【徹底解説】会社設立の流れが分かる! 必要な書類・手続き、費用まで詳しく解説します。
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起業して会社を設立したいものの、何から始めたら良いかわからず困っている方もいるのではないでしょうか。
会社を設立するにあたって、必要な流れは大きく分けて7ステップあります。必要な手続きや書類に不備・漏れがあるとやり直しが発生し、会社設立がスムーズに進みません。また、会社設立後も書類提出や社会保険の手続きなど、やるべきことが多数あります。
会社設立をスムーズに、そして必要な手続きを漏れなく行うためには、会社設立にどのくらいの期間や費用が必要なのかあらかじめ知ることが大切です。
今回の記事では、会社設立の流れや必要な費用・期間などそれぞれ詳しく説明します。
目次[非表示]
- 1.会社の種類
- 1.1.株式会社と持分会社
- 1.2.株式会社と合同会社どちらを選ぶのが良いか?
- 2.会社を設立するメリット
- 2.1.社会的な信用を得やすい
- 2.2.融資・資金調達を行いやすい
- 2.3.節税面でメリットがある
- 2.4.決算月を自由に設定できる
- 2.5.有限責任になる
- 2.6.相続税対策になる
- 3.会社設立は誰に頼めばいい?
- 4.会社設立の流れ
- 5.定款記載事項
- 6.登記申請書類
- 6.1.全ての会社で必要な書類
- 6.2.会社によっては必要となることがある書類
- 7.会社設立後の手続き
- 7.1.口座開設
- 7.2.税務署への書類提出
- 7.3.役場への書類提出
- 7.4.年金事務所へ書類提出
- 7.5.従業員を雇う場合に必要な手続き
- 8.会社設立にかかる期間と費用の目安
- 8.1.会社設立にかかる期間
- 8.2.会社設立にかかる費用
- 9.会社設立にあわせて必要になるもの
- 9.1.優先的に用意しておきたいもの
- 9.2.営業に必要になるもの
- 10.会社設立時の資金調達
- 10.1.会社設立時に使える補助金・助成金
- 10.2.会社設立時に使える創業融資制度
- 11.オンラインアシスタント・秘書サービスの利用もあり
会社の種類
現在新たに設立できる会社の種類は以下の4つです。
- 株式会社
- 合同会社
- 合名会社
- 合資会社
会社の種類によって、以下のように債務の責任に違いがあります。
株式会社 |
有限責任社員 |
合同会社 |
有限責任社員 |
合名会社 |
無限責任社員 |
合資会社 |
有限責任社員と無限責任社員 |
有限責任社員は自分の出資額の範囲内で責任を負うのに対し、無限責任社員は責任を負う限度が決められていません。そのため、無限責任は個人の負担が大きくなる可能性があります。
なお、会社法における社員とは、会社に出資した人を意味する用語です。会社で働いており出資はしていない人は従業員と表現します。社員=出資者であり、従業員とはイコールではない点にご注意ください。
株式会社と持分会社
新たに設立できる会社は4種類あると紹介しました。そのうち、株式会社以外の3つは持分会社に該当します。
株式会社の大きな特徴が、所有者(出資者)と経営者が分かれる点です。株式会社では株式を発行して資金を調達します。株式を購入し保有する人を所有者(株主)と呼びます。
株式会社において、経営権を有するのは所有者である株主です。役員を含めた会社の経営陣は、株主から経営を任せられている存在であり、経営権を有するわけではありません。株式会社は会社の利益の一部を配当として株主に還元したり、株主総会で株主から経営について意見されたりします。
持分会社は所有者と経営者が同じ会社です。出資した人が会社の経営権も有します。所有者と経営者が同じであるため、社員の自由度が高く、意思を反映しやすい会社形態です。一方で、株式会社に比べて信用力に劣る・株式発行による資金調達ができないといったデメリットがあります。
合同会社・合名会社・合資会社それぞれの違いは、社員が負う債務の責任です。前述したように、合同会社は自分の出資額の範囲内で責任を負う有限責任社員のみで構成されています。一方で合名会社は無限責任社員のみ、合資会社は有限責任社員と無限責任社員の両方が在籍します。その他にも細かな違いはありますが、いずれも構成する社員の違いによって生まれる差異です。
設立する会社の種類によって、必要な手続きやかかる費用は大きく異なります。この記事では主に株式会社を設立する流れや手続きなどを解説します。
株式会社と合同会社どちらを選ぶのが良いか?
