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寄付金によって法人税の節税ができる?損金算入の注意点や取り扱いの注意点を解説

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法人税の節税を目的として、寄付金制度を活用しようと考える方も多いのではないでしょうか。

法人税は益金から損金を控除した金額である所得金額によって決定されます。所得金額が大きいほど法人税額も大きくなるため、多くの企業ではさまざまな節税対策を実施します。そんな法人税の節税対策として注目度が高い方法のひとつが寄付金です。

寄付金は損金に算入できる条件が細かく規定されています。そのため寄付金制度を正しく活用すれば法人税の節税効果を得られますが、方法によっては法人税の節税効果を得られない恐れがあります。そのため法人税を抑えるためには、寄付金と法人税に関する深い理解が必要です。

本記事では寄付金制度を活用して法人税を抑える方法について解説します。

目次[非表示]

  1. 1.法人税と寄付金の関係
    1. 1.1.そもそも寄付金とは
    2. 1.2.法人税制上の寄付金の分類
    3. 1.3.法人の寄付金は損金に算入できる?寄付の支出先による
  2. 2.法人税と寄付金に関する注意点
    1. 2.1.損金算入できるのは実際に支払いがあった寄付金のみ
    2. 2.2.寄付金かそれ以外の経費か判断が難しい支出がある
    3. 2.3.寄付金の損金算入限度額を誤って認識・計算した際に起こる事態
  3. 3.法人税に影響する?企業版ふるさと納税とは
    1. 3.1.企業版ふるさと納税とは
    2. 3.2.個人版ふるさと納税との相違点
    3. 3.3.企業版ふるさと納税の方法
  4. 4.まとめ
  5. 5.経理業務でお悩みのときは、グランサーズにご相談ください!

法人税と寄付金の関係

寄付金は法人が行う支出のなかでも、ほかの項目とは異なる特殊な性質を有します。寄付金による法人税の節税効果を得るためには、法人の寄付金や法人税に与える影響について正しい理解が必要です。

はじめに法人税と寄付金の関係について解説します。


そもそも寄付金とは

法人税法における寄付金とは、見返りを求めずに贈与した金銭や資産を意味する用語です。拠出金や見舞金などといった呼び方をされるケースもあります。

通常経費と呼ばれるものは、金銭や資産と引き換えに何らかの見返りが存在します。モノやサービスの購入・スタッフへの給与など種類はさまざまですが、いずれも何らかの直接的な便益や事実への対価です。

一方で寄付金には、一切の見返りがありません。寄付金を支払うことによる直接的な対価は存在しないといえます。寄付によって支出先から特別な扱いを受ける・自社の評判につながるなどの効果にはつながらない点が大きな特徴です。


法人税制上の寄付金の分類

法人税法において、寄付金は4つの種類に分類されます。

  • 国や地方公共団体への寄付金:国や地方公共団体(都道府県や市区町村など)への寄付金です
  • 財務大臣が指定した寄付金:公益を目的とする法人や団体による事業のうち、財務大臣による指定を受けたものへの寄付金です。広く一般に募集される・公益性および緊急性が高いものが該当します。主な例として、赤い羽根募金や、国立大学法人等への寄付金が挙げられます
  • 特定公益増進法人への寄付金:公益の増進に著しく寄与する法人の主たる目的である業務に対する寄付金です。主な例として、日本赤十字社や公益社団法人・公益財団法人への寄付が挙げられます
  • 一般の寄付金:上記3つのいずれにも当てはまらない寄付金は一般の寄付金となります。


