海外FXにかかる税金とは?確定申告の方法、節税対策、国内FXの違いを解説
オンラインアシスタント・秘書サービスなら「サポーティア(SUPPORT+iA)」
海外FXとは、海外のFX業者を利用してFXを行うものです。日本の金融当局の厳しい監督を受けないので、リスクが大きい一方、より大きな利益を上げられる可能性があります。しかし、税制面で国内FXと異なるルールが適用されます。また、もし、大きな利益が上がった場合、どのような節税対策をすればいいのかも気になります。そこで、本記事では、海外FXにどのように課税されるか、確定申告の方法、節税対策といったことについて、国内FXとの違いも意識して解説します。
目次[非表示]
- 1.海外FXの収益にかかる税金
- 1.1.海外FXの収益にかかる税金
- 1.2.税金が発生するタイミング
- 1.3.利益がいくら出ると所得税がかかるか
- 1.4.住民税は徴収される
- 2.海外FXと国内FXの税金の違い
- 3.海外FXの確定申告の方法
- 4.海外FXの節税方法
- 4.1.経費を漏らさず計上する
- 4.2.他の副業所得(雑所得)のマイナスがあれば通算する
- 4.3.所得税の各種所得控除制度を活用する
- 4.4.補足|「法人化」はおすすめできない
- 5.まとめ
海外FXの収益にかかる税金
海外FXでも国内FXでも、利益を上げた場合、所得税・住民税がかかります。そこで、どのような条件の下で税金がかかるか、説明します。
海外FXの収益にかかる税金
海外FXの利益は所得税法上「雑所得」に分類されます。雑所得は、他の所得にあたらない「その他大勢」の所得です。雑所得の計算式は以下の通りです。
【雑所得の計算式】
収入金額-必要経費
必要経費は、収入金額を得るのに直接必要となる費用です。たとえば、海外FXのシステム利用費、業者への手数料、関連著書の購入費用等がかかります。これについては「海外FXの節税方法」で改めて解説します。
なお、国内FXの利益も同様に「雑所得」にあたります。しかし、海外FXと国内FXとでは税金の計算は別々に行わなければなりません。詳しくは「海外FXと国内FXの違い」で改めて説明します。
税金が発生するタイミング
FXで税金が発生するタイミングは、ポジションを決済して利益が確定した段階です。いわゆる「含み益」には課税されません。あくまでも、利益が金銭的価値として実現した場合に初めて課税されます。
また、日本国内に送金されたかどうかは関係ありません。
利益がいくら出ると所得税がかかるか
利益が出ても、所得税については一定額までは課税されません。
会社員(正社員・アルバイト)や公務員等の「給与所得者」か、それ以外の個人事業主・専業主婦等か、年金生活者かによって異なります。
以下、いくら利益が出たら所得税の課税対象になるか、説明します。
■給与所得者は「年20万円超」から
まず、会社員等の給与所得者は、給与所得・退職所得以外の所得については、所得税は年20万円まで非課税です。20万円を超えると、その超過部分について課税されることになります。
たとえば、FXによる所得が年80万円であれば、課税対象となるのは60万円です。
■個人事業主・専業主婦等は他の所得と合算して「年48万円超」から
次に、個人事業主や専業主婦等は、他の所得と合算して年48万円までは所得税非課税です。
この48万円はすべての納税者に適用される「基礎控除」の額です。
■年金生活者は「確定申告不要制度」の枠内なら非課税
年金生活者については、以下の条件をいずれもみたす場合、「確定申告不要制度」の対象となり、事実上非課税となります。
【確定申告不要制度の対象となる条件】
- 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
- 「公的年金等にかかる雑所得」以外の所得金額が20万円以下である
住民税は徴収される
所得税と異なり、海外FXの利益には住民税が一律10%徴収されます。つまり、利益が少なくても住民税だけはかかるということです。
なお、国内FXの利益については、住民税の税率は一律5%ですむことになっています。
海外FXと国内FXの税金の違い
海外FXも国内FXも利益を上げれば「雑所得」として課税されます。しかし、課税方法、税率が異なるので別々に計算しなければなりません。
また、多くの場合、海外FXの方が高い税金を取られることになります。
どういうことなのか。国内FX⇒海外FXの順に説明します。
国内FXの利益にかかる税金|申告分離課税・税率約20%
まず、国内FXの利益については、税制上優遇されています。
他の所得と区別して計算される「分離課税」が採用されています。また、税率は20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)です。
したがって、国内FXの利益は、他の所得と異なり、超過累進税率の適用を受けることがありません。
海外FXの利益にかかる税金|総合課税・超過累進税率
これに対し、海外FXの利益(雑所得)は他の所得と合算して計算されます。「総合課税」といわれます。
日本の所得税は、所得が高くなるほどに段階的に税率が高くなる「超過累進税率」を採用しています。
他の所得と合算されると、高い累進税率が適用されることになります。
すなわち、所得税は、所得が上がるごとに税率が段階的に高くなっていく「超過累進税率」を採用しており、最高税率は45%です(地方税を除く)。特に、課税所得金額900万円以上の部分については、899万9,000円まで税率が最高で23%だったのが、33%に上がります。
所得(1,000円未満切り捨て) |
税率 |
控除額 |
1,000円~194万9,000円 |
0円 |
|
195万円~329万9,000円 |
9万7,500円 |
|
330万円~694万9,000円 |
42万7,500円 |
|
695万円~899万9,000円 |
63万6,000円 |
|
900万円~1,799万9,000円 |
