個人事業主におすすめの節税・税金対策とは?知っておくべき方法と注意点
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個人事業主が手取りを増やすためには、節税に取り組むのが重要です。国が認めた方法を活用して適切な節税をすることで、納付する税金が少なくてすみます。本記事では、個人事業主の節税について、基本的な考え方、具体的な方法、注意点まで詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.個人事業主の節税の基本を理解する
- 1.1.所得税および復興特別所得税
- 1.2.住民税
- 1.3.個人事業税
- 1.4.消費税
- 1.5.個人事業主の税金の計算方法
- 2.個人事業主の節税に活用できる方法
- 2.1.経費を最大限に活用して節税する
- 2.2.青色申告で節税できる
- 2.3.国が認めた節税方法を活用する
- 2.4.個人事業主の法人化のメリットと節税
- 3.インボイス制度下で消費税を節税できる方法
- 3.1.顧客の大半が一般消費者の場合
- 3.2.顧客の大半が簡易課税事業者の場合
- 3.3.他で代替がきかない場合
- 3.4.「2割特例」の適用を受けられる場合(2026年まで)
- 4.個人事業主の節税の注意点は?
- 4.1.帳簿付けと領収書などを適切に取り扱う
- 4.2.適法な節税でリスクを回避する
- 4.3.税法や制度の変更をチェックしてもれなく節税する
- 5.まとめ
個人事業主の節税の基本を理解する
個人事業主が節税するためにまず大切なことは、自分が納める税金の種類と計算方法を正しく理解することです。所得税・復興特別所得税、住民税、個人事業税、消費税について、それぞれの税率や計算方法を確認し、自分の事業にどのような税金が課されるのかを把握できるようになる必要があります。
所得税および復興特別所得税
所得税は個人の収入に対して課される国税です。所得税の税率は所得の金額に応じて変わり、5%~45%の7段階の累進税率が適用されます。また復興特別所得税は、2013年から2037年まで所得税額に対して2.1%が上乗せされます。
住民税
住民税は、都道府県民税と市町村民税から構成される地方税で、所得割と均等割に分かれています。所得割の税率は都道府県民税が4%、市町村民税が6%で、合計10%の税率が適用されます。均等割は所得金額にかかわらず、一律で割り当てられる税額のことです。
個人事業税
個人事業税は、事業所得に対して都道府県が課す地方税の一つです。課税対象となる事業は法律で定められており、ほとんどの事業があてはまります。一部、対象外となる事業がありますので、居住地域の都道府県のホームページで確認してください。
消費税
しかし、2023年10月から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が施行されました。この記事では詳細には立ち入りませんが、このインボイス制度によって、売上高1,000万円以下の多くの事業者が、事実上、インボイス登録をして、課税事業者になければならなくなりました。そして、インボイス制度に登録して課税事業者になった場合は、消費税の納税義務があります。
インボイス制度については詳しくは「インボイス制度とは?免税事業者が対応すべきことをわかりやすく解説」をご覧ください。
個人事業主の税金の計算方法
個人事業主の税金のうち、所得税は、以下の計算式で算出します。
【計算式①所得金額の計算】
【計算式②所得税額の計算】
所得控除については●後述●します。
税率は以下の所得税の速算表から該当の税率を選びます。
課税される所得金額(1,000円未満切り捨て) |
税率 |
控除額 |
1,000円~194万9,000円 |
5% |
0円 |
195万円~329万9,000円 |
10% |
9万7,500円 |
330万円~694万9,000円 |
20% |
42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 |
23% |
63万6,000円 |
900万円~1,799万9,000円 |
33% |
153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 |
40% |
279万6,000円 |
4,000万円~ |
45% |
479万6,000円 |
住民税と個人事業税についても、上の計算式で求めた所得金額をベースに、それぞれの税率を適用して計算します。
個人事業主の節税に活用できる方法
個人事業主の節税について、国が認めていて、かつ効果的な節税方法を具体的に解説します。
経費を最大限に活用して節税する
経費を正しく計上することは節税の基本です。個人事業主が経費にできるものにはさまざまな種類があります。経費を理解して、正しく計上することが大切です。
個人事業主が経費にできるものは?
