法人税の中間納付とは?申告と納付方法の選び方や計算・仕訳を解説
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法人税の中間納付とは、事業年度の開始日から6ヵ月経過した日を基準として、税金の半分を前払いする制度です。中間納付の知識がないと、納付期限が過ぎて延滞税が発生するなど、想定外の税負担が発生する可能性があり注意が必要です。
当記事では、申告・納付方法や計算・仕訳方法など、中間納付に関する内容を網羅しました。中間納付をするうえでの注意点も確認して、ぜひお役立てください。
目次[非表示]
- 1.法人税の中間納付とは?
- 1.1.半年分の法人税を前払いする制度
- 1.2.中間納付は年2回
- 1.3.中間納付で法人は資金繰りの負担が軽減
- 2.法人税の中間申告が義務となるのはいくらから?
- 3.法人税の中間申告方法は2種類
- 3.1.前年度実績を基準とする予定申告
- 3.2.中間決算を基準とする仮決算
- 4.中間納付の計算方法
- 5.法人税中間納付の仕訳方法と勘定科目
- 6.法人税の中間納付における注意点6つ
- 6.1.中間申告書を出さないと提出したものとみなされる
- 6.2.納付期限を過ぎると延滞税が加算される
- 6.3.申告金額が少なかった場合は加算税が課される
- 6.4.法人税が赤字の場合も申告が必要となる
- 6.5.合併した場合は初年度の分も中間申告が必要となる
- 6.6.確定申告のときには前払いした法人税を精算する必要がある
- 7.法人税中間納付のQ&A
- 7.1.法人税中間申告の方法は?
- 7.2.法人税中間納付の支払方法は?
- 7.3.国税局から納付書はいつ届く?納付期間は?
- 7.4.法人税の中間納付は還付される?
- 8.まとめ
法人税の中間納付とは?
法人税の中間納付とは事業年度開始日以降、6ヵ月を経過した日を基準として、税金の半年分を前払いする制度です。中間納付は一事業年度中に2回の「申告・納税」が必要になり手間がかかりますが、納税側(企業)と国や自治体の双方にメリットが生じます。
中間納付の期限は「事業年度開始日以降、6ヵ月を経過した日」から2ヵ月以内と定められており、納付期限を過ぎた場合は延滞の長さに応じて追徴課税が発生します。
なお、法人税と混同されやすい消費税との違いは、以下のとおりです。
税の種類 |
法人税 |
消費税・地方消費税 |
---|---|---|
対象 |
法人の所得 |
商品の販売やサービスの提供 |
概要 |
決算期後に確定申告 |
納税するのは製造業やサービス業などの事業者だが、負担するのは消費者 |
半年分の法人税を前払いする制度
中間納付とは事業年度開始日以降、6ヵ月を経過した日を基準として、予測される「納税額の半分」を前払いする制度です。
- 中間納付の期限は2ヵ月以内
- 期限を過ぎた場合は延滞税が発生
- 中間納付の過払いは確定申告で還付
- 法人納税額の負担額は最終的に変わらない
ただし、なかには中間納付が不要な企業もあります。
中間納付は年2回
中間納付のタイミングは2回あり、中間と年度末です。申告と納税は納税額が未確定の状態でおこないますが、過払い分は還付されます。
中間納付で法人は資金繰りの負担が軽減
中間納付で半年分を前払いをすれば、法人や国・自治体双方にメリットが生じます。
法人側のメリット |
国や自治体のメリット |
---|---|
|
|
中間納付しても最終的な納税金額の合計は変わりませんが、高額な法人税を分散できるため経営への圧迫が軽減できるでしょう。過払い分は還付されるので損もしません。
法人税の中間申告が義務となるのはいくらから?
