法人税の計算方法とは?正しく計算するために押さえたいポイントや計算方法を解説
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法人税は法人の所得に対して課される税金です。法人が支払う税金のなかでも特にインパクトが大きく、高額になるケースも多くみられます。
法人税は個人に課される所得税に比べ、複雑なルールが多く存在します。そのため法人税の額を正しく出すためには、計算方法や注意点を押さえることが大切です。
本記事では法人税の計算にあたって押さえるべきポイントを詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.法人税の計算に使う税率
- 2.法人税の計算の流れ
- 2.1.課税所得を計算する
- 2.2.適用する法人税率を確認・税率をかける
- 3.法人税の計算例
- 4.法人税と似た用語および計算方法の違い
- 5.法人税の計算における注意
- 5.1.中小企業のみに適用される税制や特例が多く存在
- 5.2.収益・益金と費用・損金で間違えやすい部分に注意
- 5.3.端数処理の方法も要確認
- 6.まとめ
- 7.経理業務でお悩みのときは、グランサーズにご相談ください!
法人税の計算に使う税率
法人税は各事業年度の課税所得に法人税率を乗じて計算します。こちらの法人税率ですが、法人の種類・法人の規模・所得の大きさなどによって異なる点に注意が必要です。
法人税の計算に用いる税率はそれぞれ以下のとおりです。
- 資本金1億円以下の普通法人
・所得年800万円以下の部分:15%※適用除外事業者は19%
・年800万円超の部分:23.2% - 資本金1億円超の普通法人:23.2%
- 協同組合等
・年800万円以下の部分:15%
・年800万円超の部分:19% - 公益法人等
・公益社団法人・公益財団法人・非営利型法人・その他公益法人等とみなされるもの:年800万円以下の部分15% 年800万円超の部分23.2%
・その他の公益法人等:年800万円以下の部分15% 年800万円超の部分19% - 人格のない社団等
・年800万円以下の部分:15%
・年800万円超の部分:23.2% - 特定の医療法人
・所得年800万円以下の部分:15%※適用除外事業者は19%
・年800万円超の部分:19%
※上述した内容以外にも、大法人による支配の有無など特例と呼べるような要件も存在します。また開始事業年度によって税率に若干の相違もあるため、計算の際は国税庁の公式ホームページから最新情報をご確認ください。
計算に用いる法人税率を誤ってしまうと税額も変わってしまいます。法人税の計算を行う際は、自社が用いるべき法人税率がどれであるかを必ず確認しましょう。
法人税の計算の流れ
続いて法人税の計算の流れを紹介します。流れ自体は非常にシンプルで、工程で表すと以下のようになります。
- 課税所得を計算する
- 適用する法人税率を確認・税率をかける
法人税の計算では、法人税率をかける工程よりも、最初に行う課税所得の計算のほうが複雑かつ重要度が高いです。それぞれの工程について詳しく解説します。
課税所得を計算する
法人の課税所得とは、各事業年度の益金の合計から損金の合計を差し引いた金額です。益金とは法人税の計算上用いる収益を、損金とは法人税の計算上用いる費用を意味します。
法人税の計算で特に重要なポイントが、課税所得=会計上の利益とは限らない点です。法人税では益金・損金に算入する項目がそれぞれ細かく決められています。そのなかには会計上は収益でも法人税法上は益金に算入しない項目(益金不算入)や、会計上は損失でも法人税法上は損金に算入しない項目(損金不算入)といったものが複数存在します。
以下に益金不算入・損金不算入となる項目の主な例を取り上げました。
- 益金不算入:有価証券などの受取配当金、税金の還付、資産の評価益など
- 損金不算入:役員報酬・交際費・寄付金(要件を満たす部分は損金算入可)、減価償却超過額、特定の税金など
益金および損金の算入・不算入を考慮し、課税所得の計算を行います。
なお、なぜ会計上の利益と税務上の課税所得が異なるのか、その理由はそれぞれの目的が異なるためです。
会計の目的は、投資家などの利害関係者に対して、財政状態・経営成績などを明らかにすることです。一方で税務は、事業活動や経営状態などを配慮した、公平・適切な課税が目的です。
仮に交際費を全額損金として算入できてしまうと、節税を目的とした不必要な交際費を支出する企業が増える恐れが大きくなります。利益を小さくして税金を減らすために、役員報酬を不当に大きくするやり方も起こり得ます。
