財務レバレッジとは?言葉の意味から知っておきたい情報までをわかりやすく解説
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会社の財務状況を分析する指標の一つに「財務レバレッジ」があります。レバレッジとは「てこ」を意味する言葉ですが、財務と「てこ」とはどのような関係があるか疑問に思う方も多いと思います。
経営者や経理担当者は、経営指標の一つである「財務レバレッジ」について正しい理解が求められます。
本記事では「財務レバレッジ」の言葉の意味や内容、知っておきたい情報についてわかりやすく解説していきます。
目次[非表示]
- 1.財務レバレッジとは
- 1.1.財務レバレッジの計算式
- 1.2.財務レバレッジの目安
- 1.3.財務レバレッジが低い場合の自己資本の判断方法
- 2.財務レバレッジと関連比率
- 2.1.自己資本比率との関係
- 2.2.ROEとの関係
- 2.3.DEレシオとの関係
- 2.4.売上高利益率
- 2.5.総資産回転率
- 3.財務レバレッジを効かせるメリット・デメリット
- 3.1.財務レバレッジを効かせるメリット
- 3.2.財務レバレッジを効かせるデメリット
- 4.まとめ
財務レバレッジとは
財務レバレッジとは、小さな力で重い物が持ち上げられる「てこ」のように、少ない自己資本で大きな事業を行うことを指します。
財務レバレッジの計算式
財務レバレッジを求める計算式は、以下のとおりです。
財務レバレッジ(倍)=総資本÷自己資本 |
財務レバレッジは簡単に言えば、総資本が自己資本の何倍となるかを表したもので、この値が大きければ、借入金や社債などの他人資本の割合が高いことを示します。
具体例を用いて解説していきましょう。
例①
総資本100万円 |
自己資本100万円 |
財務レバレッジ=総資本100万円÷自己資本100万円=1倍
例②
総資本200万円 |
他人資本100万円 |
自己資本100万円 |
財務レバレッジ=総資本200万円÷自己資本100万円=2倍
例③
総資本400万円 |
他人資本300万円 |
自己資本100万円 |
財務レバレッジ=総資本400万円÷自己資本100万円=4倍
上記の3つの例を見れば明らかなように、自己資本は全て100万円でも他人資本の額によって財務レバレッジの値は変わってきます。つまり財務レバレッジとは、他人資本をどの程度集めて会社経営を行っているかを見る指標です。
財務レバレッジの目安
他人資本の割合が多くなり財務レバレッジを高めれば、借入金の返済や利息負担額が増えるといったリスクも大きくなります。
しかしながら、上述の例①のように財務レバレッジが1倍の無借金経営なら優良企業であるとは必ずしも言い切れません。なぜなら、借入をして積極的に投資して利益をあげた方が良いケースは多くあるからです。
財務レバレッジは、業種によって平均値は異なります。中小企業庁が公表した「2022年版中小企業白書 付属統計資料」によると、財務レバレッジの業種別平均は以下のとおりです。
産業 |
財務レバレッジ |
全業種 |
2.55 |
建設業 |
2.28 |
製造業 |
2.17 |
情報通信業 |
1.93 |
運輸業、郵便業 |
2.78 |
卸売業 |
2.60 |
小売業 |
3.18 |
不動産業、物品賃貸業 |
3.09 |
学術研究、専門・技術サービス業 |
1.95 |
宿泊業、飲食サービス業 |
7.15 |
生活関連サービス業、娯楽業 |
2.94 |
サービス業(他に分類されないもの) |
2.57 |
以上によると、全業種の平均は2.55倍であるものの、情報通信業や学術研究、専門技術サービス業などでは平均より低く、宿泊業、飲食サービス業や小売業、不動産業、物品賃貸業などでは平均より高いということが分かります。
財務レバレッジの目安となる数値は業種ごとの特徴によって変わり、たとえば先行投資が必要な宿泊業や飲食業などは高くなる傾向があります。経営者にとっては事業の動向を確認しながら、財務レバレッジを上げすぎず下げすぎず適切な倍率を模索していくことが求められます。
財務レバレッジが低い場合の自己資本の判断方法
財務レバレッジが低い場合、企業の自己資本比率が高いことを示しています。自己資本比率が高ければ、企業は他人の資本に依存せずに経営している状態です。これは経営や資金の安定性が高い傾向にあると評価できます。
ただし、前述のように業界ごとに標準は様々です。競合他社のレベルとの比較、他の財務指標との総合的な分析と合わせて判断すべきでしょう。財務レバレッジが低いから、優良な状態であるとは限らないので注意が必要です。
財務レバレッジと関連比率
財務レバレッジは他の財務比率とも関連があります。特に関わりの深い「自己資本比率」と「ROE」について解説していきます。
自己資本比率との関係
総資本における自己資本の割合を求める指標が「自己資本比率」です。自己資本比率は、企業の「安全性」を示した指標で、求める計算式は以下のとおりです。
自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100 |
この計算式から分かることは、財務レバレッジと自己資本比率は分子と分母を入れ替えた逆数の関係にあることです。
自己資本比率が上がれば財務レバレッジは下がり、その反対も起こります。自己資本比率は「安全性」に焦点を当てているのに対し、財務レバレッジは「収益性」に焦点を当てていると言えます。
ROEとの関係
ROEは「Return On Equity」の略で、自己資本における当期純利益の割合を求める指標です。ROEを求める計算式は、次のとおりです。
ROE=当期純利益÷自己資本 =(当期純利益÷売上高)×(売上高÷総資本)×(総資本÷自己資本) =(売上高純利益率)×(総資本回転率)×(財務レバレッジ) |
ROEの計算式は「売上高純利益率」「総資本回転率」「財務レバレッジ」の3つの指標に分解できます。すなわち、ROEを向上させるためには次の3つがポイントになります。