153万6,000円 |
|
1,800万円~3,999万9,000円 |
279万6,000円 |
|
4,000万円~ |
479万6,000円 |
No.2260 所得税の税率|国税庁(nta.go.jp)
海外FXを行う経済的余裕がある人は、少なくとも所得税だけで税率20%以上かかるとみられます。したがって、事実上、海外FXは国内FXよりも税金が高くなるといえます。
海外FXの確定申告の方法
海外FXの確定申告は、国税庁HPの「確定申告書作成コーナー」を利用して行うことができます。
確定申告の受付期間は例年2月16日~3月15日です(土日祝日の場合は翌営業日)。その際、以下の書類等を準備する必要があります。
【海外FXの確定申告に必要なもの】
- マイナンバーカード
- 海外FXの年間取引報告書(事業者ごとにダウンロード)
- 必要経費を証明する資料(領収書等)
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- 控除証明書
あとは、手順に沿って確定申告書を作成し、税務署に提出します。直接持参しなくても、郵送、電子申請(e-Tax)により提出することができます。
その際、年間取引報告書や必要経費を証明する資料の提出は不要です。ただし、税務調査に備えて5年間保管しておかなければなりません。
また、納付は確定申告の期限日までに済ませる必要があります。納付方法は、現金納付のほか、振替納付(銀行等)、インターネットバンキング、クレジットカード納付、スマホアプリ納付、コンビニ納付(QRコード)があります。
海外FXの節税方法
海外FXの節税方法は限られていますが、以下のようなものが挙げられます。
【海外FXの節税方法】
- 経費を漏らさず計上する
- 他の副業所得(雑所得)のマイナスがあれば通算する
- 所得税の各種所得控除制度を活用する
これらについて説明したうえで、よく節税方法として挙げられる「法人化」について補足します。
経費を漏らさず計上する
海外FXの利益は雑所得と扱われ、収入金額から必要経費を差し引いて算出されます。
ここで必要経費に算入できるものは、海外FXで利益を上げるため直接必要といえる金額に限られます。
実のところ、海外FXは海外のFX業者に多くを委ねるので、必要経費とできるものは限られています。だからこそ、経費にできるものは漏らさず把握して計上することが大切です。
主なものを挙げると以下の通りです。
【海外FXで必要経費に算入できる費用の例】
- インターネットやスマートフォン等の回線使用料
- 取引に使うパソコンやソフトウエア等の購入費用
- 取引のため専用で使う文具、デスク・椅子等の購入費用
- 取引にかかる各種手数料
- VPSサーバーのレンタル費用(自動売買の場合)
- 関連セミナー等への参加費用(交通費・宿泊費も含む)
- 関連書籍の購入費用
インターネットやスマートフォン、パソコン等は、海外FX取引に使う分を他と明確に区別すれば、必要経費に計上できます。そのために、毎日、パソコンの使用時間と、うち海外FX取引を行った時間とを記録を残しておく必要があります。
暗号資産の取引に使うためにパソコンやソフトウエアの購入代金については、10万円以上であれば減価償却の処理を行うことになります。購入代金額を複数年にわたって費用計上していきます。
他の副業所得(雑所得)のマイナスがあれば通算する
他に雑所得を生じる副業を行っていたら、そこで発生したマイナスを海外FXの利益から差し引くことができます。
ただし、前述したように、同じ雑所得でも、国内FXの利益については申告分離課税なので、マイナスが発生しても通算することができません。
所得税の各種所得控除制度を活用する
海外FXに限らず、所得税の節税対策として、各種の所得控除制度を活用することが挙げられます。
本記事では詳細には立ち入りませんが、特に、「医療費控除」「雑損控除」「小規模企業共済等掛金控除」「寄附金控除」については、条件をみたしていないか確認することをおすすめします。
補足|「法人化」はおすすめできない
よく「法人化」すると節税になることがあるといわれます。年間所得が「おおむね900万円以上」が目安とされています。なぜなら、所得が900万円以上になるあたりから、個人の所得税の税率が法人税の税率より高くなるからです。
また、法人化には、マイナス(損失)を10年後まで繰り越せるなどのメリットがあるともいわれます。
しかし、海外FXの場合、よほど安定して多額の利益を上げ続けられない限り、メリットはありません。
第一に、法人の場合は期末に含み益があればその含み益に課税されてしまいます。
第二に、法人を設立する場合、設立、維持のための費用がかかります。以下の通りです。
【設立にかかる費用】
- 登録免許税
- 法務局に支払う手数料・収入印紙代
- 不動産を資産管理会社に移転(現物出資)する場合の登記費用
- 司法書士への報酬
【維持の費用】
- 税理士への報酬
- 法人住民税(年7万円)
- 社会保険料
第三に、海外FXの利益を引き出す際、いったん法人口座に入金させ、それを役員報酬として支給する手続をとらなければなりません。
役員報酬は「定期同額給与」または「事前確定届出給与」の要件をみたさない限り会社の経費(損金)に算入されないので、法人税がかかります。また、それに加えて個人の側でも給与所得として課税されるハメになります。
まとめ
海外FXは国内FXと比べて大きな利益を上げられる可能性があります。しかしその反面、リスクも大きいうえ、税制面で不利であることを覚悟しておく必要があります。
海外FXの利益にかかる税金は、他の所得と合算して課税される「総合課税」の方式がとられ、かつ、超過累進税率の対象となります。国内FXが「申告分離課税」で税率も全部で20.315%にとどまることと比べると、税負担が大きくなります。
また、節税方法は限られているので、経費を漏らさず計上することが大切です。たとえば、パソコンの利用時間等については、細かく記録を残しておく必要があります。