【上場の仕方まとめ】上場させたい!上場に必要なことを徹底解説
会社の上場には資金調達や社会的信頼の獲得など、さまざまな面でメリットがあります。
しかし上場という言葉は見聞きしたことがあるものの、詳しい意味や上場の仕方は知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では会社を上場させるための方法について、詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.上場(IPO)とは?
- 1.1.プライム市場の上場基準
- 1.2.スタンダード市場の上場基準
- 1.3.グロース市場の上場基準
- 2.上場させるメリット
- 2.1.資金調達がしやすくなる
- 2.2.企業の知名度が高まる
- 2.3.企業の管理体制が強まる
- 3.上場させるデメリット
- 3.1.膨大なコストと時間がかかる
- 3.2.情報を開示する必要がある
- 3.3.企業が買収されるリスクがある
- 3.4.株主への対応が必要になる
- 4.上場の仕方・流れ
- 5.まとめ
- 6.スムーズに上場させるために、IPO支援を専門家へ相談!
上場(IPO)とは?
上場とは会社の株式を証券取引所に公開し、誰でも自由に売買できるようにすることを意味します。IPO(Initial Public Offering)も、上場と同じ意味で使われる言葉です。
株式が上場している企業は「上場企業」、株式が上場していない企業は「非上場企業」と呼ばれます。
上場企業の株式は、外部の人でも自由に売買できます。一方で非上場会社は株式の公開をおこなっていないため、株式の自由な売買ができません。非上場会社の株式は、会社の役員や関連会社のみが保有しているケースがほとんどです。
上場の大きなメリットとして、資金調達をしやすくなる点があげられます。投資家が株式を購入すれば、自社に資金が入ります。また知名度や社会的信頼を獲得できる点もメリットです。ただし上場を果たすには複雑な手続きの実施や、厳しい審査にクリアする必要などがあります。
上場するためには厳しい「基準」が設けられており、どの企業でも上場できるわけではありません。企業を上場させるには、どのような条件を満たす必要があるのか知っておくことが大切です。
そこで、日本で目にする機会が多い東京証券取引所(以下「東証」)の「プライム市場」、「スタンダード市場」、「グロース市場」の3つについて基準を紹介します。
プライム市場の上場基準
日本で最高クラスのマーケットである東証で最も上場基準が厳しいのがプライム市場です。ここに上場できれば世間の目に止まることも増え、信頼と実績が一気に向上します。
プライム市場に上場するために必要な条件は以下の通りです。
- 株主数800人以上
- 2万単位以上の株式が流通している必要あり
- 流通株式時価総額が100億円以上
- 企業の時価総額250億円以上
- 流通株式比率35%以上
- 純資産額50億円以上
このように、決して簡単ではない基準が設けられていますが、東証一部に上場すれば信頼のおける企業として一目を置かれるようになります。
スタンダード市場の上場基準
次にスタンダード市場ですが、こちらはプライム市場に比べて多数の企業が上場を果たしています。その理由として、プライム市場よりも大幅に低い基準値でクリアできる条件が多いからです。
スタンダード市場に上場するために必要な条件は、以下の通りです。
- 株主数400人以上
- 2,000単位以上の株式が流通している必要あり
- 流通株式時価総額が10億円以上
- 流通株式比率25%以上
- 純資産額が正であること
まずはスタンダード市場への上場を目指し、実績を積んでからプライム市場への上場を考える企業も多いのではないでしょうか。
グロース市場の上場基準
グロース市場は上場するための審査がスタンダード市場よりも優しく設定されています。そのため、前述のプライム市場とスタンダード市場に比べ、ベンチャー企業におすすめの市場です。
グロース市場に上場するために必要な条件は、以下の通りです。
- 株主数150人以上