このように会計上の利益=税務上の所得では、脱税行為が横行するリスクが非常に高いです。不当な税金逃れを防ぎ公平な課税を実施するために、会計上の利益と税務上の所得は異なる計算方法が用いられています。
適用する法人税率を確認・税率をかける
課税所得の計算が終われば、あとの流れはシンプルです。適用する法人税率を確認し、税率をかけて法人税額を算出します。
法人税率を確認する際は、はじめに自社がどの種類の法人に該当するか確認し、それから具体的な税率を確認するのがわかりやすいです。なお前述のように、資本金1億円超の普通法人以外は、年800万円以下の所得とそれを超える部分で適用する税率が変わります。
なおその年の事業年度が1年に満たない場合、以下の式で基準となる所得を計算します。
- 800万円×該当する事業年度の月数÷12
例えば、その事業年度の月数が10ヶ月の場合、800万円×9ヶ月÷12=600万円です。
資本金1億円以下の普通法人であれば、600万円以下の部分は15%、600万円超の部分は23.2%を乗じて法人税の額を計算します。
法人税の計算例
ここでは具体的な例を使いながら法人税の計算方法を紹介します。今回用いる例は以下のとおりです。
- 法人の種類:普通法人(適用除外事業者に該当しない)
- 資本金の額:5,000万円
- 益金の額:3,000万円
- 損金の額:1,000万円
まずは課税所得を計算します。実務では会計上の利益に各種項目の加減算をして課税所得を計算しますが、今回は法人税の計算の流れを紹介する目的のため、益金・損金を単純な金額で設定しています。この場合、法人税の計算基礎となる課税所得は以下のようになります。
- 益金3,000万円-損金1,000万円=課税所得2,000万円
続いては適用する法人税率の確認です。今回は普通法人かつ資本金5,000万円、すなわち1億円以下の法人であるため、以下の税率を用います。
- 所得年800万円以下の部分:15%
- 年800万円超の部分:23.2%
課税所得の金額は2,000万円で800万円を超えています。したがって適用する税率は2種類、800万円までは15%、800万円を超える部分である1,200万円には23.2%です。
課税所得に税率を乗じて法人税額を計算します。
- 800万円×15%=120万円
- 1,200万円×23.2%=278.4万円
- 120万円+278.4万円=398.4万円
以上から、今回の例では法人税額398.4万円となります。
なお実際の法人税額の計算では、各種特例の適用や細かな調整など、より複雑な計算が必要なケースが多いです。
法人税と似た用語および計算方法の違い
法人税と似た税金として、以下の2点が挙げられます。
- 法人住民税
- 法人事業税
一般的に、法人税・法人住民税・法人事業税をまとめて法人税等と呼びます。
いずれも法人が支払う税金で法人税と似た印象を持ちますが、実際の性質や計算方法などは大きく異なるため注意が必要です。それぞれ詳しく解説します。
法人住民税
法人住民税とは、法人の事業所が所在する自治体に支払う地方税です。個人が住んでいる自治体に支払っている住民税と近い性質を有しています。
法人住民税と法人税の大きな違いは以下の2点です。
- 納付先:地方税である法人住民税は地方自治体、国税である法人税は税務署(国)です
- 納税義務の発生条件:法人税は課税所得が発生した場合のみ納税義務があります。一方で法人住民税は課税所得がゼロでも一定額の納税義務が発生します
法人住民税は法人税割と均等割によって構成されています。法人税割は法人税をもとに算出される部分であり、法人税額に一定税率を乗じた金額です。法人税の金額が計算基礎となるため、法人税が発生していない、すなわち課税所得がゼロの場合は法人税割もゼロになります。
均等割とは資本金の大きさや従業員の数ごとに金額が設定されている部分です。具体的な金額は自治体によって異なるため、事業所の所在する自治体の情報を確認する必要があります。
なお均等割は、所得の有無に関係なく必ず発生します。事業年度の所得がゼロでも均等割部分は必ず発生するため、法人地方税はゼロになり得ないのです。
法人税割と均等割の金額を合算した額が、最終的な法人地方税の金額になります。
法人事業税
法人事業税も法人住民税と同様に、法人の事業所が所在する自治体に対して支払う地方税です。法人住民税は所得の有無に関わらず一定額が発生しますが、法人事業税は所得がゼロであれば発生しません。
法人事業税と法人税の大きな違いは以下の2点です。
- 納付先::法人事業税は地方税であり納付先は地方自治体、法人税は前述のように国に納付します
- 損金算入の可否:法人事業税は損金に参入できる税金です。法人税・法人住民税は損金不算入なので、この点は大きな違いといえます