個人事業主が経費として計上できるものは、事業を行う上で必要な費用です。以下が主なものです。
経費の種類 |
経費に算入できるものの例 |
旅費交通費 |
電車賃、航空券代、タクシー代、 |
新聞図書費 |
専門書、業界紙、経済誌、 |
消耗品費 |
文房具、コピー用紙、プリンターインク、 |
通信費 |
携帯電話の基本料金と通話料、 |
交通費 |
電車賃、バス代、タクシー代、ガソリン代、 |
接待交際費 |
取引先との食事代、お茶代、手土産代、 |
広告宣伝費 |
チラシ・パンフレット制作費、看板製作費、 |
地代家賃 |
事務所の賃借料、倉庫の賃借料、 |
外注費 |
業務委託費、フリーランスへの報酬、 |
これらの経費を計上するためには、事業に関連していることを証明する必要があります。
家賃や光熱費を経費に計上する方法
自宅で仕事をしている場合、自宅の家賃や光熱費を経費として計上することができます。ただし、仕事に使用している割合に限られます。これを「家事按分」といいます。
家事按分をする時には、説明できる基準を設定して計算する必要があります。例えば自宅を事務所としている場合、自宅の総面積に対する事務所部分の面積割合を算出し、その割合に基づいて家賃や光熱費を計算するなどです。
30万円未満の固定資産は経費に一括計上できる
1個30万円未満のものであれば、合計300万円までをその年の経費として計上することができます。これを「少額減価償却資産の特例」といいます。後述する青色申告をすれば使える制度です。
対象となる資産には、パソコン等の有形固定資産だけでなく、ソフトウェアのような無形固定資産も含まれます。一括で経費にできることで大きな節税効果を得られます。
ただし、これは、あくまでも必要な資産を購入する場合に限られます。わざわざ不要なものを購入するのは節税ではなく単なる無駄遣いです。
前払いした代金を前倒しで経費に計上する
事業をしていると向こう1年分の費用を前払いする機会がよくあります。たとえば、年払いにすることで割引を受けられるような場合です。
この場合、会計の原則からすれば、本来は年度をまたいで費用を計上します。しかし、これでは面倒です。
そこで、前払いした費用は、年度をまたぐことなく、全額をその年度に計上することが認められています。たとえば、会計ソフトの使用料を1年分支払った場合、支払った年度に全額を経費として計上します。この制度を活用すれば、支払った年度の経費が増えるので、節税につなげることが可能です。
経費にできる税金は?
個人事業主が事業に関連して支払う税金の中には経費にできるものがあります。以下の通りです。
- 個人事業税
- 事業用不動産の固定資産税
- 事業用車両の自動車税
- 印紙税
これらの税金は「租税公課」という勘定科目で経費計上します。
青色申告で節税できる
個人事業主が節税するなら青色申告は必須です。青色申告を活用すれば節税につながる仕組みがいろいろとあります。
青色申告をする場合はあらかじめ税務署に青色申告承認申請書を提出し、承認をうけます。さらに、お金の流れを複式簿記で記帳しなくてはなりません。最終的にその記帳に基づいて申告します。帳簿や書類の保存もしておくことが大切です。
以下、青色申告のメリットを解説します。
青色申告特別控除を受ける
個人事業主が青色申告を行う一番のメリットは、青色申告特別控除を受けられることです。控除額は最大65万円であり、節税に大きな効果があります。
最大の控除を受けたい場合は、e-Taxを使って申告をする必要があります。
家族への給与支払いも経費に
青色申告者は、一定の条件をみたせば、家族を従業員(青色事業専従者)として支払う給与を経費にできます。その条件は以下の通りです。
- 「青色事業専従者」に支払われた給与であること。
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出していること。
- 届出書に記載されている方法により支払われ、かつ、その記載されている金額の範囲内で支払われたものであること。
- 青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること。
タックスアンサーNo.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」|国税庁
これらの条件を満たせば、家族に支払った給与は青色事業専従者給与として、全額経費として計上できます。これにより高い節税効果を期待できます。
国が認めた節税方法を活用する