持分会社のうち、もっとも設立されることが多いのが合同会社です。前述したように合同会社は有限責任社員のみで構成されるため、社員の負担が小さく、万が一のときのリスクが小さいためです。
現在の会社法で設立できる会社は4種類ですが、実際のところほぼ株式会社または合同会社の2択といえるでしょう。株式会社と合同会社、それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
【株式会社】
メリット
- 株式や新株予約権の発行ができるため資金調達がしやすい
- 社会的信用を得やすい
- 所有と経営が分離しているためワンマン経営になりにくく経営が安定しやすい
デメリット
- 会社設立のコストが高い
- 決算報告の義務をはじめ法的なルールが多い・厳しい
- 会計税務など事務手続きが煩雑
【持分会社】
メリット
- 会社設立の手間・コストが小さい
- 所有と経営が一致しているため社員の自由度が高い
- 株式会社よりもルールが厳しくない
デメリット
- 社会的信用を得にくい
- 株式や新株予約権の発行ができず事業拡大がしにくい
- 社員同士の対立が生じた際のリスクが高い
株式会社と合同会社は、どちらも異なるメリット・デメリットを有します。どちらが良いかはケースによって異なるため一概にはいえません。
会社設立の目的や経営に対する希望などを考慮した上で、自身に合う会社形態を選ぶことが大切です。
会社を設立するメリット
事業活動そのものは個人でも可能です。社長一人の会社であれば、個人事業主と変わらないと考える人も多いかもしれません。しかし、会社(法人)と個人事業主にはさまざまな点で違いがあり、会社ならではのメリットも存在します。
会社設立によって得られる大きなメリットは以下の6つです。
- 社会的な信用を得やすい
- 融資・資金調達を行いやすい
- 節税面でメリットがある
- 決算月を自由に設定できる
- 有限責任になる
- 相続税対策になる
メリットについてそれぞれ詳しく解説します。
社会的な信用を得やすい
会社を設立する大きなメリットが、社会的な信用を得やすくなる点です。会社は個人事業主よりも信用を得やすく、資金調達や取引先の確保において優位になるといえます。社長一人の会社であっても、個人事業主よりも社会的な信用を得やすいのは事実です。
会社の方が個人事業主よりも社会的信用を得やすい理由として、以下の3つが挙げられます。
- 事業情報がオープンなため外部から情報を把握しやすい
- 会社には厳しいルールが多い分、会社として事業活動を行う事業者はしっかりルールを守っていると認識されやすい
- 事業を行う上で必要となる資金力や体力がある程度備わっていることが確実
実際のところ、取引先を法人(会社)に限定する企業は少なくありません。事業活動の内容そのものが同じでも、個人事業主と会社では社会的信用の得やすさがまったく異なります。
社会的信用の得やすさは、取引先確保のしやすさ、ひいては事業活動のしやすさに直結する要素です。
融資・資金調達を行いやすい
融資・資金調達を行いやすい点も、会社を設立するメリットとして挙げられます。
個人事業主の場合、どうしても事業のお金と家計が曖昧になりやすいです。事業主自身は事業とプライベートのお金を明確に分けていても、外部からは正確な判断ができません。そのため金融機関にとって融資判断が難しい存在であり、結果として融資を断られる・条件が厳しくなるといった事態が起こりやすいです。
会社の場合、会社とプライベートのお金が明確に区分されます。社長一人の会社であっても、会社のお金と家計の境界線が存在する状態です。
また、会社は毎期必ず貸借対照表や損益計算書といった決算書を作成します。事業活動・経営における財政状態や経営成績を正確に把握できます。
事業活動に関するお金が明確になるため、金融機関での融資判断がしやすく、融資・資金調達を行いやすくなるのです。
節税面でメリットがある
会社設立は節税面でもメリットがあります。会社設立が節税につながる理由として、大きく3つ挙げられます。
ひとつは、法人の利益に課せられるのは法人税であるためです。法人税は利益の大きさに関係なく一定の税率が課せられます。一方で個人事業主に課せられる所得税は累進課税を採用しており、所得が上がるほど税率も高くなる仕組みです。事業による所得が大きい場合、法人税の方が適用される税率が低くなります。
2つ目の理由は経費となる範囲が広い点です。会社は個人事業主よりも経費として認められる範囲が広いため利益を抑えやすく、結果として節税につながります。
個人事業主では経費にならず、会社では経費として計上できる支出の具体例を紹介します。
- 生命保険料
- 給与や賃金・賞与
- 退職金
- 国や地方公共団体への寄付金
- 生命保険料(一定の要件あり)
3つ目の理由は、会社は個人事業主よりも欠損金の繰越期間が長い点です。個人事業主は青色申告であれば欠損金の繰越が可能ですが、繰越期間は最長で3年となります。赤字が大きいと欠損金を使いきれない可能性が高く、得られる節税効果が小さくなります。
一方で、法人の欠損金の繰越期間は最大10年間です。繰越できる期間が長いため欠損金を使いきれない心配が小さく、欠損金による控除を最大限に活かせます。
以上のように、会社の方が個人事業主よりも節税できる可能性が高いです。
決算月を自由に設定できる
決算月を自由に設定できる点も、会社を設立するメリットです。
個人事業主の場合、事業年度は1月から12月で統一されています。人によっては繁忙期と確定申告時期が重なり、負担が膨大になる恐れがあります。
法人の場合、決算月を自由に設定できるため、業務量に合わせた調整が可能です。決算作業の時期と繁忙期をずらすことで業務量の平準化ができるため、事業活動を無理なく進められるようになります。
有限責任になる
個人事業主は無限責任、すなわち債務に対して負う責任に上限がない状態です。万が一の事態では、個人の財産を処分してでも債務整理をしなければなりません。
一方で会社の場合、株式会社または合同会社であれば有限責任になります。債務に対する責任の上限が出資額となるため、個人にかかる負担を抑えることができ安心です。
相続税対策になる
会社設立は相続税対策としても効果的です。
個人事業主の場合、経営者(事業主)が亡くなると、事業に関連するものも含めたすべての財産が相続税の対象となります。事業によって多額の利益を得ており預貯金や資産が大きい場合、発生する相続税の額がかなり大きくなってしまう恐れがあります。
一方、法人には相続の概念がありません。事業主が亡くなり事業承継を行う場合でも相続税の負担は不要です。
将来的に事業承継を検討しているのであれば、相続税対策のためにも法人成りをするのがおすすめです。
なお、個人が保有する株式は相続税の対象です。社長一人の会社を含め、中小企業の経営者が自社株を保有するケースは多くみられます。自社株の評価が高いとかえって相続財産が大きくなり、相続税が高くなる恐れもあるため注意が必要です。
会社設立は誰に頼めばいい?