法人事業税の計算式は以下のとおりです。
法人事業税=課税所得×法人事業税率
設定されている法人事業税率は自治体によって異なるため、自治体の公式ホームページなどで確認する必要があります。なお法人事業税率も法人税率と同様、所得額によって適用される税率が異なるケースが多いです。
法人税の計算における注意
法人税の計算を行う際は、以下の3点に注意が必要です。
- 中小企業のみに適用される税制や特例が多く存在
- 収益・益金と費用・損金で間違えやすい部分に注意
- 端数処理の方法も要確認
注意点についてそれぞれ詳しく解説します。
中小企業のみに適用される税制や特例が多く存在
法人税率の部分で紹介したように、資本金の額が1億円以下である中小企業は、そうでない普通法人よりも適用される税率が小さいです。法人税率の軽減は、中小企業のみに適用されている優遇税制のひとつといえます。
中小企業のみに適用される税制や特例はほかにも多く存在します。主な例は以下のとおりです。
- 欠損金の繰越控除:青色申告をしている中小企業は、過去10年分の欠損金繰越が可能です。仮にその事業年度に300万円の黒字が出たとしても、過去10年の間に累計で300万円以上の赤字(欠損金)が発生していれば、欠損金を差し引くことで当該事業年度の所得がゼロとして扱われます
- 少額減価償却資産の特例:原則として1組10万円超の減価償却資産は一括での経費計上ができず、耐用年数に応じて減価償却を行います。しかし中小企業の場合、1組30万円以下の減価償却資産を購入した場合、年間で合計300万円までは一括での経費計上が可能です
- 交際費課税の特例:大企業の場合、交際費は原則としてほとんどが損金不算入です。一方で中小企業の場合、交際費の一部を損金に算入できます
中小企業に該当するのに優遇税制を考慮せずにいると、必要以上の法人税を支払うことになってしまいます。また大企業であるのに欠損金の繰越控除などを適用してしまうのも誤りです。自社が中小企業に該当するか否かの正しい判断が必要です。
収益・益金と費用・損金で間違えやすい部分に注意
会計上で用いる収益・費用と、税務上で用いる益金・損金は一見似ていますが、異なる部分も多く存在します。収益・益金および費用・損金の違いを把握しないと、課税所得の計算を誤ってしまうため注意が必要です。
収益・益金と費用・損金で間違えやすい、混同しやすい部分をいくつか紹介します。
- 収益・益金
・有価証券や投資用不動産などの評価益:会計上は収益として計算しますが、益金不算入の項目です
・特定の受取配当金:会計上はすべて収益に含まれます。一方、剰余金の配当や特定の要件を満たす配当金は益金不算入となります - 費用・損金
・交際費:会計上は会社の規模を問わずすべて費用に含めますが、税務上は前述のように一部を除き損金不算入です
・寄付金:会計上はすべて費用として扱われますが、損金算入できる範囲は細かく規定されています。要件を満たさない部分は損金不算入になります
・税金:税金は損金不算入のものが多いです。また損金不算入の税金にかかる延滞金や法人に科される罰金・過料なども損金不算入となります。一方で費用かつ損金算入できる税金も複数あるため、細かな確認が必要です
収益・益金と費用・損金の違いを押さえないと、課税所得の計算結果が誤ったものになってしまうため注意が必要です。なお今回紹介した内容以外にも注意点が多く存在します。計算に際して少しでも疑問や不安があれば専門家に相談するのが安心です。
端数処理の方法も要確認
法人税の計算方法だけでなく、端数処理の方法も押さえる必要があります。
法人税を計算する際、課税所得は1,000円未満の端数を切り捨てます。
たとえば益金-損金が757,899円であった場合、899円は切り捨てて、課税所得757,000円として計算を進めます。
端数の切り捨てをせず税率を乗じてしまうと税額が変わってしまう恐れがあるため注意が必要です。
税額は100円未満を切り捨てて確定額を算出します。法人税率を乗じた結果が89,222円であった場合、22円は切り捨てとなり、89,200円が納税額になります。
いずれも端数は切り捨てであり、四捨五入ではない点に注意が必要です。
まとめ
法人税は計算方法や要件などが細かく規定されています。法人税を正しく計算するためには、法人税に関する正しい理解が必要不可欠です。また税法は高頻度で改訂が入るため、最新の税法を確認する必要もあります。
法人税の計算について不安や疑問があれば、税理士などの専門家に相談しましょう。自社で無理にすべて対応しようとせず、専門家のサポートを得るのが安心です。
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