【徹底解説】会社設立のメリット・デメリットとは?個人事業主との違い、会社設立の流れを詳しく解説!
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個人事業主が会社を設立する「法人成り」は、メリットやデメリットを理解した上で、適切なタイミングを見極めて行う必要があります。ただし、タイミングや具体的な利点がわからず、会社設立を躊躇する人も多いでしょう。
今回は、会社設立のメリット・デメリットや会社と個人事業主の違いなど、会社設立に関して知っておきたい情報を解説します。会社設立の流れも紹介しておりますので、法人成りに向けた情報収集に活用いただければ幸いです。
目次[非表示]
- 1.個人事業主と会社(法人)の違い
- 1.1.事業開始の手続きや費用
- 1.2.税金
- 1.3.経費可能な範囲
- 1.4.取引先や金融機関での信用面
- 2.会社の種類
- 3.会社設立のタイミングは?
- 3.1.消費税の課税が始まる前
- 3.2.大きな利益が出た・将来的に大きな売上や利益の予測ができている
- 3.3.新規取引を始めたい
- 3.4.金融機関から融資を受けたい
- 3.5.許認可が必要な事業である
- 3.6.従業員を採用したい
- 4.会社設立のメリット
- 4.1.節税対策を行いやすい
- 4.2.法人税は累進課税ではない
- 4.3.経費となる範囲が広い
- 4.4.消費税免除期間がある
- 4.5.取引における信用
- 4.6.融資・資金調達において有利
- 4.7.決算時期を自由に設定できる
- 4.8.欠損金は10年繰越可能
- 4.9.相続税がかからない
- 5.会社設立のデメリット・注意点
- 5.1.会社の設立にも解散にも時間とコストがかかる
- 5.2.事務作業が増える
- 5.3.赤字でも住民税がかかる
- 5.4.社会保険への加入
- 6.会社設立の流れ
- 7.会社設立にかかる費用
- 8.会社設立がしやすくなった?2022年の法改正について解説
- 8.1.定款認証手数料の改定
- 8.2.代表者住所、ネット登記情報が非開示に
- 8.3.起業に失敗した時の失業給付期間が延長
- 9.会社設立後の業務負担軽減にはオンラインアシスタントサービスの利用がおすすめ
個人事業主と会社(法人)の違い
個人事業主と会社の具体的な違いは、下記のとおりです。
- 事業開始の手続きや費用
- 税金
- 経費可能な範囲
- 取引先や金融機関での信用面
それぞれ詳しく解説します。
事業開始の手続きや費用
個人事業主は税務署に開業届を提出するだけで開業できますが、会社を設立する場合には法務局での登記が必要です。
法務局での登記には一定の費用がかかります。費用が発生する場面や内訳は後述しますが、株式会社を設立する際は、最低でも23万円程度の諸経費が必要です。登記完了後も、税務署や年金事務所などにおけるさまざまな手続きを行う必要があります。
税金
個人事業主と会社は、同じ事業を営む場合でも税制面や実務面で違いが生じます。もっとも大きな違いが、所得に対してかかる税金の種類です。
個人事業主の場合、所得税が課せられます。所得税は累進課税制度を採用しており、所得額が大きくなるほど適用される税率も高くなる仕組みです。
会社の場合、所得に対して法人税が課せられます。法人税の税率は一定であり、法人区分や規模によって適用税率が定められています。
ほかにも個人事業税や法人事業税・法人住民税など、個人事業主と会社で課せられる税金が変わる面は多いです。
経費可能な範囲
個人事業主よりも法人の方が、経費として計上できる範囲が広いです。具体的な例は「会社設立のメリット」で詳しく紹介します。
会社の方が経費にできる範囲が広いため、個人事業主よりも節税対策を進めやすい可能性が高いです。
取引先や金融機関での信用面
事業内容が同じであっても、個人事業主より会社の方が、取引先や金融機関からの信用を得やすくなります。事業規模の拡大や社会的信用の獲得を目指すのであれば、法人成りを検討するのが良いでしょう。
会社の種類