- 1,000単位以上の株式が流通している必要あり
- 流通株式時価総額が5億円以上
- 流通株式比率25%以上
上場させるメリット
企業が上場すると、非上場のときに比べて多くのメリットが生まれます。
ここでは「資金調達がしやすくなる」、「企業の知名度が上がる」、「企業の管理体制が強まる」の3点について深掘りして解説します。
資金調達がしやすくなる
企業を株式上場させると、資金調達がしやすくなります。上場した後は、株式が市場に公開され、投資家が自社の株式を購入してくれれば、資金が調達できる流れです。
非上場企業であっても株式を発行し、株主を自ら見つけて購入してもらうことで資金調達できます。しかし、上場企業の場合は株主を探して購入をお願いせずとも、不特定多数の投資家から株式を購入してくれる可能性があるのです。
また、株式市場から調達された資金は返済不要である点も大きなメリットです。
毎月の返済が不要になり、企業の資金繰りにゆとりが生まれます。すると、事業規模を拡大したり、多角化しやすくなり、事業の安全性も向上するでしょう。
一方、企業の安全性が低い状態では投資家が株式を購入してくれません。スムーズに資金調達するには、株主にとって魅力的な企業でいられるような事業体制を取る必要がある点には留意しておきましょう。
企業の知名度が高まる
上場すれば、企業の知名度が大きく向上します。
前述した通り、企業を上場させるには多くの厳しい条件を満たさねばなりません。これにより、財務が一定以上優良である実績を示せるので、金融機関や顧客から高い信頼を得ることもできます。その結果、融資が受けやすくなったり、顧客を集客しやすくなるでしょう。
また、上場企業は就活市場でも人気なので、企業の知名度が向上と相まって優秀な人材を獲得しやすくなります。
さらに、自社の従業員も士気が向上して、より良いサービスを開発・提供することにつながるでしょう。
企業の管理体制が強まる
企業が上場するには、企業経営の健全性やコーポレート・ガバナンス、質の高い内部の管理体制などが求められます。そういった準備を進める中で、企業の管理体制が強まる点も魅力のひとつです。
法律を遵守した制度や規則を整備すれば、強固な組織運営が可能になります。事業規模の拡大や多角化の際、安定した組織基盤の上で運営ができるようになるでしょう。
上場させるデメリット
株式市場に上場する場合はメリットばかりでなく、デメリットも存在します。
上場による主なデメリットである「膨大なコストと時間がかかる」、「情報を開示する必要がある」、「敵対買収されるリスクがある」の3点について解説します。
企業の実態や状況によっては、上場しない方がいいケースもあるため、必ずデメリットを確認しておきましょう。
膨大なコストと時間がかかる
株式上場するためには膨大なコストと時間を要します。
まず、上場前から監査法人や証券会社への支払いおよび審査料が発生します。上場した後も監査法人と証券会社への支払いや上場料、株主総会の運営費用などの維持費が必要です。
実際のコストは「東証一部」や「東証二部」などの上場区分、企業の規模感によっても異なります。仮に「東証一部」に相当するプライム市場であれば、年間5,000万円以上の維持費を見積もっておくべきです。
また、上場の準備には通常3年以上かかります。準備に対して労力も必要ですので、人員や稼働時間の確保に多くの時間を費やさねばなりません。
前述の通り、上場するメリットは大きいですが、コストに見合うリターンがあるのか適切に判断しましょう。
情報を開示する必要がある
上場企業では、有価証券報告書や四半期報告書の発行が義務付けられます。また、四半期ごとに決算短信を発表して、適切に投資家へと情報を開示せねばなりません。
また、これまで対外的に公開していなかった企業の体制・費用などの情報も公開が義務付けられ、ライバル企業に自社の状況が筒抜けになります。
企業が買収されるリスクがある
上場すると、株式市場から誰でも自社の株式を売買できるようになり、企業が買収されるリスクが発生します。
同意なく経営権を奪われることを「敵対的買収」と呼び、特に避けねばならない事態です。
