上場させるとどんないい事があるのか?上場させるメリットをデメリットと合わせて紹介。
「上場企業」と聞くとどんなイメージを思い浮かべますか?「大企業」「一流企業」というイメージを持つ方は多いのではないでしょうか。
確かに、日本の企業の中で東証に上場しているのはわずか0.1%にも満たず、ごく一部の選ばれた企業といえるでしょう。
では、「上場」とはなんなのか?というとあまりイメージが湧かない人も少なくないかもしれません。
本記事では、そんな企業の「上場」について、その意味や、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
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会社を上場させることの意味とは
上場とは、企業が発行した株式を市場で売買できるようにすることです。
企業を上場させるためには、証券取引所の設定した上場基準をクリアし、審査に通る必要があります。
上場することで、それまでは親族や知人など限られた範囲のみから出資を受けていた状況から、広く一般投資家からの資金調達が可能になります。上場による資金調達は、企業の成長を加速させる原動力となるでしょう。
一方で上場することは、私企業から「社会の公器」になることを意味しますので、情報公開や株主に対する責任、社会的な責任といった、経営環境の変化にも対応することが求められます。
会社を上場させるメリットとデメリット
上場には、具体的にどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
上場のメリット
まずは上場することのメリットです。主に次の5つがあげられます。
- 幅広く資金調達が可能になる
- 企業の知名度・信用度が向上する
- 優秀な人材が集まりやすくなる
- コーポレート・ガバナンスが向上する
- 創業メンバーや出資者へのキャピタルゲイン還元
それぞれ詳しく見ていきましょう。
幅広く資金調達が可能になる
上場の最大のメリットは、幅広い投資家から資金調達が可能になることです。
返済する必要のない株主資本を増強することで、事業の成長を大きく加速させられます。
上場前の出資者は、親族や事業に賛同する知人・投資家など特定の関係者に限られ、調達できる資金量は限定的です。
一方、上場して市場で株式が売買されることで、広く一般投資家や機関投資家などからの資金調達が可能になります。
企業や事業に魅力があれば、世界中の投資家から多くの資金を調達することも可能です。
会社の知名度・信用力が向上する
上場して、新聞やテレビ、インターネットなどメディアへの露出の機会が増えることで、必然的に企業の知名度がアップします。
また、上場のための厳しい審査をクリアしていることが企業の信用力の裏付けにもなります。
上場により企業の信用力が高まれば、金融機関からの融資が受けやすくなり、さらなる事業の拡大が可能です。
また、取引先や顧客との取引においても、上場企業の知名度や信用力は他社との競争で優位に働くでしょう。
このように、上場による知名度や信用力の向上はビジネスに好循環をもたらすことが期待できます。
優秀な人材が集まりやすくなる
上場企業の知名度や信用力の高さは、優秀な人材を惹きつける役割も果たします。
新卒採用市場や転職市場での求職者にとって、上場企業のステータスは魅力の一つです。優秀な人材が集まることで、企業の力をより高めることが可能になります。
また、所属している社員にとっても、上場企業で働いているという誇りはモチベーションにつながり、パフォーマンスの向上が期待されます。
コーポレート・ガバナンスが向上する
上場準備の過程で、取引所の審査に組織的に対応することで、コーポレートガバナンスの向上が期待されます。
コーポレートガバナンスとは、「企業統治」と訳され、企業不祥事を防ぐために経営を監視・統制する仕組みのことを言います。
上場に向けては、外部の監査法人などを交えて対策チームを組成して、財務体質や経営体制などを強化し、経営の透明性を高めることが必要です。その過程で、必然的にコーポレートガバナンスが強化されることになります。
創業メンバーや出資者へのキャピタルゲイン還元
上場により、創業者や出資者は、企業を上場まで成長させた見返りとしてキャピタルゲインを得られます。
また、上場前から所属する社員も、ストックオプションなどで金銭的なリターンを享受することが可能です。
このように、企業の上場は、関係者へキャピタルゲインを還元する役割も果たします。
上場のデメリット
上場には多くのメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 上場準備と維持にコストがかかる
- 経営の自由度が下がる
- 厳しいコンプライアンスを求められる
- 買収の脅威にさらされる
それぞれ解説します。
上場準備と維持にコストがかかる
企業を上場させる場合、事前の準備や上場維持に多くのコストがかかります。
上場前には、取引所や上場準備を支援する専門家に対して、次のような手数料や報酬の支払いが必要です。