法人の寄付金は損金に算入できる?寄付の支出先による

法人の寄付金は損金への参入が可能です。しかし必ずしも全額の損金算入ができるわけではありません。

同じ寄付金と呼ばれる支出であっても、性質や寄付の支出先によって種類が異なると紹介しました。そして法人の寄付金は、種類によって損金算入限度額が異なります。

国や地方公共団体への寄付金は、すべて損金算入が可能です。財務大臣が指定した寄付金も、国や地方公共団体への寄付金と同様に全額損金算入ができます。

特定公益増進法人への寄付金は、損金算入限度額が決まっています。損金算入限度額の計算式は以下のとおりです。


寄付金の損金算入限度額=(資本金等の額×事業年度の月数/12×3.75/1,000+所得の金額×6.25/100)×1/2

仮に資本金等の額が1,000万円、所得の金額が200万円で事業年度が12ヶ月の場合、損金算入限度額は以下のとおりです。


(1,000万円×12/12×3.75/1,000+200万円×6.25/100)×1/2

=(3.75万円+12.5 万円)×1/2

=16.25万円×1/2

=8.125万円

特定公益増進法人への寄付金のうち損金に算入されなかった部分は、一般の寄付金として扱います。

一般の寄付金も損金算入限度額が定められています。計算式は以下のとおりです。


寄付金の損金算入限度額=(資本金等の額×事業年度の月数/12×2.5/1,000+所得の金額×2.5/100)×1/4

先ほどと同様、資本金等の額が1,000万円、所得の金額が200万円、事業年度が12ヶ月の場合における損金算入限度額を例として計算します。


(1,000万円×12/12×2.5/1,000+200万円×2.5/100)×1/4

=(2.5万円+5万円)×1/4

=7.5万円×1/4

=1.875万円

損金算入限度額を超える寄付金は、損金不算入となります。

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法人税と寄付金に関する注意点

法人税と寄付金に関する注意点として、以下の3点が挙げられます。

  • 損金算入できるのは実際に支払いがあった寄付金のみ
  • 寄付金かそれ以外の経費か判断が難しい支出がある
  • 寄付金の損金算入限度額を誤って認識・計算した際に起こる事態

注意点についてそれぞれ詳しく解説します。


損金算入できるのは実際に支払いがあった寄付金のみ

法人税法において寄付金は4つの種類に分類されますが、いずれの場合も、損金算入できるのは実際に支払いがあった分のみです。寄付金の支出が決定しており、寄付先との相談や調整などが完了している場合でも、支払い前の寄付金は一切損金に算入できません。

会計期間が4月から翌年3月の会社において、2022年3月30日に寄付に関するすべてが決定しており、あとは支出するだけと仮定します。2022年3月31日までに寄付金の支出が完了すれば、限度額の範囲内で損金算入が可能です。一方で支出が2022年4月1日以降になった場合、2022年3月期の損金算入が一切できなくなります。

法人の経費の多くは、現金が動いたときではなく、取引が発生したタイミングで計上します。しかし例外として、寄付金は現金主義での計上になるため注意が必要です。


寄付金かそれ以外の経費か判断が難しい支出がある

支出の内容によっては、寄付金かそれ以外かの判断が難しいケースがあります。主な例を紹介します。

  • 協賛金:協賛企業名の読み上げやホームページ等での公開がある場合、広告効果を目的とした支出とみなされるため、広告宣伝費に該当します。同じ協賛金でも企業名が公表されない場合、一切の対価がないため寄付金扱いです
  • 取引先に対する贈与:ビジネス上関係のある相手に対する贈与は、今後の事業に影響を与える可能性が高いため接待交際費となります
  • 従業員に対する給与以外の支出:従業員に対する給与以外の支出は、支出目的や性質に関係なく、寄付金に該当するケースはほぼゼロです。寄付金の要件として、事業に関係しないことが挙げられます。従業員は当然ながら事業と深く関わりのある相手であるため、寄付金に該当するケースはほとんどないといえます
  • ※従業員に対する給与以外の支出は、接待交際費または福利厚生費に該当するケースが多いです
  • 無利息の貸付:貸付金は原則として利息(利子)の受け取りが必要です。無利息の場合、本来発生する利息部分を相手に寄付しているとみなされます。発生し得る利息を計算して一般の寄付金として扱います

寄付金かそうでないかは、支出先との関係性や事業への影響有無を基準にするとわかりやすいです。それでも判断ができない場合、税理士などの専門家に相談しましょう。


寄付金の損金算入限度額を誤って認識・計算した際に起こる事態

寄付金の損金算入限度額を誤って認識・計算すると、法人税の計算で用いる課税所得も誤った金額になります。結果として納付するべき法人税の額も、正しくないものになってしまうのです。

法人税の申告・納税を誤り、納付額が正しい金額よりも小さかった場合、以下のような事態が起こります。

  • 延滞税がかかる:不足していた税額(追加で納める分)に対し、法定申告期限の翌日から納付日までの延滞税が発生します
  • 加算税が発生する:税務調査などにより納税額の不足を指摘された場合、罰金としての性質を持つ加算税の納付が必要になります。なお税務調査の事前通知よりも前に修正申告・不足分の納税を行なった場合は加算税が発生しません

上記のペナルティは寄付金の損金算入限度額に限らず、法人税の計算を誤った場合に適用されます。法人税を正しく計算することを大前提としつつ、万が一誤りに気づいたら、なるべく早めに修正申告を行いましょう。

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法人税に影響する?企業版ふるさと納税とは

ふるさと納税は好きな自治体に寄付を行える制度です。個人の所得税や住民税の節税効果が大きく、ルールがそれほど複雑でないため、多くの人が実施しています。ふるさと納税を行なった人を対象に返礼品を送る自治体も多く存在します。

ふるさと納税は通常個人を対象とした制度であり、法人による実施はできません。しかし近年は企業版ふるさと納税と呼ばれる制度「地方創生応援税制」が注目度を高めています。

地方創生応援税制は寄付の対象が自治体・節税効果を持つという点が通常のふるさと納税と共通しているため、企業版ふるさと納税と呼ばれます。本記事でも以降は企業版ふるさと納税と記載します。