現在設立できる会社の種類は以下の4つです。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
それぞれの特徴について詳しく解説します。
株式会社
株式会社は株式を発行して資金を集める会社形態です。
株式会社の特徴として、出資者と経営者が異なる点が挙げられます。出資者である株主がオーナーとなり、会社の所有権を有します。経営者は株主による「株主総会」で選ばれます。ただし実際のところ、株主と経営者が同じであるケースが多いです。
株主は有限責任、すなわち出資金の範囲内で責任を負います。
株式会社は、毎期株主総会の開催が必要・決算公告が義務付けられているなど、他の会社形態よりも厳格なルールが多くみられます。ルールが厳格で設立・運用ともにコストがかかる分、ほかの会社形態よりも信用を得やすい傾向です。
合同会社
合同会社は持分会社の一種です。株式会社と同様に社員は出資金の範囲で責任を負う有限責任となります。
株式会社との大きな違いは、出資者と経営者が必ず同じである点です。出資者と経営者が同じなため自由度が高く、会社運営や利益配分に関する意思決定をスピーディーに実施できます。
株式会社よりも設立費用を抑えられる・決算公告の義務がないなど、全体的にコストが低い点が大きなメリットです。
合資会社
合資会社も持分会社のひとつです。無限責任社員と有限責任社員の両方によって構成されており、経営者は無限責任、出資者は有限責任となります。経営者と出資者が明確に分かれている点が特徴で、原則として出資者が経営に直接関わることはありません。
株式会社・合同会社は1名での会社設立が可能ですが、合資会社は無限責任社員と有限責任社員両方が必要なため、設立時に最低2名が必要です。
合同会社と同様に、コストの低さ・自由度の高さなどがメリットとして挙げられます。
合名会社
合名会社は出資者全員が無限責任社員となる持分会社です。
合名会社の特徴として、社員一人ひとりが出資者であり経営者となる点が挙げられます。すべての社員が業務執行権や代表権を有しており、定款変更などに際しては全員の合意が必要となります。
合名会社は会社という形態ではありますが、個人事業主が集まって組織が作られているイメージです。
会社設立のタイミングは?
会社設立に適したタイミングとして、以下の例が挙げられます。
- 消費税の課税が始まる前
- 大きな利益が出た
- 将来的に大きな売上や利益の予測ができている
- 新規取引を始めたい
- 金融機関から融資を受けたい
- 許認可が必要な事業である
- 従業員を採用したい
会社設立に適したタイミングはいくつかあり、どのタイミングが良いかはケースによって異なります。事業に合わせた適切な選択のためには、それぞれのタイミングについてメリットやデメリットを理解することが重要です。
なぜ会社設立に適したタイミングといえるのか、理由を詳しく解説します。
消費税の課税が始まる前
個人事業主として消費税の課税が始まりそうであれば、その直前に会社設立をするのがおすすめです。
会社設立のメリットでも詳しく解説しますが、会社設立後2年間は原則的に消費税免除が適用されます。個人事業主も同様に、事業開始から2年間は消費税が免税となります。消費税は2年前の課税売上が1,000万円を超えた場合のみ課税対象になるためです。
消費税の課税が始まる直前に会社設立をすれば、消費税の免税期間を延ばすことができるのです。
大きな利益が出た・将来的に大きな売上や利益の予測ができている
大きな利益が出たときや、将来的に大きな売上や利益の予測ができており所得が大きくなりそうなタイミングでの会社設立もおすすめです。
個人事業主にかかる所得税は所得が大きくなるほど税率が上がる累進課税制度を採用しています。一方で法人にかかる法人税は、所得額に関係なく税率が一定です。したがって、所得が大きくなると、所得税より法人税の方が適用される税率が小さくなります。
法人成りを検討するべきタイミングとして、個人事業による利益が800万円を超える頃がひとつの目安といえます。
新規取引を始めたい