法人税の中間申告が義務となる対象は、前事業年度の確定法人税額が20万円を超えた企業です。
前期における法人税の総額 |
中間申告 |
---|---|
20万円超 |
必要 |
20万円以下 |
不要 |
以下いずれかの条件に当てはまるケースは、法人税の中間納付対象にはなりません。
- 今事業年度に創業した会社
- 前事業年度、法人税額が20万円以下
- 非営利型の一般社団法人
中間申告は前期の法人税額が20万円を超えた企業が該当します。
法人税の中間申告方法は2種類
法人税中間申告には納付書と申告書類が必要な「予定申告」と、確定申告と同等の書類が必要な「仮決算」があります。基本は予定申告であり、前事業年度に比べ大幅な減益となっている場合は、仮決算で納税負担を減らす方法も有効です。
最終的にどちらを選ぶかは、企業の選択に委ねられます。
前年度実績を基準とする予定申告
予定申告は前年度実績を基準とする方法であり、以下の流れで申告します。
- 納付書と申告書類が送付される
- 書類に必要事項を記入する
- 所轄の税務署に提出する
中間納付の時期になると、所轄の税務署から納付書と申告書類が送られてきます。予定申告では書類に必要事項を記入し、所轄の税務署に提出して完了です。
中間決算を基準とする仮決算
事業年度開始から6ヵ月の時点でおこなった中間決算を基準とする仮決算は、算出された課税所得をもとに中間納付額が決まります。確定申告と同等の処理で手間と時間がかかりますが、上半期の業績を反映した中間納付額となるため、法人側の税負担が軽くなります。
なお、以下に該当するケースは仮決算による中間納付はできません。
- 仮決算による中間納付額>前年度実績に基づいた中間納付額
- 前年度実績に基づく中間納付額が10万円以下
税理士と顧問契約をして仮決算を依頼する場合、中間決算報酬が必要になることもあります。仮決算を選ぶ場合は、申告まで余裕を持たせましょう。
中間納付の計算方法
法人税の中間納付には予定申告と仮決算があり、計算方法や注意点が異なります。違いから、申告方法を検討する材料にしてもよいでしょう。
予定申告
予定申告の計算方法 |
[前事業年度の確定法人税額]÷[前事業年度の月数]×6=中間税額 |
---|
国税庁のホームページによると、以下の記載があります。
法人税法第71条第1項第1号では「当該事業年度の前事業年度の法人税額(・・・)で六月経過日の前日までに確定したものを当該前事業年度の月数で除し、これに当該事業年度開始の日から当該前日までの期間(・・・)の月数を乗じて計算した金額」と規定されていることから、まず前事業年度の法人税額で6月経過日の前日までに確定したもの(以下「前事業年度の確定法人税額」といいます。)を前事業年度の月数で除して(円未満の端数切捨て)、その整数値に当該事業年度開始の日から当該前日までの期間の月数(本事例では6月とします。)を乗ずる方法。
以下を例に計算してみてください。
仮決算
仮決算の計算方法 |
|
---|
仮決算では事業年度開始から6ヵ月の時点で中間決算をおこない、算出された課税所得をもとに中間納付額が決まります。今事業年度が大幅に減益となった場合、前事業年度・法人税額を基準とした中間納付は、負担が増えることが予想されるでしょう。
法人税中間納付の仕訳方法と勘定科目
法人税中間納付の仕訳を、例を用いて解説します。
中間納付額300,000円を普通預金から支払ったとすると、仕訳は以下になります。
中間納付時
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
仮払法人税等 |
300,000円 |
普通預金 |
300,000円 |
中間納付で支払った法人税は「仮払法人税等」として借方に計上します。決算時には法人税等1,000,000円、仮払法人税等300,000円、未払法人税等700,000円と仮定します。
決算時
借方 |
貸方 |
||
---|---|---|---|
法人税等 |
1,000,000円 |
仮払法人税等 |
300,000円 |
決算で法人税額が確定した際は、借方に「法人税等」を計上します。一方で、貸方には中間納付した「仮払法人税等」を取り崩し、未払い分を「未払法人税等」として計上します。
なお、還付がある場合は「未払法人税等」の形上は必要なく、還付される金額を「未収金」として借方に計上しましょう。
法人税の中間納付における注意点6つ
法人税中間納付では以下6点に注意が必要です。さらに税金が発生する可能性もあるため、把握しておきましょう。
中間申告書を出さないと提出したものとみなされる
中間申告をしなかった場合「みなし申告」として、提出したものとみなされます。みなし申告は中間申告書を出さなくても予定申告によって自動的に判断される仕組みです。
業績が悪化しているときは想定外の税負担を考慮し、みなし申告になっていないかの確認をしましょう。
納付期限を過ぎると延滞税が加算される
納付期限を過ぎると、延滞税※が発生します。納付期限は事業年度開始日から6ヵ月が経過した日+2ヵ月が経過した日です。
※延滞税とは
税金が定められた期限までに納付されない場合には、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課される税金のことをいいます。
延滞税は超過日数が経つにつれ、課せられるペナルティが増えます。繁忙期と重なったり予想外のハプニングが起きたりすると、2ヵ月の期限が過ぎてしまうこともあるでしょう。申告を忘れた場合は自動的に「みなし申告」となりますが、納付忘れは延滞税が発生するため、気をつけましょう。
申告金額が少なかった場合は加算税が課される
法人税は申告金額が少なかった場合、加算税が課されるので注意が必要です。財務省によると、加算税は以下と明記されています。