会社設立ではやるべき手続きや必要な書類が多く、未経験の人がスムーズに進めるのは容易ではありません。会社設立の手間を最小限に抑えつつ完璧にこなすには、専門家に依頼するのが確実です。
会社設立の依頼先として、以下3つの士業が挙げられます。
- 税理士
- 司法書士
- 行政書士
専門家によって対応できる範囲が異なるため、目的に合わせた士業への依頼が大切です。
会社設立についてそれぞれの士業に依頼できる内容と、依頼先の選び方を解説します。
税理士
税理士は文字通り税務の専門家です。税務に関する専門的な内容のほか、会計・経理といった税務と関係の深い業務も幅広く行います。
税理士の独占業務は以下の3つです。
- 税務代行:税務申告や税務調査など、税務手続きの代行は税理士のみに認められています
- 税務相談:税額計算から節税対策まで、税務に関する相談は税理士のみ対応可能です
- 税務書類の作成:税務に関連する書類を納税者に代わって作成できるのも税理士のみとなります
会社設立で税理士が対応できるのも、税務や会計に関連する部分のみです。具体的には以下の例が挙げられます。
- 節税を視野に入れた会社設立アドバイス
- 会社設立後に行う税務署への届出のサポートや代行
- 創業融資のアドバイスやサポート
税理士に相談することで、将来の節税や経理事務を視野に入れた会社設立が可能です。資本金をいくらにするべきか、決算時期をいつにするべきかといった、実務的なアドバイスを受けられます。会社設立後の手続きを任せたい・創業融資を受けたいといった場合も、税理士に依頼するのが効果的です。
一方、税理士は定款作成や登記といった会社設立そのものの代行はできません。税理士が対応できるのは税務や会計に関する内容のみとなります。
税理士は会社設立の直接的なサポートではなく、将来を見据えたアドバイスや、会社設立後のサポートを得意とします。
司法書士
司法書士は登記をはじめとした法律・司法事務の専門家です。登記業務や供託業務をメインとします。
司法書士の独占業務は、司法書士法第3条に規定されています。主な具体例は以下のとおりです。
- 法務局や行政機関に提出する書類の作成代行・アドバイス
- 登記や供託手続きの代行・アドバイス
- 相続・成年後見に関する業務
※遺言書の作成、相続登記の手続き、成年後見制度の利用サポートなど
相続税関連や相続トラブルに関するサポートは対象外
会社を設立するためには法務局における会社設立登記が必要ですが、登記手続きのアドバイスやサポートができるのは司法書士のみです。定款作成・定款認証手続き・登記申請書を含む書類作成など、会社設立に関する幅広いサポートも依頼できます。
一般的に会社設立とは、法務局における会社設立登記までを指します。司法書士は会社設立登記までの全般をサポートできる専門家といえるでしょう。
ただし、許認可申請の代行は司法書士の業務範囲に含まれません。許認可申請のサポートを受けたい場合、後述する行政書士への依頼が必要となります。
行政書士
行政書士は行政へ提出する書類の作成や、権利義務・事実証明に関する手続きを行う専門家です。
書類作成や関連する手続きを行うという点で司法書士と似ていますが、担当分野が大きく異なります。簡単に表現すると、国・地方自治体などの行政機関へ提出する書類は行政書士、法務局や裁判所などに提出する書類は司法書士の分野といえます。
会社設立において行政書士に依頼できる内容は以下のとおりです。
- 定款作成
- 公証役場における定款認証
- 許認可申請
司法書士と同様に定款作成および定款認証の代行・サポートが可能です。一方で、その先である登記関連の業務は対応できません。
会社設立において行政書士にしか依頼できない内容として、許認可申請が挙げられます。飲食業・建設業・人材派遣業などの許認可が必要な業種は、許認可がなければ事業を進められません。会社設立の後すぐに許認可申請ができるよう、会社設立と並行して準備を進めるのが一般的です。
許認可関連は複雑であり、専門知識のない人が正確に行うのは容易ではありません。そのため許認可が必要な業種の会社設立をする場合、行政書士に依頼するのが安心です。
依頼先の選び方
これまで解説したように、専門家によって会社設立に際して対応できる範囲は異なります。そのため、自身の目的に合う依頼先選びが必要です。
会社設立を依頼するにあたって、まずは依頼したい内容を明確にしましょう。
定款の作成および認証の代行であれば、司法書士と行政書士の両方が対応できます。登記申請書などの作成や法務局での登記手続きまで任せたい場合、司法書士への依頼が最適です。一方、許認可が必要な業種であれば、許認可手続きの代行ができる行政書士の方が良いでしょう。
将来の節税を見据えた会社設立をしたい場合、会社設立の前に税理士へ相談するのがおすすめです。会社設立後の手続きに関するサポートも、税理士であれば広く対応できます。また、税務申告をはじめ税理士のサポートが必要となる場面は多く存在します。会社設立の段階で税理士のサポートを受け、そのまま顧問税理士として契約するのも効率的です。
会社設立について依頼したい内容が多岐にわたる場合、ほかの士業と提携している専門家を選ぶと便利です。
司法書士と提携している税理士に依頼するケースを例にします。依頼主である事業者が連絡や相談を行う相手は税理士のみですが、定款作成や法務局での手続きといった業務は、税理士を通じて提携先の司法書士へ依頼ができます。直接やり取りをするのは税理士だけであっても、司法書士の対応領域も依頼できるのです。
会社設立を一人の専門家にすべて任せることはできないため、ほかの士業と連携している専門家を選ぶことをおすすめします。
会社設立の流れ
一口に会社設立といっても、必要な手続きは多岐にわたります。会社設立をスムーズに進めるためには、会社設立の流れを押さえつつ、一つひとつの手続きを事前に確認しておくことが大切です。
この章では会社設立の流れについて、大きく7つのステップに分けて工程ごとに詳しく解説します。
会社概要の決定
はじめにやるべきことが、会社概要の決定です。設立する会社について早い段階である程度の情報をまとめておくと、その後の手続きがスムーズに進みやすくなります。
会社概要として早めに決定するべき内容の具体例として、以下の項目が挙げられます。
- 会社の目的
- 商号(会社の名前)
- 本店の所在地
- 資本金の金額
- 発起人の氏名・住所
- 株券発行
- 発行可能株式総数
- 株主総会の時期
- 役員構成
- 事業年度
- 広告方法
このうち1〜5は、定款に必ず記載しなければならない事項です。会社設立の本格的な手続きを進める前に、最低でも上から5つの事項は決めておきましょう。