新規取引を始めたい・大きな取引を行いたいと考えるのであれば、会社設立を検討しても良いでしょう。
事業内容が同じであっても、個人事業主と会社では社会的信用の得やすさが大きく異なります。実際に、取引先を法人に限定している企業も少なくありません。
新規取引を始めたいと考える場合、よりスムーズに信用を獲得できるよう、法人成りを検討するのがおすすめです。
金融機関から融資を受けたい
金融機関から融資を受けたいときも、会社設立の検討をするべきタイミングといえます。
前項で解説したように、個人事業主よりも法人の方が信用を得やすいのは事実です。相手が企業ではなく金融機関の場合も同様です。すなわち個人事業主よりも法人の方が、金融機関からの融資を受けられる可能性が高くなります。
社会的信用の必要性が高まったタイミングは、会社設立に適したタイミングといえるでしょう。
許認可が必要な事業である
許認可が必要な事業である場合、個人事業主として活動するのではなく、会社を設立するのがおすすめです。
飲食店や建築業など特定の事業を営む場合、事前に許認可を得る必要があります。ほとんどの場合は個人事業主でも許認可を受けられますが、ハードルが高いのは事実です。また許認可が必要な事業は社会的信用が求められる事業でもあり、個人事業主では事業展開が難しいともいえます。
許認可が必要な事業を営むのであれば、会社設立をした上で進めるのが効率的です。
従業員を採用したい
従業員を採用したい場合にも、個人事業主よりも法人形態の方が適しています。
会社ならではの安定性や厳格なルールの存在などは、従業員の働きやすさや安心感にもつながります。個人が運営する事務所よりも会社の方が求人への応募が集まりやすいのも事実です。
会社設立のメリット
個人事業主が法人成りすることで、得られるメリットは下記のとおりです。
- 節税しやすい
- 法人税は累進課税ではない
- 経費となる範囲が広い
- 消費税免除期間がある
- 取引における信用
- 融資・資金調達において有利
- 決算期間を自由に設定できる
- 欠損金は10年繰越可能
- 相続税がかからない
メリットについてそれぞれ詳しく解説します。
節税対策を行いやすい
会社設立は個人事業主にくらべて節税対策を行いやすく、税負担を抑えることが可能です。
法人ならではの具体的な節税対策として、以下の方法が挙げられます。
- 給与所得控除額で所得を減らす
- 従業員への退職金を損金として扱う
- 欠損金の繰越控除可能期間を長くする
- 消費税の課税事業者のタイミングを遅らせる
法人税は所得に対して課せられるため、利益が増えると負担する税額は大きくなります。しかし個人よりも実施できる手段が多く、細かな節税対策を行えるため、個人事業主より税負担を抑えやすいです。
法人税は累進課税ではない
法人税は所得税と異なり、累進課税を採用していません。収入が増えても税負担を抑えやすい点は大きなメリットです。
個人事業主の所得税は累進課税です。所得が少ないときの税率は低いですが、所得が増えれば税率が上がり、最高税率は45%に設定されています。課税所得が900万円を超えると、所得税は33%になります。
一方で法人税率は最大でも30%です。資本金1億円以下の中小企業で年間所得が800万円以下の部分については税率15%と、所得税よりも低い税率が設定されています。
個人事業主で年収が多い人は、法人成りしたほうが節税できる可能性が高いのです。
経費となる範囲が広い
法人は個人事業主にくらべ、経費(損金)となる範囲が広いです。経費に含められる支出が多いため利益を抑えやすく、結果として節税につながります。
個人事業主の場合は経費にできず、法人では経費として計上が可能なものの例は下記のとおりです。
- 生命保険料
- 国・地方公共団体への寄付金
- 退職金
- 従業員に対する給与や賃金・賞与の支払い
- 福利厚生費 など
ただし、交際費などの一部の経費は、条件を満たさないと損金の対象になりません。損金算入できる経費の種類や条件をしっかり確認するよう注意しましょう。
消費税免除期間がある
