞれ以下の通りです。
借方 |
貸方 |
||
普通預金 |
423,425円 |
受取配当金 |
500,000円 |
法人税等 |
76,575円 |
借方 |
貸方 |
||
普通預金 |
423,425円 |
受取配当金 |
423,425円 |
有価証券売却益
有価証券売却益は、売買目的で保有している株式、債券等を売却することによって得られる利益をいいます。
たとえば、売買目的で購入し保有していた株式の期首の簿価が500万円で、この株式を時価580万円で売却できた場合、仕訳方法は以下の通りです。
借方 |
貸方 |
||
普通預金 |
5,800,000円 |
売買目的有価証券 |
5,000,000円 |
有価証券売却益 |
800,000円 |
有価証券評価益
有価証券評価益は、売買目的で保有している株式、債券等の期末の評価額が簿価(期首の評価額)を上回った場合の差額(評価益)をいいます。
たとえば、売買目的で購入し保有していた株式の期首の簿価が500万円で、期末の評価額が580万円だった場合、仕訳方法は以下の通りです。評価益の80万円の分だけ有価証券が増加したと考えます。
借方 |
貸方 |
||
有価証券 |
800,000円 |
有価証券評価益 |
800,000円 |
不動産賃貸料
不動産賃貸料は、自社が所有する土地や建物を第三者に賃貸した場合に得られる賃料をさします。
たとえば、自社が所有する建物を他の会社に事業所として賃貸し、賃料100万円が入金された場合、仕訳方法は以下の通りです。
借方 |
貸方 |
||
普通預金 |
1,000,000円 |
不動産賃貸料 |
1,000,000円 |
仕入割引
仕入割引とは、原材料等の仕入代金を早めに支払う代わりに代金の割引を受けることをいいます。
理論上は、受取利息と同じ性質をもつものと扱われます。なぜなら、代金の支払いを受けた相手側が利息相当額の利得をするので、その分を差し引いたものと考えるからです。現在は超低金利なのでピンときませんが、あくまでも理論上、受取利息と同類と扱うということです。
たとえば、原材料を仕入れ、代金300万円を1ヵ月前倒しして支払ったことにより15万円(5%)の値引きを受けた場合、仕訳方法は以下の通りです。
借方 |
貸方 |
||
買掛金 |
3,000,000円 |
普通預金 |
2,850,000円 |
仕入割引 |
150,000円 |
なお、同じ割引でも、大量仕入れや品質不良による代金の値引きは含まれません。これらは「営業外収益」ではなく「売上原価」に計上することになっています。
為替差益
為替差益は、外貨建てで取引を行った場合や外貨を保有している場合に、為替レートが変動したことによって発生する利益をさします。
たとえば、1米ドル=140円の時に5万米ドル(700万円)で製品を売却し(売掛金発生)、代金を受け取るときに1米ドル=148円(円安ドル高)になっていたら、代金は740万円になります。この場合、仕訳方法は以下の通りです。
借方 |
貸方 |
||
普通預金 |
7,400,000円 |
売掛金 |
7,000,000円 |
為替差益 |
400,000円 |
雑収入
雑収入は、営業外収益のどの勘定科目にも当てはまらない雑多で少額なものをさします。
国税庁は具体例として以下のものを挙げています。
【雑収入の具体例】
- 空箱・作業くずなどの売却代金
- リベート
- 取引先や使用人に事業上貸し付けた貸付金の利子
- 使用人の寄宿舎の使用料
- 買掛金の免除益
雑収入とは|国税庁 (nta.go.jp)
この他に、法人で加入した生命保険の保険金や解約返戻金と支払い済み保険料との差額や、経営セーフティ共済の解約手当金等も雑収入にあたります。
たとえば、法人加入の生命保険を解約して解約返戻金を受け取った場合、支払った保険料が資産計上されるか否かによって、仕訳方法が異なります。
■定期保険(保険料が全額損金に算入され資産計上されない)を解約した場合
解約返戻金5,000万円を受け取った場合、その全額が雑収入となります。そして、仕訳方法は以下の通りです。
借方 |
貸方 |
||
普通預金 |
50,000,000円 |
雑収入 |
500,000円 |
■終身保険(保険料が全額資産計上)の場合
解約返戻金6,000万円を受け取り、保険料総額(全額資産計上)が5,500万円だった場合、差額の500万円が雑収入となります。そして、仕訳方法は以下の通りです。
借方 |
貸方 |
||
普通預金 |
60,000,000円 |
保険積立金(資産) |
55,000,000円 |
雑収入 |
5,000,000円 |
まとめ
営業外収益は、企業の主な営業活動(本業)以外から経常的に生じる収益をさすといわれています。売上高に比して営業外収益が大きいと、ビジネスモデルとしていびつな状態に陥っているといえます。また、金融機関から融資を受けようとする際にマイナスのイメージを持たれるおそれがあります。
そこで、営業外収益を「売上高」「特別収益」と区別して正確に捕捉し、損益計算書に記載する必要があります。
「売上高」との区別は「本業か副業か」という観点よりも「伝統的に不労所得とされてきたものか否か」という観点から考えたほうがイメージしやすいといえます。また、「特別収益」との区別については、特に不動産の売却と有価証券の売却の性質の違いを押さえておくことが大切です。
本記事の内容を理解し、営業外収益を正しく計上することにより、会社の財務状況を的確に把握して今後の課題を見極めるとともに、金融機関からの適正な評価を得られるようになることを願ってやみません。