印鑑作成
商号(会社の名前)が決まり次第、印鑑を作成するのがおすすめです。
法務局で登記申請をするときに、会社印(実印)の印鑑届出書を提出する必要があります。登記申請までに印鑑を確実に用意できるよう、会社印をなるべく早めに準備しておくと安心です。
会社印とあわせて、銀行印と角印も作成することをおすすめします。銀行印および角印は登記申請の段階では必要ありませんが、後に申請や書類作成などのさまざまな場面で必要になります。会社印・銀行印・角印の3本セットで販売しているケースが多く、まとめて作った方がお得です。
印鑑作成の手間を最小限にしつつコストを抑えるために、早い段階で3本まとめて作成するのがおすすめです。
定款の作成
定款は会社運営のルールをまとめた書類で、会社の憲法とも表現されます。株式会社を設立するためには、登記申請の前に公証役場での定款認証を受ける必要があります。
定款は記載事項や書き方について会社法で厳格に定められており、定款を正しく作成するためには定款についての深い理解が必要です。定款の作成は会社設立の流れの中で、もっとも労力を要する工程といえるでしょう。
定款の記載内容は以下3つの種類に分けられます。
- 絶対的記載事項:定款に必ず記載が必要な事項
- 相対的記載事項:必須ではないものの、定款に記載しなければ効力を持たない事項
- 任意的記載事項:記載する・しない、どちらでも問題ない事項
定款の記載事項について詳細は後述します。
定款の認証
定款の作成が完了したら、続いては定款の認証が必要です。
定款の認証とは、定款が正当な手続きによって作成されたものであることを公証人に証明してもらうための行為です。定款の認証は、会社の本店の所在地がある都道府県の公証役場で受けられます。
定款の認証を受けるためには、以下の費用がかかります。
定款認証手数料 |
資本金等の額を基準に考える 資本金100万円未満:3万円 100万円以上300万円未満:4万円 300万円以上:5万円 |
定款の謄本作成費用 |
1通250円 |
収入印紙代 |
4万円 ※電子定款の場合は不要 |
なお、会社設立に際して定款の認証が必要であるのは株式会社のみです。合同会社も定款の作成自体は必要ですが、公証役場での認証を受ける必要はありません。
資本金(出資金)の払い込み
続いて、資本金(出資金)の払い込みを行います。
会社法上、資本金は最低1円から会社設立は可能です。ただし資本金は会社の初期費用や運営費用として用いるため、実際はある程度の資金を用意する必要があります。また、資本金は会社の体力や規模を表す指標にもなります。経営面や取引先や融資を受ける際の社会的信用面を考えると、極端に少ない額での会社設立は避けたほうがいいでしょう。
資本金の必要金額は業種によってさまざまです。総務省統計局の調査によると、資本金は「300万円〜500万円未満」および「1,000万円〜3,000万円未満」の割合が多い傾向です。医療・福祉では「300万円〜500万円未満」、電気・ガス・熱供給・水道業は「500万円以上」の割合が多くなっています。
業種によって必要となる開業資金の目安が異なります。初期費用とは別に、約3〜6ヶ月分の運転資金の額を資本金として準備しておくと安心です。
なお、資本金が1,000万円未満であれば最大2年間にわたって消費税納付義務の免除を受けられます。設立時の資本金が1,000万円を超えると初年度から消費税の課税対象になるためご注意ください。
資本金の準備ができたら払い込みを行います。この時点ではまだ法人の口座がないため、発起人の個人口座に振り込みます。
振り込みが完了したら、通帳の以下のページをコピーしましょう。
- 表紙の裏表
- 1ページ目(銀行名・支店名・口座番号・口座名義人の名前などが確認できるページ)
- 出資金の振り込み確認ができるページ
ネットバンキングの場合は、「銀行名・支店名・口座番号・口座の種類・口座名義人・振り込み金額・日付」がわかるページを印刷します。また、登記申請の際に通帳コピーとあわせて振込証明書の提出も必要になるため、忘れずに用意しましょう。
登記申請書類の作成
資本金の払い込みが完了したら、登記申請に必要な書類の作成を行います。
登記申請を行う場所は「会社・法人の本店または主たる事務所」を管轄する登記所(法務局)です。
登記申請書類に記載する内容は法律で定められており、未経験の人が自力で正確に作成するのは難しく、時間もかかってしまいます。申請手続きをスピーディーかつ確実に済ませるため、司法書士に書類作成を依頼するのがおすすめです。
会社設立登記
必要な手続きをすべて終え書類の用意も完了したら、法務局で会社設立の登記申請を行いましょう。
法務局に登録申請書を提出した日が「会社の設立日」になります。登記の登録が完了すれば「登録完了証」が交付されます。
会社設立手続き自体は、法務局での登記申請が受理されれば完了です。しかし、会社設立後もさまざまな手続きが必要となります。
会社設立後の手続きをスムーズに進めるため、登録完了証交付後に「登記事項証明書」や「印鑑証明書」を3〜5通ほど発行しておくのがおすすめです。
定款記載事項
前章で少し触れたように、定款の記載内容は3種類に分けられます。それぞれの意味や記載事項の具体例を紹介します。
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載が必要な事項です。絶対的記載事項に不備や漏れがある定款は無効となります。公証役場における定款の認証も受けられません。
絶対的記載事項に該当する項目は以下の5つです。
- 商号(会社の名前)
- 事業目的
定款の事業目的に記載していない事業は展開できないため、将来行う可能性のある事業も記載することをおすすめします。 - 本店所在地
会社が登記されている住所です。住所すべてではなく、最小行政区画までの記載でも問題ありません。 - 資本金の額
- 発起人の氏名・住所
発起人が複数人いる場合、全員について記載する必要があります。
会社法で定められている絶対的記載事項は上記の5つですが、「発行可能株式総数」も絶対的記載事項に準ずる性質を有します。会社法37条において、会社設立までに発行可能株式総数を定款に定める必要があると規定されているためです。
定款作成をスムーズかつ確実に進めるため、絶対的記載事項および発行可能株式総数は早めに決めましょう。
相対的記載事項
相対的記載事項とは、定款への記載が必須ではないものの、定款に記載しなければ効力を持たない事項です。
相対的記載事項に該当する項目は、ただ決めただけの状態では効力を発しません。ルールとしてしっかり効力を持たせるため、決定した以上は定款に記載する必要があります。
