ROSとはどんな経営指標?ROSの特徴と活用方法・他の類似した指標との違いを解説します
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企業の営業活動を分析する際に様々な経営指標があります。
企業の経営状況を客観的な数字で分析するために必要なツールで、経営判断や投資判断において活用されています。しかし、言葉は知っていてもきちんと理解していない、どのように活用したらよいかわからないという経理担当者や経営者の方も少なくないと思います。
今回は数ある経済指標の1つ、ROSについて解説します。
ROSとはどんな経済指標なのか、その特徴と活用方法、ROSに類似した他の経済指標についても解説するので、企業の業績分析の参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.そもそも、ROSとは?
- 1.1.ROSの増減に影響を与える要因
- 1.2.経常利益は本業以外の利益も含んでいる
- 1.3.ROAの改善方法(ROAの分解)
- 2.ROSの活用方法
- 2.1.同業他社との比較
- 3.ROSを利用するメリット
- 3.1.会社の経営状況を大まかに把握できる
- 3.2.計算が簡単で導入しやすい
- 4.類似した指標とROSとの違い
- 5.まとめ
そもそも、ROSとは?
ROSとは「Rate of Sales」の略称で、日本語にすると「売上高経常利益率」の意味です。
売上高に対する経常利益の割合のことで、以下の計算式で算出されます。
ROS(%)=経常利益÷売上高×100 |
その期の売上高に対する経常利益の割合を%で表したものがROSということになります。この数値が大きいほど企業は安定して利益を得ていると見ることができます。
ROSの特徴について、以下に紹介をします。
ROSの増減に影響を与える要因
ROSの増減に影響を与える要因は、売上高と経常利益です。
売上高に対する経常利益の割合であるため、経常利益が増加するとROSも増加します。
売上高が増えて経常利益が変わらなかった場合は、ROSは減少することになります。
一般的には、売上が増えると利益も増えるため、売上の増加を起因としたROSの減少は起こりづらいと考えるのが自然です。
しかし、実際には売上が伸びるもののROSが下がるケースは少なからずあります。
経常利益は本業以外の利益も含んでいる
経常利益とは事業全体の利益のことで、本業で得た利益に株の売買や事業売却など本業以外で得た利益を合わせたものです。
売上は、本業で獲得した収入であるため、一般的には売上が伸びると本業で獲得する利益も伸びます。
しかし、本業以外の営業活動で損失があれば、ROSは減少してしまいます。
ROSの数値を見ることで、本業及びそれ以外を含むすべての営業活動を加味した企業の収支状況を推し量れます。
分子の利益については、以下いずれかの利益を用いるのが一般的といえます。
・営業利益=売上高-売上原価-販管費
・事業利益=営業利益+金融収益(受取利息+受取配当金+有価証券利息)
・利払前・税引前利益(EBIT)=税引前当期純利益+支払利息-受取利息
・経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
・当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失-法人税等
また、分母の総資産は会計期間に対応する期首と期末の平均残高を用いるのが理想的です。
ROAの改善方法(ROAの分解)
ROAを改善するためには、ROAを分解して構成要素を把握する必要があります。具体的には、ROAは次の2つに分解することが可能です。
・売上高利益率(利益/売上高)
・資本回転率(売上高/総資本)
つまり企業が収益性(ROA)を向上する際には、大きく分けて売上高を増やして費用を減らすこと、そして売上獲得のために資産を有効利用するといった2つのアプローチがあります。
なお、売上高利益率と資本回転率は次のような種類があるため、具体的にどの要素が問題となっているか確認すると良いでしょう。資本回転率の分母(資本・資産)は、会計期間における平均残高を使用するのが理想的です。
ROSの活用方法
ROSの計算方法と特徴を紹介しましたが、実際の企業分析にはどのように用いればいいのでしょうか。
ROSの一般的な活用方法について、以下に2例を紹介します。
・過去の実績との比較
・同業他社との比較
ROSに限らず、経営指標は何らかの比較対象があってこそ役に立ちます。
どの要素を比較対象にするかによって、見えてくる情報は異なります。
過去の業績との比較
ROSは、過去の業績との比較において活用することができます。
例えば、昨年度のROSと今年度のROSを比較して、増加したのか減少したのか、あるいは横ばいだったのかをチェックします。
ROSが増加していれば、企業の業績が上向いていると判断できます。