まだ日本では敵対的買収の件数は少なく、目立った事例は見られません。しかし、昨今はグローバル化が進んでおり、将来的には敵対的買収を行う企業が増える可能性もあります。
上場前の準備段階から、経営の乗っ取りを目的とする株式の買収に対し、どのような対策を講じるのか検討しておきましょう。
株主への対応が必要になる
上場企業になると経営者の独断で事業の方針を決定することができず、株主の考えを与するために、1年に1回の株主総会を開催することが会社法で義務付けられています。これには多くの費用が発生することを知っておきましょう。具体的には、株主への招集通知と同封する事業報告書および計算書類等の印刷費や郵送費、会場費、人件費などのコストが発生します。
また、継続して投資してもらうためにも、株主向けのIR活動を行うことが望ましいです。そのためにIRコンサルティングを受ける場合には報酬費用が発生し、必要に応じて人材を確保しなければいけません。
さらに、以前と比べて取締役会の機能発揮やサステナビリティへの対応、ダイバーシティの確保など、株主への対応に関して検討すべき事項が増えています。資金調達しやすくなる代わりに、株主への対応にかかる費用と時間を要することは念頭に置いておくべきです。
上場の仕方・流れ
それでは上場の仕方や流れについて具体的に解説します。上場には非常に長い時間がかかり、遅くとも予定の3期前には準備をする必要があります。上場までに必要な作業について、各会計期間ごとに解説します。
上場3期以上前
上場3期以上前には、上場に向けた社内体制の整備や監査法人からの調査、さらには上場を進めるための外部連携などを行います。上場まで時間がありますが、やるべきことは多くあります。それぞれ詳しく解説します。
■上場の検討・スケジュール計画
上場の検討は、上場の3期以上前から行います。上場するか否かを検討し、上場を決定したら具体的な進め方を計画します。
この段階では以下に関する検討・計画が必要です。
- 上場に関するメリット、デメリットの比較
- 市場の選定:証券取引所には複数の市場が設けられているため、どの市場に上場するか検討します
- スケジュールの計画
そもそも自社が上場をするべきか、メリット・デメリットを比較したうえで検討する必要があります。上場に向けて準備を進めると決めたら、市場の選定や上場までのスケジュールを計画しましょう。
■上場担当者やチームの設定
続いては上場に向けた社内体制の準備です。上場に関する実務作業の担当者やチームを設定します。
上場担当者にはIPOに関する専門知識や、スピーディーな処理能力などが必要です。実務経験があるのが理想ですが、社内に経験者がいなければIPOコンサルタントなど外部のサポートを受けましょう。
また効率的な上場準備のためにチームは必要ですが、担当チームのみがすべての作業を行うわけではありません。上場準備は社内全体で協力しながら進める必要があります。
■ ショートレビュー
ショートレビューとは予備調査とも呼ばれるもので、上場に向けて監査法人に実施してもらう調査です。上場準備の方向性や、上場に向けてやるべきことを具体化するために、ショートレビューが非常に重要です。
ショートレビューでは上場にあたって解決が必要な課題や、準備が必要な事項などを洗い出してもらえます。監査法人からの指摘事項を確認後、具体的な上場準備に入ります。
■外部との連携
上場準備を効率的・確実に進めるため、外部との連携強化も必要です。連携が必要な専門家・組織として、以下の例があげられます。
- メインバンク:上場に向けた資金繰りの相談やサポートを受けるため、連携強化が必要です
- ベンチャーキャピタル:資本政策に向けて、ベンチャーキャピタルのような投資会社の協力を得ます
- コンサルタント・コンサルティング会社:IPO全般の相談・サポートを受けるために重要です
- 顧問弁護士:顧問弁護士がいれば、上場に関する法律面での協力を得ましょう。
- 現状顧問弁護士がいない場合、必要に応じて探し契約できると安心です
外部の専門家と連携を深めることで、上場準備をスムーズに進められるようになります。
上場2期前