相対的記載事項の例を紹介します。
- 株券発行の定め
定款に株券を発行することを明記しない限り、株式会社であっても株券発行の義務が生じません。 - 変態設立事項
発起人による、自己または第三者の利益を目的に会社の財産基盤を損なわせる恐れのある行為です。現物出資・財産引受・発起人の報酬・設立費用が該当します。 - 株式の譲渡制限に関する規定
- 株主名簿管理人の設置
- 株主総会や取締役会の招集期間の短縮
- 取締役や監査役の任期の伸長又は短縮
- 役員の責任の免除に関する内容
任意的記載事項
任意的記載事項とは、定款に記載がなくても問題がなく、ほかの文書などで明らかにされていれば効力を有する項目です。絶対的記載事項および相対的記載事項のいずれもに該当せず、かつ、違法性のない事項とも表現されます。
任意的記載事項に該当する項目の例を紹介します。
- 株式総会の開催規定
- 株主名簿の起算日
- 会社役員の員数
- 事業年度
- 役員報酬に関する事項(役員報酬の決定方法など)
なお、任意的記載事項を定款に定めた場合、内容に変更があれば定款変更の手続きも必要なため注意しましょう。
登記申請書類
会社を設立するためには、法務局での法人登記が必要です。登記申請書類に不備や漏れがあるとやり直しの必要性が生じるため、事前に必要書類をしっかり確認し、万全の準備を行う必要があります。
この章では会社設立の登記申請で必要となる書類について解説します。
全ての会社で必要な書類
まずは会社の種類や発起人の人数などに関係なく、全ての会社で必要な書類です。
- 登記申請書
法務局で登記申請を行う際に必要な書類です。法人登記用の書類を使います。 - 定款
株式会社の場合、認証済みの定款を用意する必要があります。 - 登録免許税納付用台紙
登記には登録免許税の支払いが必要です。登録免許税分の収入印紙または事前に現金で納付した際の領収書を貼付します。 - 取締役の就任承諾書
設立時取締役が就任を承諾している旨を証明する書類です。 - 払込証明書
定款に記載した資本金が払い込まれたことを証明する書類です。あわせて通帳コピーも必要となります - 「登記すべき事項」をまとめた資料
書面またはCD-Rで提出します
必要書類を漏れなく用意するため、記載方法などの細かなルールについて事前に法務局・法務省の公式サイトを確認するのが安心です。
会社によっては必要となることがある書類
続いて、会社によっては必要となる書類を紹介します。
- 発起人の決定書
本店所在地が発起人全員の合意によって決定したことを証明する書類です。定款に本店所在地の番地まで記載している場合は不要となります。 - 設立時代表取締役の就任承諾書
設立時取締役が複数人いる場合、代表取締役の就任承諾書が必要です。設立時取締役が一人の場合はその一人が自動的に代表取締役になるため、設立時代表取締役の就任承諾書は必要ありません。 - 設立時監査役の就任承諾書
監査役を設置しない会社の場合は不要です。 - 取締役全員の印鑑証明書または代表取締役の印鑑証明書
取締役会を置かない会社で取締役が複数人いる場合、取締役全員の印鑑証明書を提出する必要があります。取締役会を設置している会社であれば代表取締役の印鑑証明書のみ必要です。 - 印鑑届出書
実印(代表者印)の登録に必要な書類です。オンライン申請の場合は実印登録が任意であるため、必ずしも必要とは限りません。
自分が設立する会社がどのようなパターンに該当するか、事前にしっかり確認しましょう。
会社設立後の手続き
会社設立そのものは、法務局での登記申請が受理されれば完了となります。しかし、会社として活動をするためには、会社設立後にもさまざまな手続きが必要です。
会社設立後に必要な手続きについて詳しく解説します。
口座開設
会社設立後に必要な手続きのひとつが法人口座の開設です。法人口座の開設に明確な期日はありませんが、事業活動をスムーズに進めるため、早めに実施することをおすすめします。
法人口座の開設に必要な書類は銀行によって異なるため、銀行ごとの案内を確認しましょう。どの銀行でも必ず必要な書類として、以下の3つが挙げられます。
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 印鑑証明書
- 本人確認書類
- 法人の銀行印
なお、法人口座の開設時には審査が行われます。審査には数日〜半月ほどかかるため、法人口座の開設は時間がかかるという認識が必要です。
税務署への書類提出
会社設立後は、税務署に下記の書類を提出する必要があります。
【必ず提出する書類】
- 法人設立届出書
会社設立後2ヶ月以内に提出が必要です。 - 給与支払事務所等の開設届出書
給与支払いを行う事務所を開設した場合に提出が必要な書類です。社長一人の場合でも、会社から役員報酬の支払いが行われる場合は提出する必要があります。 - 消費税の各種届出書
会社設立時の資本金が1,000万円以上で消費税課税事業者になった場合に必要です。
【必要であれば提出する書類】
- 青色申告書の承認申請書
青色申告はさまざまなメリットがあるため、ほかの書類とあわせて提出し設立1期目から青色申告にするのがおすすめです。 - 源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書
源泉所得税は原則として、徴収した月の翌月10日までに納付する必要があります。しかし、この申請書を提出することで、年2回に分けてまとめての納付が可能になり効率的です。 - 減価償却資産の償却方法の届出書
- 棚卸資産の評価方法の届出書
- 有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書
上記3つは、原則的な方法以外を適用したい場合に提出が必要です。
提出する場所は事務所所在地を管轄している税務署です。
必要書類は国税庁のホームページでダウンロードできます。記入が済んだら、用紙をすべてコピーし、原本とコピーをあわせて税務署へ提出します。コピーにも日付印を押してもらえるため、控えとして保管しておくと安心です。
役場への書類提出
都道府県税事務所・市区町村役場(以下「役場」)にも税務署と同じく「法人設立届出書」を提出する必要があります。
税務署と役場それぞれに法人設立届出書を提出する理由は、納める税金の種類が違うためです。税務署に納付するのは「国税」、役場に納付するのは「地方税」となります。
記載する内容は税務署に提出する法人設立届出書とほとんど同じです。ただし、自治体によってフォーマットや提出期限が異なるため、必ず自治体ごとの案内をご確認ください。
年金事務所へ書類提出