申告納税制度の定着と発展を図るため、申告義務が適正に履行されない場合に課されるもので、一種の行政制裁的な性格を有する。
加算税は延滞税と混同されやすい傾向にあります。附帯税の一種である点は共通していますが、加算税は不備の事実に対するペナルティであり、比例して増えることはありません。
法人税が赤字の場合も申告が必要となる
想定外の納税リスクに備え、法人税は赤字の場合にも申告が必要です。申告をしなかった場合、自動的に前事業年度に応じた額の半額を納税すると定められており、業績が悪化していても求められます。
赤字が出ている場合は、中間納付の金額を捻出できない状況に陥っている可能性もあります。仮決算で赤字となると中間納税額は0円となるため、申告は必ずおこないましょう。
合併した場合は初年度の分も中間申告が必要となる
原則的に、初年度の中間申告は不要です。しかし、会社を合併した場合は初年度の分も中間申告が必要となります。
国税庁のホームページによると、以下と明記されています。
新たに設立された法人については、設立1期目および2期目の基準期間はありませんので、設立1期目および2期目は原則として納税義務が免除されます。
引用:国税庁のホームページ|No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例 概要2行目より
中間報告以外に法人合併した際は、以下の変更点があります。
- 中間納付額が変更する可能性がある
- 適格合併が年度開始日から6ヵ月以内の場合、納税額が変わる
法人の吸収合併に関する計算方法は複雑なため、難しいケースは専門家に相談して指示を仰ぎましょう。
確定申告のときには前払いした法人税を精算する必要がある
中間納付した際は、年度末決算の確定申告で精算処理が必要です。確定申告することで以下のメリットが生じます。
- 中間納付額の調整がおこなわれる
- 確定申告の際に納付税額が控除される
- 控除しきれない場合は還付される
法人は確定申告時に税金の還付を受けられる可能性があります。中間納付は前事業年度・法人税額を基準に算出されるため、今事業年度の課税対象となる所得が前年度より減少した場合、中間納付で支払いすぎた法人税が戻ってきます。
中間納付で前払いした法人税分の精算処理は、確定申告の際に忘れずにおこないましょう。
法人税中間納付のQ&A
中間納付に関する、よくある質問をまとめました。疑問点を解消し、中間納付の理解を深めてください。
法人税中間申告の方法は?
中間申告には紙で申告する方法と電子申告(e-Tax)があります。e-Taxは申告のほか、通知もインターネット上で受信でき「お知らせ内容」の項目から予定(中間)申告書の作成も可能です。
電子申告を利用した場合、翌事業年度以降は紙の書類が送付されずe-Tax上で案内が来るため、見落とさないよう注意しましょう。
法人税中間納付の支払方法は?
法人税中間納付の支払方法には「キャッシュレス納付」「キャッシュレス納付以外の方法」があります。
<キャッシュレス納付>
支払い方法 |
特徴 |
---|---|
振替納付 |
納税者(自身名義)の預貯金口座からの口座引落し |
ダイレクト納付 |
e-Taxにより申告書等を提出したのち、 |
インターネットバンキング等納付 |
インターネットバンキングやATM等による電子納付 |
クレジットカード納付 |
インターネット上でのクレジットカード支払い |
スマートフォンアプリ納付 |
スマートフォン決済専用のWebサイトから、納税者が利用可能なPay払いを選択 |
<キャッシュレス納付以外>
支払い方法 |
特徴 |
---|---|
コンビニ納付 |
自宅のパソコン等で作成したQRコードを使用してコンビニで支払う |
コンビニ納付(バーコード) |
税務署から送付又は交付されたコンビニ納付専用のバーコード付納付書を使用してコンビニで支払う |
窓口納付 |
金融機関又は所轄の税務署の窓口で現金に納付書を添えて支払う |
参考:国税庁ホームページ|G-2 国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)
キャッシュレス納付は事前に手続きが必要な場合もあります。ダイレクト納付の場合、事前にe-Taxの利用開始手続きをおこなったあとに、税務署又は利用する金融機関に専用の届出書を書面で提出します。ただし、個人の場合は専用の届出書をオンラインで提出することも可能です。
事前準備はそれぞれの支払い方法別に国税庁のホームページで詳細が確認できます。
国税局から納付書はいつ届く?納付期間は?
国税局からの納付書は納付月に所轄の税務署から届き、納付期限は原則、事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内です。
たとえば、事業年度の開始日が4月1日の場合、法人申告期限は11月30日であり、11月に入ると税務署から申告書と納付用紙が送られてきます。会計年度が4月1日〜翌3月31日までとした場合、納付期限は5月31日までです。
法人税の中間納付は還付される?
法人税を中間納付で払い過ぎた場合は還付されます。中間納付は事業年度の法人税額を基準に算出した「前払い」のため、最終的に確定申告をおこない、確定した法人税が中間納付額より少ない場合は戻ってくるでしょう。
まとめ
中間納付は一部の法人を除き、毎年同じ時期におこないます。予告申告は所轄の税務署から送付される書類に従えばあまり手間はかかりませんが、仮決算は決算と同様の手間が予想されるでしょう。
中間納付は決算時の仕訳にも影響します。バックオフィス業務を効率化したいときにおすすめなのが、オンラインアシスタント・秘書サービスの「SUPPORT+iA(サポーティア)」です。
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