個人事業主が節税に活用できる国の制度はたくさんあります。これらの制度を知らないと節税の恩恵を受けられません。節税に関わる国の制度のなかで重要なものに絞って解説します。
基本の所得控除は要チェック
個人事業主は確定申告の際、所得控除を受けることができます。所得控除は所得金額から一定の金額を控除することで、税負担を軽減する制度です。さまざまな控除がありますが、基本の所得控除は以下のとおりです。
所得控除の種類 |
内容 |
基礎控除 |
年間所得に関わらず、一定額(48万円)を控除。 |
配偶者控除 |
一定の条件を満たす配偶者がいる場合、 |
配偶者特別控除 |
一定の条件を満たす配偶者がいる場合、最大48万円を控除。 |
扶養控除 |
一定の条件を満たす扶養親族がいる場合、 |
社会保険料控除 |
年間に支払った社会保険料の全額を控除。 |
生命保険料控除 |
一定の条件を満たす生命保険料について、最大12万円を控除。 |
地震保険料控除 |
一定の条件を満たす地震保険料について、最大5万円を控除。 |
医療費控除 |
年間の医療費が一定額を超える場合、超えた部分の金額を控除。 |
上記以外の所得控除も含めて、それぞれに一定の条件があるので、各控除の要件を満たしているかを確認してください。
iDeCoで年金を積み立てながら節税する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、税制優遇措置がある私的年金制度で、個人事業主の老後資金対策にもなります。iDeCoは毎月の積立金が全額所得控除の対象になるのが大きな特徴です。個人事業主は国民年金の第1号被保険者になるので、最高額の年額81.6万円が積み立てられます。
また、iDeCoを利用した投資の毎年の運用益は非課税です。
積み立てられた結果としての運用益は、年金として受け取る時に所得税が課税されることになります。しかし、公的年金等控除により、税負担が軽減されます。
このように、iDeCoを活用すると長年にわたって節税の効果を得られます。ただし、原則として60歳まで引き出せないので、余剰資金で積み立てを行う必要があります。
加入条件等については「iDeCo公式サイト」を確認してください。
小規模企業共済に加入する
小規模企業共済は、個人事業主が事業の廃止や退職に備えて、生活の安定を図るための共済制度です。小規模企業共済に加入し、掛金を支払うことで、事業を廃止する際や退職する際に「共済金」を受け取ることができます。多くの場合、共済金の額は払い込んだ掛金総額よりも大きくなります。
小規模企業共済が節税になるのは、掛金が全額所得控除になるからです。それにより所得税と住民税の負担を減らせます。個人事業主にとっては節税と老後や事業のリスクへの備えの2つの面からメリットがあるのでおすすめです。
経営セーフティ共済に加入する
個人事業主として事業を行っていると思わぬことで事業の存続が危うくなる時があります。その一つが、取引先の倒産により売掛金が回収できなくなることです。
このような状況に備えることができるのが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)です。取引先が倒産した場合に、払い込んだ掛金総額の10倍まで借入を受けることができます。掛金は全額を事業の経費として計上できるので、節税にもつながります。
ふるさと納税を活用する
個人事業主もふるさと納税を活用すれば節税の効果があります。
ふるさと納税は寄付金のうち2000円を超える部分において、所得税の還付と住民税から控除される仕組みです。ただし、控除の上限額が収入や家族構成によって異なります。詳しくは総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」で確認してください。
個人事業主の法人化のメリットと節税
個人事業主として事業が成長し、ある程度の金額を超える収入を得られるようになったら、法人化によって節税できることがあります。個人事業主と法人の節税効果を比べると以下の通りです。
個人事業主 |
法人 |
|
税率 |
所得税率は最高45% |
法人税率は15%〜23.2% |
役員報酬 |
― |
一定の条件の下で損金算入が 認められる |
社会保険料 |
国民健康保険や国民年金の 保険料を全額自己負担 |
会社負担分が損金算入される |
交際費 |
事業に関わるもののみ 経費として認められる |
一定の限度額まで損金算入が 認められる |