社会保険料等の手続きをするために、年金事務所への書類提出が必要です。
法人は社会保険の加入が義務付けられています。社長一人で従業員を雇っていない場合でも、社会保険に加入しなければなりません。社会保険関係の手続きは他の手続きよりも期限が短いため、早めの着手をおすすめします。
年金事務所に提出が必要な書類は以下の通りです。
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
社会保険への加入義務がある事務所を開設したときに提出が必要な書類です。
以下の書類を添付する必要があります。
・法人(商業)登記簿謄本
・法人番号指定通知書のコピー
・事業主の世帯全員の住民票(原本のみ。コピー不可) - 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
社長や従業員全員分の届出を提出する必要があります。 - 健康保険被扶養者(異動)届
家族が扶養に入る場合に必要な書類です。家族の属性やケースによって必要な添付書類が異なります。
いずれの書類も会社設立から5日以内に提出が必要です。
従業員を雇う場合に必要な手続き
従業員を雇う場合、雇用保険および労災保険に関する手続きも必要となります。
【雇用保険に加入するために必要な書類】
前提として、雇用保険に加入できる従業員は以下2つの要件を満たすケースのみです。
- 31日以上雇用見込み有り
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
雇用保険の対象となる従業員を雇う場合、以下の書類を提出する必要があります。
- 雇用保険適用事務所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届
提出先は会社・法人を管轄するハローワークです。
【労災保険に加入するために必要な書類】
労災保険は雇用保険と違い雇用期間や所定労働時間による加入要件がなく、すべての従業員が対象となります。
従業員を雇う場合、労災保険の加入手続きのために下記の書類を提出する必要があります。
- 労働保険保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
提出先は会社・法人を管轄する労働基準監督署です。
従業員を雇わない社長一人の会社の場合、会社設立直後の手続きは必要ありません。後に従業員を雇うことになった段階で手続きをしましょう。
会社設立にかかる期間と費用の目安
続いて、会社設立にかかる期間および費用の目安を紹介します。
会社設立にかかる期間
会社設立にかかる期間として、準備から登記完了まで最短でも2週間程度がひとつの目安です。
前述したように、会社設立までの流れは以下7つの工程に分けられます。
- 会社概要の決定
- 印鑑作成
- 定款の作成
- 定款の認証
- 資本金(出資金)の払い込み
- 登記申請書類の作成
- 会社設立登記
このうち法的に必要な手続きとしては、「定款の認証」「資本金の払い込み」「会社設立登記」の3つといえます。この3つの手続きを1日ですべて終わらせることは不可能ではないため、見方によっては「会社設立手続きは1日ですべて完了する」という表現もできるでしょう。
しかし会社設立手続きのために必要な作業、すなわち「会社概要の決定」「印鑑作成」「定款の作成」「登記申請書類の作成」を1日で終えることはできません。必要事項の決定や定款作成に時間をかけずにいると、十分な検討や準備ができず、後にトラブルになる恐れが大きいです。手続き以外の必要な作業について、最短でもトータルで1週間は必要です。
また、会社設立日として登録されるのは登記申請を行った日ですが、実際は登記申請から手続きが完了するまで1週間程度かかります。
このように、会社設立に向けた準備・設立手続き・登記完了までをすべて最短で済ませても、合計して2週間は必要です。その上、準備に1週間・設立手続きに1日はあくまで最短であり、さらに時間がかかるケースが多いでしょう。実際は準備から登記完了ではなく、準備から登記申請までに2週間程度かかる可能性が高いです。
会社設立は想定より時間がかかる可能性があるため、余裕を持ったスケジュールを設定する必要があります。
会社設立にかかる費用
会社設立にかかる費用について、株式会社・合同会社を比較できるよう表にまとめました。
株式会社 |
項目 |
合同会社 |
特別な定めなし 100万円〜500万円がひとつの目安 |
資本金 |
特別な定めなし 100万円〜500万円がひとつの目安 |
資本金等の額を基準に考える 資本金100万円未満:3万円 100万円以上300万円未満:4万円 300万円以上:5万円 |
定款認証手数料 |
不要 ※合同会社は定款認証が不要なため、定款認証手数料も発生しない |
1通250円 |
定款の謄本作成費用
(謄本手数料)
|
不要 ※定款認証手数料と同様、合同会社では不要 |
4万円 ※電子定款の場合は不要 |
定款認証時にかかる収入印紙代 |
4万円 ※電子定款の場合は不要 ※合同会社は定款認証は不要だが、定款の作成自体は必要。定款は印紙税の課税文書であるため、紙の定款を作成した場合は収入印紙4万円を用意する必要がある |
以下のうちいずれか高い額 ・15万円 ・資本金の1000分の7 |
登記登録免許税 |
以下のうちいずれか高い額 ・6万円 ・資本金の1000分の7 |
1通600円 |
登記事項証明書(書面請求) |
1通600円 |
1通450円 |
印鑑証明書(書面請求) |
1通450円 |
上記以外の費用として、印鑑作成費用や電子定款で必要なソフト、専門家への報酬などが挙げられます。また、定款の謄本作成費用・登記事項証明書・印鑑証明書の発行数などによって合計額が変動します。
株式会社と合同会社の大きな違いは、定款認証の必要性と登録免許税の最低額です。合同会社は定款認証が不要な上に登録免許税の最低額が安価なため、株式会社よりも会社設立にかかる費用が安く済みます。
会社設立にあわせて必要になるもの
これまでに紹介した必要書類は、会社設立に関連するものでした。提出しなければ会社として活動できない書類とも表現できます。
しかし実際に会社として事業活動を行うためには、会社設立関連以外にもさまざまなものの用意が必要です。この章では会社設立にあわせて、会社が事業活動をするために必要になるものを紹介します。
優先的に用意しておきたいもの
事業活動を行うために優先的に用意したいものとして、以下の7つが挙げられます。
- 会社やサービスのロゴ
会社・サービスを覚えてもらうために必要不可欠な要素です - 会社のホームページ
会社設立前に用意できるのが理想です - 名刺