- 上場審査料
- 新規上場料
- 登録免許税
- コンサルティング・弁護士・主幹事証券などへの報酬
- 公募・売出関係書類費用
など
金額は上場する市場や規模によって異なりますが、一般に5,000万円程度が目安といわれています。
また、上場後にも取引所に支払う手数料や、情報公開のための費用として、次のようなコストがかかります。
- 年間上場料
- TDnet利用料
- 監査法人への監査費用
- IR関連費用
など
これらは、非上場であれば不要なコストであるため、支払うだけのメリットがあるか見極めることが重要です。
経営の自由度が下がる
上場すると、多様な投資家が株主になることで経営の自由度は低下します。
上場企業は、株主にとって魅力的な企業でなくてはなりません。配当や自社株買いなどの株主還元、株主総会対応など、株主に配慮した経営が求められます。
非上場のときには、親族や事業に賛同する出資者だけを見て経営すればよかったものが、上場することで多様なステークホルダーへの配慮が求められ、自由な経営の足枷になることも考えられるでしょう。
厳しいコンプライアンスを求められる
上場によって知名度が高まることでビジネス面のメリットがある一方、社会的な責任が増すというデメリットもあります。
近年では、違法行為でなくても、不祥事やコンプライアンス違反を犯すと、SNSでの炎上やブラック企業の烙印を押されるなど、社会的制裁を受ける事例が増えています。
また、近年では、ESGやSDGsといった社会的な責任に配慮した経営も必要です。
買収の脅威にさらされる
市場で株式を売買できるということは、誰でも一定の株式を取得すれば経営権を握れることを意味します。
株主にとって魅力のある経営をして株価を高める努力をしないと、市場での買い増しやTOBによって会社を乗っ取られる可能性もあるということです。
上場企業には、常に緊張感を持った経営が求められます。
株式市場と上場基準
日本には、「東京証券取引所(東証)」「名古屋証券取引所(名証)」「札幌証券取引所(札証)」「福岡証券取引所(福証)」の4つの取引所があります。
最大の取引所は東証で、2022年4月に市場再編されました。
慣れ親しんだ東証1部や2部、マザーズ、JASDAQといった市場はなくなり、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3部編成となっています。簡単に表すと、プライムが大企業、スタンダードが中堅企業、グロースが新興企業といったイメージです。
市場再編時点ではプライム1,839社、スタンダード1,466社、グロース466社でした。
上場基準はプライムが最も厳しく、グロースが最も緩くなっています。新規上場する場合はグロースまたはスタンダードに上場し、成長とともに上位の市場に移行するのが一般的です。
以下に、新興企業向けのグロース市場の上場基準の一部を紹介します。
形式要件
|
株主数 |
150人以上 |
流通株式数 |
1,000単位以上 |
|
流通株式時価総額 |
5億円以上 |
|
流通株式比率 |
25%以上 |
|
実質審査基準
|
業内容、リスク情報等の開示の適切性 |
企業内容、リスク情報等の開示を適切に行うことができる状況にあること。 |
企業経営の健全性 |
事業を公正かつ忠実に遂行していること |
|
企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性 |
コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が、企業の規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること。 |
|
事業計画の合理性 |
相応に合理的な事業計画を策定しており、当該事業計画を遂行するために必要な事業基盤を整備していること又は整備する合理的な見込みのあること。 |
参考:日本取引所グループ「上場審査基準」https://www.jpx.co.jp/equities/listing/criteria/listing/02.html
上場しないという選択 - 非上場の有名企業
誰もが知っている大企業の中にも非上場を貫く企業があります。
すでに知名度や信用力が十分にあり、まとまった資金調達の必要性がなければ、非上場のまま自由度の高い経営を続けるという選択肢もあるということです。
代表的な非上場の大企業には次のような企業があります。
まとめ
本記事では、企業が上場することの意味や、上場のメリット・デメリットを解説しました。
上場することで幅広い資金調達が可能になることに加え、知名度や信用力を高めてビジネスを大きく成長させることが期待できます。
一方で、上場には多くのコストが必要なうえ、経営の自由度低下や買収の脅威などに注意が必要です。
上場を目指す場合には、メリットとデメリットを良く理解し慎重に判断しましょう。
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