上場2期前には、上場のために体制強化が必要です。3期前までは準備や計画の段階でしたが、2期前は上場に向けた具体的な作業や、上場前に義務付けられた作業の実施などを進めていきます。上場2期前について詳しく解説します。
■監査法人による調査
上場2期前は、監査法人による以下の調査が必要です。
- 期の初めに受ける外部審査:監査に向けて体制を整えるため、まずは期の初めに調査を受けます
- 期末に受ける監査:上場するには、上場前2期分の監査および適正意見が必要です。
- 2期前からは会計監査が必要不可欠となります
この時期に受けた監査で問題が発覚し適正意見を得られなければ、問題を解決させ翌年改めて監査を受けます。2期分の適正意見が必要なため、上場予定が1年延びることになります。
■社内体制の整備
社内体制の整備も非常に重要です。内部監査担当者の設置や、組織・業務フローなどの細かな規定などを行います。非上場企業に比べ、はるかに細かく厳しい社内体制が求められます。
監査法人から受けた指摘事項をおさえつつ、以下のような部分も整備が必要です。
- 会計方針や予算管理に関する体制整備
- 各種管理システムの確立
- 社内規定の細かな設定
求められる内容は厳しいですが、上場のために必ずクリアしなければなりません。
■主幹事証券会社の設定、各種申請書用意
上場2期前には、主幹事証券会社の選定を進めます主幹事証券会社とは、株式公開に関する指導やサポート、関係機関との調整などを中心的に行う証券会社です。1期前の決定でも問題はありませんが、時間がかかる作業のため、早めの着手が安心です。
また書類用意も、上場2期前あたりからはじめます。申請に必要な書類を確認し、準備できるものは少しずつ収集・作成を行いましょう。
上場1期前
上場1期前は直前期ということで、上場に向けた最終準備の段階です。外部からの指導やチェックを受けながら、調整を繰り返していきます。上場1期前の主な作業について解説します。
■監査法人による調査
上場1期前も、監査法人による調査が必要です。上場前の2期分で監査法人による適正意見を受けなければならないため、上場2期前と同様に監査を受けます。
■上場に関する指導を受ける
上場に向けて、監査法人や証券会社などから受ける細かな指導が増えます。チェックされる内容は、以下のように非常に広い範囲です。
- 社内規定やルール
- 会計・労務などの管理体制
- 取締役会など運営主体
- ディスクロージャー(投資家や取引先のような外部関係者に事業内容などの情報を開示する行為)の体制整備
また上場申請に必要な書類についても、監査法人・証券会社のチェックおよび指導を受けます。
■最終チェック
上場に必要な体制が整備されているか、必要な作業を適切に実施できたかなどの最終チェックを行います。細かい部分までかなり厳密なチェックが必要です。外部のサポートを受けながら、社内全体で協力したうえで進めましょう。
上場する年度
すべての準備を終えたら、証券取引所に上場申請を行います。上場する年度の大きな流れは以下のとおりです。
- 証券取引所の上場審査を受ける:最初に上場理由や事業内容などさまざまな質問を受けるので回答します。以降も計3回ほどヒアリングが実施されます
- 必要書類の作成:上場審査と並行して、有価証券届出書・目論見書を作成します。
財務局のチェックを受け問題がなければ提出です
- 証券取引所から社長や監査役へのヒアリング:上場審査において複数回のヒアリングや現地調査が実施され、最後には社長や監査役など責任者にヒアリングが行われます
- 上場承認
上場審査には2〜3ヶ月ほどかかります。このように上場は、時間・労力ともにかなり大きな作業です。
まとめ
会社を上場させるためには、多くの難しい条件をクリアする必要があります。3期以上という長い期間が必要なうえ、さまざまな専門知識が求められます。
今回上場の仕方について大まかな流れを解説しましたが、上場を検討している場合、まずは専門家への相談がおすすめです。専門家のアドバイスやサポートを受けることで、効率的かつ確実な上場準備を進めやすくなります。
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