個人事業主と同じように、法人として創業後2年間(2期間)は原則的に消費税免除が適用されます。
事業における消費税は、2年前の課税売上が1,000万円を超えた場合のみ課税対象となります。
個人事業主として2年間事業を営み、課税事業者になる前に会社を設立すると、消費税の免除期間の延長が可能です。これにより2年間個人事業主を営み、その後会社を設立する場合、最長4年間にわたって消費税を免除できます。
注意点として、法人の消費税免除期間の適用を受けるためには、売上・給与・資本金などの条件を満たす必要があります。資本金等の要件を満たさなければ消費税の免税を受けられないため、事前の確認が大切です。
取引における信用
法人成りは取引における信用が高く、個人事業主にくらべると資金調達や取引先の確保において優位な点は間違いありません。
実感できるメリットとして、以下の具体例が挙げられます。
- 取引先を確保しやすい
- 販売拡大で仕事の幅が広がりやすい
- 人材採用の募集が集まりやすい・優秀な人材を雇用しやすい
- 資金調達しやすい
たとえば、必要書類の提出を済ませた会社設立は、事業情報がオープンのため外部から情報を把握しやすいです。資本金や住所、代表者についてなどの情報を謄本から確認できるため、取引先としては安心して取引ができます。
また、取引先を法人に限定している企業は多く、法人成りすれば事業規模の拡大や仕事の幅を広げることが可能です。
融資・資金調達において有利
法人は社会的な信用の高さや財務増強を判断しやすく、融資・資金調達でも有利に働きやすいです。
たとえば、個人事業主は家計と事業のお金の境界線は曖昧になりやすく、金融機関も融資判断は難しい傾向にあります。その結果、融資を断られたり、高い金利を要求されたりすることもあるでしょう。
一方、法人に関しては会社とプライベートのお金がきちんと分かれており、毎期ごとに損益計算書と貸借対照表を作成しています。そのため、金融機関側としては融資の判断がしやすく、結果、資金調達を行いやすいことになります。
決算時期を自由に設定できる
法人成りすると決算期間を自由に設定できる点もメリットです。
個人事業主の事業年度は1月から12月までとなり、決算事務と繁忙期が重なると業務負担は大きくなります。一方、法人は業務量に合わせて決算時期を調整できるので、繁忙期以外を決算にすれば業務の平準化が可能です。
欠損金は10年繰越可能
法人成りによって最大10年間の欠損金繰越控除の適用を受けられます。損失の繰越期間が長いため、損失が無駄になる恐れが小さく、控除を最大限に活かせるでしょう。
欠損金とは、益金から損金を差し引いた金額がマイナスとなった場合の金額で、税法上の赤字を指します。欠損金は、確定申告で青色申告書を提出することで、一会計年度や一営業年度の勘定を翌年度に持ち越す「繰越」が可能です。
個人事業主の繰越控除は翌年以降3年間ですが、法人には10年間の控除期間が設けられています。事業で赤字になった場合は、赤字を翌年以降に繰越し、翌年以降に発生する事業所得と相殺することが可能です。
赤字が大きい場合、繰越控除可能な期間が短いと使いきれない可能性は高くなります。繰越期間が長いほど赤字と相殺できる機会も多くなるため、節税効果が高いです。
個人事業主と法人では欠損金の繰越可能期間が大きく異なるため、効果的な節税を考えるのであれば法人成りしたほうが良いといえます。
相続税がかからない
相続税がかからなくなる点も、個人事業主が会社設立をするメリットのひとつです。
相続税とは相続に際して財産を取得したときに、相続財産の額に対して課せられる税金です。個人事業主の場合、経営者が亡くなると財産すべてが相続の対象となり、相続税が発生します。
一方で、法人には相続の概念は存在せず、相続税の負担は不要です。将来的に事業承継を考えているのであれば、相続税の負担を小さくするためにも、法人成りの検討をするべきといえます。
なお、中小企業では経営者が自社株を保有するケースが多くみられます。自社株は相続の対象であるため、内部留保が増えて自社株の評価が高くなれば、かえって相続財産が増える恐れがあるため注意しましょう。