会社設立後すぐに活動を開始するため、名刺も早めに用意しましょう - チラシ・DM
新規顧客の獲得に向けた宣伝広告手段です - 挨拶状・お礼状
すでに自分を知っている人や個人事業主時代から顧客であった人に送る手紙も用意するのがおすすめです - パンフレット
商品やサービスに関する説明をスムーズに進める上で役立ちます - 会計ソフトなど各種ソフトウェア
- 帳簿付けや事務処理など各種作業に用いるソフトウェアの導入も早めに行うことをおすすめします
会社設立そのものが完了しても、事業活動の準備が整っていなければ会社として活動ができません。会社設立関係とあわせて、上記の準備も早めに進めましょう。
営業に必要になるもの
営業活動のために最低限必要なものとして、以下の2つが挙げられます。
- 各種契約書
- 法人クレジットカード
それぞれ詳しく解説します。
各種契約書
契約書は会社の事業活動におけるトラブルを防ぐために必須の書類です。
営業に必要となる契約書として、以下の具体例が挙げられます。
- 売買契約書
継続的かつ長期的な取引を安定して行う場合、売買契約書を用意するのが安心です。 - 業務委託契約書
業務委託を行う場合、委託する内容や責任の所在を明確化するために業務委託契約書を作成する必要があります。 - 業務提携契約書
業務委託と同様、業務内容や責任の所在の明確化のために必要な書類です。 - 請負契約書
- 秘密保持契約書
機密情報が漏れるリスクを最小限に抑えるため、秘密保持契約書を用意するのが効果的です。 - 雇用契約書
従業員を雇用する場合、雇用契約書が必須といえます。
事業内容によっては上記以外の契約書が必要になるケースもあります。スムーズかつ安全な営業のため、契約書も早めに用意しましょう。
法人クレジットカード
事業に必要なものをスピーディーに購入するため、法人クレジットカードを作成するのがおすすめです。法人名義の口座を引き落とし口座に設定できる・社員用の追加カードを発行できるケースもあるなど、さまざまなメリットが用意されています。
一口に法人クレジットカードといっても会社によって異なる特徴を有するため、自社に合うカード会社選びが大切です。カード会社を選ぶ際にチェックしたいポイントとして、以下の3点が挙げられます。
- 申し込み基準
申し込み基準を満たしていなければ審査に通過できる可能性がありません。まずは申し込み基準を満たしているかチェックしましょう。 - 追加カードの可否
すべての法人クレジットカードで追加カードが発行できるわけではないため、社員用の追加カードの発行可否もチェックが必要です。 - 特典の内容
単純に特典が充実しているかだけでなく、自社に合う特典が用意されているか確認する必要があります。
会社設立時の資金調達
事業内容によっては、創業直後に多額の資金が必要になります。数百万を超える金額をすべて自己資金でまかなうのは容易ではありません。
この章では、会社設立時に実施できる可能性のある資金調達方法を紹介します。
※今回紹介する内容は2023年5月時点の情報に基づきます。資金調達方法の実施を検討する際は、必ず最新の情報をご確認ください。
会社設立時に使える補助金・助成金
ひとつは補助金や助成金の活用です。
補助金と助成金は、いずれも受給した資金を返済する必要がありません。自社の資金として利用することができます。使用用途や条件が定められているため完全に自由なわけではありませんが、返済の負担がない点でメリットの大きい資金調達方法です。
補助金と助成金それぞれの特徴を紹介します。
【補助金】
- 交付主体:補助金は経済産業省や地方自治体が交付主体の制度が多いです
- 審査の有無:補助金は審査があります。要件を満たしている場合でも、審査に通過しなければ支給を受けられません。
- 受付期間:補助金は申請の受付期間が短いため、手早く準備する必要があります。
- 受給額:助成金に比べて受給額が大きめの傾向です
【助成金】
- 交付主体:助成金の多くは厚生労働省が交付主体となります
- 審査の有無:助成金は原則として審査がありません。要件を満たしていれば支給を受けられます。
- 受付期間:補助金のように受付期間に定めがあるケースは少なく、随時もしくは長期募集している制度が多いです。
- 受給額:制度によりますが、補助金よりは受給額が少なめです。
会社設立時に申し込める補助金・助成金の具体例を5つ紹介します。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継やM&Aを契機に新たな取り組みを行う中小企業などを支援する制度です。ゼロから会社設立をする場合ではなく、他者から事業承継を行う場合に利用できる制度といえます。
複数の種類がありますが、今回は事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)の【Ⅰ型】創業支援型について紹介します。
- 対象者:以下2つの要件を満たす
・事業承継対象期間内において中小企業を設立、もしくは個人事業主として開業する
・創業にあたって廃業を予定する者から経営資源を引き継ぐ - 補助率:補助対象経費の3分の2以内
- 補助下限額:100万円
- 補助上限額:600万円
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は中小企業による経営革新・試作品開発・生産プロセス改善などを目的とした設備投資を支援する制度です。名称に「ものづくり」と入っていますが、製造業などのものづくりを行う業種に限らず、幅広い業種を対象としています。
今回は通常枠について、15次締切分の公募要領から概要を紹介します。
- 対象者:資本金・常勤従業員数が一定以下である中小企業者
※中小企業者の要件は業種によって異なります - 基本要件:以下の要件をすべて満たす事業計画(3~5年)の策定が必要です
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%増加
・事業計画期間において、毎年の事業場内最低賃金の水準を地域別最低賃金プラス30円以上とする
・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加 - 補助金額:従業員数によって以下のように異なります
・5人以下:100万円~750万円
・6~20人:100万円~1,000万円
・20人超:100万円~1,250万円 - 補助率:2分の1 ただし、小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は3分の2
IT導入補助金