企業版ふるさと納税について詳しく解説します。


企業版ふるさと納税とは

企業版ふるさと納税とは、企業が特定の自治体へ寄付を行なった際に、法人税等が軽減される制度です。

通常の自治体への寄付の場合、損金算入できるのは寄付金のうち約3割、税額控除できるのは最大3割です。しかし企業版ふるさと納税は、損金算入できる3割はそのままに、税額控除できる範囲が最大6割に広がっています。つまり企業版ふるさと納税では、最大で寄付金額の9割の法人税等軽減が可能です。

※正確な控除額を算出するには細かな計算が必要です

ただし、自治体への寄付金すべてが企業版ふるさと納税に該当するわけではありません。企業版ふるさと納税の対象となるのは、以下の要件すべてを満たした寄付金のみです。

  • 10万円以上の寄付
  • 自治体が作成し内閣府の認定を受けた地方創生に係る事業
  • 本社のある自治体以外への寄付

ひとつでも要件を満たしていない場合、企業版ふるさと納税として認められず、税額控除も小さくなってしまいます。


個人版ふるさと納税との相違点

企業版ふるさと納税と個人版ふるさと納税は、どちらも自治体を対象とした寄付金であり、節税につながる制度です。このように一見似た制度ではありますが、大きな相違点も存在します。企業版ふるさと納税に関する理解を深めるためには、個人版ふるさと納税との相違点に関する理解も必要です。

企業版ふるさと納税と個人版ふるさと納税の相違点として、以下の3点が挙げられます。

  • 返礼品の有無:個人版ふるさと納税は返礼品がもらえるケースが多いですが、企業版ふるさと納税には返礼品制度が一切ありません。直接的な見返りが存在する場合、寄付とみなされないためです
    ​​​​​​​※個人版ふるさと納税でも返礼品を設けていない自治体が存在します
  • 下限額の有無:個人版ふるさと納税には寄付金の下限額がありません。企業版ふるさと納税は前述のように10万円以上という要件があります
  • 寄付できる自治体:個人版ふるさと納税はどの自治体にも寄付が可能です。(ただし居住自治体への寄付は返礼品の対象外)一方で企業版ふるさと納税は、本社が所在する都道府県・市区町村以外という規定があります


企業版ふるさと納税の方法

企業版ふるさと納税の方法について流れで解説します。なお自治体へ直接申請する場合とポータルサイトを経由する場合で異なりますが、より簡単な方法であるポータルサイトを経由する場合を紹介します。

  • 寄付する自治体を決める:企業版ふるさと納税のポータルサイトや自治体の公式ホームページなどを確認し、寄付する自治体を決めます
  • 寄付の申し込み・払い込みを行う:ポータルサイトの案内・指示に沿って必要事項の入力などを行います
  • 自治体から受領証明書を受け取る:企業版ふるさと納税を行なった証拠として受領証明書が発行されるので受け取ります
  • 税額控除の適用を受ける:企業版ふるさと納税を考慮して法人税の申告書を作成します

自治体へ直接申請する方法の場合、自治体によってルールが異なる可能性があるため事前に確認が必要です。自治体によっては申し込み前に企画課への相談や申し込みが必要とされています。

なお税額控除を受けられるのは、該当事業年度に払い込みが完了している分のみです。先に申し込みだけ行い払い込みは翌事業年度になった場合など、税額控除の適用を受けられる事業年度に注意しましょう。

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まとめ

法人が支払う寄付金のうち、要件を満たした部分は損金への算入が可能です。寄付金の支出先によって損金算入限度額が異なります。寄付金の損金算入限度額を誤ってしまうと、結果として法人税の申告および納付の誤りにもつながるため注意が必要です。

一般的な寄付金による法人税の節税効果はそれほど大きくありませんが、企業版ふるさと納税であれば、最大で寄付金額の9割の法人税等軽減ができます。企業版ふるさと納税には細かな要件や方法が定められています。正しく実施するためには、税理士などの専門家に相談するのが安心です。

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監修|筧 智家至(公認会計士・税理士)
監修|筧 智家至(公認会計士・税理士)
慶応義塾大学商学部卒。監査法人トーマツにて会計監査、株式上場支援、企業の経営改善支援に従事。平成24年筧公認会計士事務所(現:税理法人グランサーズ)を開設。常に現場に入り、経営者とともに課題に取り組み、経営者と常に相談しながら経営者のニーズに応え、解決策を導き出すことをモットーにしている。スタートアップ企業からIPO(上場)準備支援まで、あらゆる成長段階の企業のサポートをしており、税務会計顧問にとどまらない経営を強くするためのコンサルティングサービスに中小企業経営者の信頼と定評を得ている。東京商工会議所専門家エキスパート、セミナー実績多数。経営者向け人気YouTubeチャンネル「社長の資産防衛チャンネル」にも出演中。
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