逆にROSが減少していれば、企業の業績が下降気味であると判断します。
また、昨年度と今年度の比較にとどまらず、数年間のROSの推移をまとめるのも有効です。
毎年継続して増加している段階では不安はありませんが、逆に継続して減少している場合は経営方針を見直す必要があるかもしれません。
さらに、増加・減少の幅にも注意しましょう。
昨年度から大幅に減少している場合は売上が伸びていても注意が必要です。どんな原因でROSが下がったのかしっかりと分析する必要があります。
同業他社との比較
ROSは、同業他社との比較においても役に立ちます。
業種が同じ企業は、ROSの水準が近い傾向があります。
そのため、同業他社のROSの平均値よりも自社のROSが大きい場合は、他の企業に対して何らかの強みがあると判断できます。
利益に占める営業利益の割合が大半で、かつROSが同業他社と比較して高い場合は、本業の業績が高いと判断できるでしょう。
逆に、ROSは同業他社と同水準であっても営業利益の割合が低い場合は、本業とは違う別の活動で収支を補填していると考えるべきです。
ROSを利用するメリット
数ある経済指標の中から、ROSを利用することにはどんなメリットがあるでしょうか。
企業の分析を行う際には、分析の目的や確認したい内容を明確にして、適切な経済指標を用いるのが重要です。
ROSの主なメリットを、以下に2項目紹介します。
・会社の経営状況を大まかに把握できる
・計算が簡単で導入しやすい
ROSの指標を便利に活用して、企業分析に生かしましょう。
会社の経営状況を大まかに把握できる
ROSは、会社の経営状況を大まかに把握できるのがメリットです。
前述のように、ROSは経常利益をベースに算出されます。
本業以外の営業活動も含めた指標であるため、会社全体の営業活動の状況が推し量れるのです。
収支分析において、本業など特定の分野に特化して分析をする企業は多いです。
例えば管理職の方で、自身が統括する部署の業績はしっかり把握していても、それだけでは会社の一部分の業績判断しかできません。
ROSは、広い視点で企業全体の業績を判断できるので、会社全体の業績を把握する必要がある経営陣や経理財務担当にとって役に立つ指標と言えます。
計算が簡単で導入しやすい
ROSは、計算が単純で分析活動に導入しやすいというのも大きなメリットです。
ROSの計算式は、経常利益を売上高で割り%で表現するという、非常にシンプルで簡単なものです。
専門的な計算式を使うことなく、誰でも計算できます。
専門知識を用いることなく、大まかに会社の業績をチェックできるため、ROSは様々な場面で利用されています。
類似した指標とROSとの違い
企業の業績分析には、ROS以外にも様々な指標があります。
中にはROSに似た指標もあり、個別に利用したり組み合わせて利用したりできます。
ROSに類似した指標を以下に3例紹介します。
・ROI
・ROA
・ROE
それぞれの特徴を理解して、状況に応じて使い分けましょう。
ROI
ROIは、「Return on Investment」の略で、日本語では「投資利益率」と訳せます。
投資資金の純利益への還元効率の良さを表します。
以下の計算式で算出されます。
ROI=純利益÷投資額×100 |
ROIが100%を下回るということは、投資資金以上の利益を獲得できていないという意味になり、運営を見直す必要があるといえます。
ROA
ROAは、「Return on Assets」の略で、日本語では「総資産利益率」です。
ROAは総資産に対する純利益の割合で表現され、以下の計算式で算出されます。
ROA=純利益÷総資産×100 |
数値が高いほど効率よく利益を獲得できていることになります。
総資産には負債も含まれているため、負債も含めた利益獲得の効率性を確認するのに役立つ指標です。
ROE
ROEは、「Return on Equity」の略で、日本語では「自己資本利益比率」という意味です。
株主資本に対する純利益の割合を表し、数値が高いほど株主資本を効率よく活用できていることになります。
ROEは以下の計算式で算出されます。
ROE=純利益÷株主資本×100 |
ROEの数値が高いほど効率が良いということになりますが、負債が膨らんで資本が減少することでもROEは上昇します。
ROEを利用する際は、負債の変動についても合わせてチェックしましょう。
まとめ
ROSは、数ある経営指標の中でも理解しやすく使いやすい指標です。
企業の経営状況を大まかに把握するのに役立つ指標で、多くの企業が利用しています。
しかし、経営指標はあくまで経営状況の一側面を表現するもので、ROSだけでなく様々な指標を組み合わせて総合的な視点を持つことが重要です。
ROSをはじめとした経営指標を有効に活用して、経営判断に役立てていきましょう。
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