IT導入補助金は中小企業や小規模事業者のITツール導入にかかる費用の補助を目的とした制度です。物流関連からバックオフィス系、営業支援ツールまで幅広いツールが対象となります。
今回は通常枠について、令和5年3月に公表された公募要領を基に紹介します。
- 対象者:生産性の向上を目的にITツールを導入する中小企業または小規模事業者
- 対象経費:ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、ツール導入に関連する諸経費など
- 補助額
・A類型:5万円~150万円未満
・B類型:150万円~450万円以下 - 補助率:2分の1以内
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)は、創業や販路開拓などに取り組む中小企業者等が利用できる助成金制度です。中小機構・都道府県・金融機関等が造成したファンドの運用益をもとに中小企業者等の支援を行います。
助成金の対象者や金額は自治体によって異なるため、事業を行う自治体の案内をご確認ください。今回は一例として、北海道中小企業新応援ファンドの創業支援分野の内容を紹介します。
- 対象者:道内の中小企業者等
- 上限額:1,000万円
- 助成期間:最長1年
- 助成率:2分の1以内
地域雇用開発助成金
地域雇用開発助成金とは、雇用機会が特に不足している地域等で事業所の設置および求職者等の雇い入れを行う場合に利用できる助成金です。要件を満たしていれば、創業時でも利用できます。
受給要件は受給1回目の場合と受給2・3回目の場合で異なりますが、今回は1回目の受給における要件を紹介します。
地域雇用開発助成金の支給対象となるのは、以下すべての要件を満たす事業者のみです。
- 必要事項を記載した計画書を労働局長に提出する
※創業の場合は通常の必要書類に加え、申請事業主の職歴書の提出も必要です。 - 事業の用に供する施設や設備を所定の計画期間内に設置・整備する
- 対象の地域に居住する求職者等を計画期間内に一定以上雇い入れる
- 事業所における労働者数が計画日の前日における数と比較して一定以上増加している
助成金の額は、事務所の設置や整備にかかった費用と対象労働者の増加人数によって決定されます。
会社設立時に使える創業融資制度
会社設立時の資金調達として、創業融資を利用する方法もあります。融資は将来的に返済の必要がありますが、支給されるまでの期間が補助金や助成金よりも短いため、スピーディーな資金調達手段として効果的です。
前提として、創業融資とは創業時に利用できる融資の総称です。創業時に申し込める融資はすべて創業融資と呼ばれます。創業融資という名称の制度が存在するわけではありません。
会社設立時に使える創業融資制度として、具体例を4つ紹介します。
新創業融資制度
新創業融資制度とは、新たに事業をはじめる人や事業を始めたばかりの人を対象とした融資制度です。日本政策金融公庫の融資制度であり、ほかの融資制度と併用することで無担保・無保証人で融資を受けられます。
新創業融資制度の概要を紹介します。
- 要件:以下2つの要件を満たす必要があります
・新たに事業を開始する、もしくは事業開始から税務申告2期を終えていない人
・新たに事業を開始する人・事業開始から税務申告1期を終えていない場合、創業資金総額の10分の1以上の自己資金があり確認できる - 資金用途:設備資金および運転資金
- 融資限度額:3,000万円 うち運転資金1,500万円
- 返済期間:併用する各融資制度が定める返済期間以内
利率は資金の使い道や返済期間などの条件をもとに決定されるため、申込時点では正確な利率の確認はできません。
新規開業資金
新規開業資金とは、新たに事業を開始する人、もしくは事業開始からおおむね7年以内の人を対象とした融資制度です。
新規開業資金の概要を紹介します。
- 資金用途:設備資金および運転資金
- 融資限度額:7,200万円 うち運転資金4,800万円
- 返済期間
・設備資金:20年以内
・運転資金:7年以内
※いずれも据置期間2年以内 - 利率:日本政策金融公庫が設定する基準利率の範囲内
担保および保証人は、事業者の希望を聞きながら相談・対応してもらえます。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、若者/シニア起業家支援資金は、名前の通り女性および一定の年齢の人を対象とした融資制度です。
女性、若者/シニア起業家支援資金の概要を紹介します。
- 要件:以下2つの要件を満たす必要があります
・新たに事業を開始する、もしくは事業開始からおおむね7年以内の人
・女性または35歳未満か55歳以上の人 - 資金用途:設備資金および運転資金
- 融資限度額:7,200万円 うち運転資金4,800万円
- 返済期間
・設備資金:20年以内
・運転資金:7年以内
※いずれも据置期間2年以内 - 利率:日本政策金融公庫が設定する特別利率の範囲内
※どの特別利率が適用されるかは条件によって異なる
要件と利率以外は前項で紹介した新規開業資金と同じ内容です。女性、若者/シニア起業家支援資金は、新規開業資金よりも対象者が狭く、より有利な条件で利用できる融資制度といえます。
制度融資
制度融資とは自治体・金融機関・信用保証協会の3者が連携して提供する融資制度です。自治体が独自に実施する制度であるため、対象者や融資限度額などの各種条件は自治体によって異なります。
制度融資に共通してみられる特徴として、以下の3点が挙げられます。
- 申し込み先が自治体である
- 金利が低め
正確な金利は自治体によって異なりますが、全体的に日本政策金融公庫や民間の金融機関などが提供する融資よりも金利が低めの傾向です - 審査にかかる時間が長め
自治体・金融機関・信用保証協会の3者によって審査が行われるため、審査にかかる時間も長くなりがちです
オンラインアシスタント・秘書サービスの利用もあり
今回紹介したように、会社設立時に必要な事務作業が多いことは事実です。しかし、書類提出や手続きなどの事務作業が発生するのは会社設立時だけではありません。従業員の増減をはじめ、さまざまな場面で事務作業が必要です。
バックオフィスが多いと本業に割けるリソースが小さくなり、効率が悪くなる恐れがあります。本業に集中するためには、バックオフィス業務を外注するのがおすすめです。
バックオフィス業務の外注を検討されている方は、ぜひオンラインアシスタント・秘書サービスの「SUPPORT+iA(サポーティア)」にご依頼ください。
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