・財務レバレッジを高める。
・効率的に総資本を運用して大きな売上高を生み出す。
・売上高純利益率を拡大させる。
財務レバレッジを上昇させると連動してROEが高くなります。ROEは「収益性」と「効率性」に焦点を当てた指標です。
ただしROEを高めるために、過度に財務レバレッジを上げればいいというものではなく、それぞれの指標においてバランスをとることが重要です。
DEレシオとの関係
DEレシオとは有利子負債(Debt)と自己資本(Equity)の割合(Ratio:レシオ)を示すもので、以下の計算式で算出されます。
DOレシオ=有利子負債÷自己資本 |
一般的にDEレシオは1倍以下が望ましいとされています。つまり、自己資本の範囲内に有利子負債が収まっていれば、健全な財務状況であるとみなされるのです。
財務レバレッジでは、未払金や買掛金などの無利子負債も含まれています。そのため、企業に対して負担となる、実質的な有利子負債がどの程度含まれるのかを分析できません。
一方、DEレシオは財務レバレッジよりも高い精度で会社の財務状況を示せるのが強みです。ただし、資本金と自己資本が少ない中小企業がDEレシオを1倍以下にするのは、大変難しいでしょう。中小企業の場合、できるだけ下げたほうがいい指標ぐらいの感覚でチェックするのが現実的です。
売上高利益率
売上高利益率は、当該企業の本業によって得た収益を示す商品やサービスの売上の合計である「売上高」に対して、どれだけの利益が上げられたかを示します。
計算式は以下の通りです。
売上高利益率(%)=当期純利益÷売上高×100% |
当期純利益は売上総利益や粗利とも呼ばれ、会社の利益として根幹をなすものです。損益計算書における各段階利益と言い換えることもでき、上記の分母を営業利益に置き換えることで、売上高営業利益率が算出されます。
売上高利益率は企業の収益性を分析するうえで基本的でありながら、業種によって大きく差がつく指標です。具体的な業種別の企業平均は製造業と建設業が18%、卸売業が19%、小売業が30%、サービス業が43%、飲食・宿泊業が65%といわれます。
総資産回転率
総資産回転率とは、ある一定の期間内で、売上の影響で総資産がどの程度変化したのかを示すものです。「投資」→「販売」→「回収」の1サイクルを意味しており、総資本回転率とも呼ばれます。
計算式は以下の通りです。
総資産回転率(回)=売上高÷総資産 |
資産の回転効率を示す指標で、特に指定がなければ、1年間に総資産が何回売り上げとして回転したかを表します。なお、総資産を厳密に理解するために、以下の式を用いて「中期平均値」を使う場合もあります。
総資産期中平均=(期首の総資産+期末の総資産)÷2 |
財務レバレッジを効かせるメリット・デメリット
ここからは財務レバレッジを効かせるメリット・デメリットについてくわしく解説します。
財務レバレッジを効かせるメリット
財務レバレッジを効かせるメリットには次のような点があげられます。
■資金を投入して事業を拡大できる
企業の成長のためには、設備投資が不可欠です。金融機関からの資金調達によって投資機会を見極め、事業の拡大に備えていくことが重要です。
■ ROEが高まり利益の拡大が期待できる
他人資本を拡大し財務レバレッジを効かせるメリットの1つが、ROE(自己資本比率)の向上による利益の拡大です。前述のようにROEは企業が自己資本に対し、どれだけ効率的に生み出しているかを示す指標でした。
ROE=(売上高純利益率)×(総資本回転率)×(財務レバレッジ) |
上記の計算式でROEを求めることができます。式の構成要素の1つである、財務レバレッジが高くなればROEが高まり利益の拡大が期待できるのです。
■節税効果が得られる
負債で資金調達すると支払利息が発生します。法人税法上では、支払った利息は損金に算入されるため、課税所得が少なくなって節税効果が得られます。
新しいプロジェクトを実施するために資金が必要だけど、企業の自己資本だけでは十分な資金を捻出できない場合に利用するのが一般的です。ただし、利息によって支払いコストが増えるのはリスクになります。
財務レバレッジを効かせるデメリット
財務レバレッジを効かせるデメリットには次のような点があげられます。
■財務リスクが高まる
財務レバレッジを効かせると、負債比率が増加します。負債比率の増加によって、元本と利息の支払いが増え、会社が返済不能になるリスクも高まるので注意が必要です。
返済不能に陥ると、企業の信用に悪影響を及ぼす可能性があり、最悪の場合は債務不履行や倒産に至りかねません。また、負債比率が高いと金融機関からの融資が厳しくなるケースもあります。
財務レバレッジを効かせると決めた場合、負債比率を適切にコントロールするように意識しましょう。そのためには、事前からキャッシュフローの健全性を維持したり、返済能力の確保したりするのが重要です。
■景気変動に弱い
景気が後退する局面になり、利益が急激に減少するようなことに陥ってしまうと倒産リスクが高まります。景気変動の波を受けても、会社の経営に影響が出ないような財務基盤を構築することが重要です。
■決算書の信頼性が求められる
金融機関は取引先の財務状況を審査して資金を貸し付けます。負債比率を高めることは、資金調達額が増えることになり、決算書の信頼性がより重要になってきます。
まとめ
財務レバレッジは、会社の経営状況を把握するための重要な指標のひとつです。大きすぎても小さすぎてもいいというものではありません。
会社を取り巻く業界の動向や景気変動、金融環境などあらゆる要素を総合的に検討して、財務レバレッジの水準を模索する必要があります。
時代の流れや変化が激しい昨今では、財務基盤の安定化を念頭に置きながら、財務レバレッジを効かせた経営効率を高めていくことが会社の存続には不可欠でしょう。
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