ただし、法人を設立するにあたっては費用がかかります。またこの先の事業をどのように展開していくかも改めて考える必要があります。節税の面だけでなく、さまざまな点を考慮して、それでも節税のメリットが大きければ法人化を検討するようにしてください。
インボイス制度下で消費税を節税できる方法
2023年10月から施行されたインボイス制度により、通常であれば免税事業者であった課税売上高1,000万円以下の事業者も、インボイス登録をすると課税事業者になり消費税を支払わなければなりません。
しかし、すべての個人事業主がインボイスの登録が必要なわけではなく、条件によっては免税事業者のままでいても支障が少ないケースがあります。それは以下のとおりです。
顧客の大半が一般消費者の場合
顧客の大半が一般消費者の場合、顧客からインボイスの交付を求められる可能性が低いため、登録の必要性が低くなります。
顧客の大半が簡易課税事業者の場合
顧客が簡易課税事業者の場合、インボイスの交付を求められないため、登録の必要性が低くなります。
他で代替がきかない場合
自分の商品やサービスが他で代替がきかない場合、顧客はインボイス登録の有無にかかわらず取引を継続せざるを得ないため、登録の必要性が低くなります。
「2割特例」の適用を受けられる場合(2026年まで)
また、インボイス登録が必要であっても、条件を満たしていれば支払う消費税を減らすことができる「2割特例」という制度があります。この制度を利用することで消費税を節税できます。
2割特例は、インボイス制度を機に課税事業者になった事業者の2026年まで、納付する消費税が、2割相当で済む制度です。確定申告の際に2割特例の欄にチェックを入れるだけなので、簡単に節税できます。
個人事業主の節税の注意点は?
個人事業主の節税にはさまざまな方法がありますが、条件や必要な書類、申告方法など注意すべき点があります。以下、説明します。
帳簿付けと領収書などを適切に取り扱う
節税の基本は、日々の帳簿付けと請求書や領収書などの書類の取り扱いです。それぞれにルールがありますので、それを踏まえて行います。
まず大切なのは、帳簿の記帳です。節税のために青色申告をするなら複式簿記が必須で、取引内容や日々のお金の流れを正確に記帳しなければなりません。
領収書は経費の支出を証明するための重要な書類です。クレジットカードの利用明細書なども活用できます。さらにインボイスに登録しているなら、その形式に沿った領収書かを確認することも重要です。
領収書は確定申告を終えた後も保存しなくてはなりません。個人事業主は白色・青色申告共に保管期間は5年です。ただし、青色申告で前々年度の所得が300万円以上の場合は保管期間7年となります。
適法な節税でリスクを回避する
節税方法と言われるものの中には、脱税まがいのものもあります。必ず法律で定められた範囲で節税に取り組んでください。特に以下の点を徹底して取り組むことが大切です。
- 事業に関連しない経費を計上しない
- 帳簿の記録と領収書の内容に間違いがないか確認する
- 収入や経費を過少または過大に申告しない
基本的なことですが、間違いのない対応をしていれば、正しい節税ができるので税務調査で申告漏れ等の指摘を受けたり、否認されたりするリスクも回避できます。
税法や制度の変更をチェックしてもれなく節税する
個人事業主の事業に関わる税法や制度は頻繁に改正されます。また年度が替わる際には、大きな変更が行われる場合もあります。したがって、定期的に税法や制度の変更をチェックしてください。
また、事業内容を変更する時や、事業規模が変わる時、あるいは自分のライフイベントがある時にも確認すべきです。補助金や税制の優遇措置、控除の金額が変わるなど、知らなければ節税できないこともあります。
税法や制度の変更をチェックするのにおすすめなのは以下のサイトです。
税法や制度の変更を見落とさないよう、定期的に情報収集を行うことで、効率よく節税に取り組むことができます。
まとめ
個人事業主が取り組める節税方法はたくさんあります。国が認めている効果的な節税方法を選んで実行すれば、リスクなく手取りを増やすことができます。
まずは自分が納付している税金を理解することで、それに対応した節税方法がわかります。経費をもれなく計上し、個人事業主が使える制度も最大限活用してください。どうしても自分で取り組むのが難しければ、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
節税は個人事業主が事業を成長させるうえで欠かせない取り組みです。そのために正しい知識と節税方法を知って、さらなる事業の成長を目指しましょう。