会社設立のデメリット・注意点
会社設立には多くのメリットがありますが、デメリット・注意点も存在します。具体的なデメリットは以下のとおりです。
- 会社の設立にも解散にも時間とコストがかかる
- 事務作業が増える
- 赤字でも住民税がかかる
- 社会保険への加入
法人成りする際は、事前にデメリットや注意点も確認する必要があります。
会社の設立にも解散にも時間とコストがかかる
法人成りによる大きなデメリットのひとつが、会社設立や解散の際に、手続きのための時間と費用がかかる点です。
たとえば、会社設立時は定款の作成や登記申請、資本金の払込等が必要となります。株式会社を設立する際、資本金を除いて最低でも23万円程度の諸経費が必要です。会社の解散時には、法務局での解散登記の処理費用など、会社清算の費用が生じます。
個人事業主の事業に関する手続きは届出のみであるのに対し、法人は会社の設立時と解散時に小さくないコストが発生します。個人事業主では不要な時間と費用がかかる点は注意が必要です。
事務作業が増える
事務作業が増える点も会社設立によるデメリットです。法人の財務や会計はルールが厳格化されているため、個人事業主よりも必要な事務作業が多くなります。
会社設立によって増える事務作業の例は下記のとおりです。
- 社会保険や労働保険の手続き
- 株主総会の準備
- 税金の申告書類の増加
- 総務量の増加
社会的な信用を証明する上で大切な事務手続きですが、書類作成や申請作業は厳格で量も膨大となり、業務負荷は大きくなります。
負担を最小限にするため、事務作業は専門家への依頼や外注化を検討する会社が多いです。外部への依頼によって費用がかさむ点も考慮する必要があるでしょう。
赤字でも住民税がかかる
会社の場合、1年間の利益が赤字であっても「法人住民税均等割」を毎年支払う必要があります。
たとえば東京都の場合、利益の有無や赤字額に関係なく、法人住民税均等割として年間7万円を支払わなければなりません。資本金の額や従業員数など、会社の規模によっては均等割額がさらに大きい可能性もあります。また、法人住民均等割の金額は都道府県によって異なります。
個人事業主の場合、1年間の利益が赤字なら所得税や住民税は発生しません。しかし法人は、赤字や利益に関係なく必ず住民税がかかります。法人成りを検討する人は利益を上げている人が多いものの、赤字体質の人が法人成りする場合には注意が必要でしょう。
社会保険への加入
会社には社会保険への加入が義務付けられています。社会保険で支払う健康保険料や厚生年金保険料は、個人事業主の場合に支払う国民健康保険料よりも高い点が特徴です。社長一人で従業員を雇っていない場合でも、会社である以上は社会保険への加入義務があります。
従業員の社会保険料は会社と折半です。従業員数や給与が大きくなるほど、法人が支払う社会保険料額も大きくなります。
厚生年金は国民年金にくらべて将来もらえる年金額が多い点から、人材採用においては優位に働きやすいです。ただし、従業員を雇うほど保険料にかかる会社負担が大きくなる点はデメリットといえます。
会社設立の流れ
会社設立は即座にできるわけではなく、いくつかの工程を踏んで進めます。時間や費用がかかる場面もあるため、会社設立の流れを事前に把握する必要があります。
会社設立の大まかな流れは以下の通りです。
- 会社設立事項の決定
- 印鑑の作成
- 定款の作成・認証
- 出資金を払い込み
- 登記申請書類の作成・申請・審査
- 税務関係の手続き
それぞれの工程について詳しく解説します。
会社設立事項の決定
はじめに会社設立事項の決定を行います。会社の概要となる情報であり、後述する定款作成にも記載が必要な内容であるため、入念な準備が必要です。
会社設立事項として最低限決定するべき内容を紹介します。
- 商号:会社名のことです。商号に使用できる文字の規定や法人格の入れ方など、ルールを守る必要があります
- 本店所在地:会社の住所です
- 事業目的:会社が行う事業を明示する必要があります。適法性・営利性・明確性を兼ね備えることが大切です
- 資本金の額:資本金の額に上限・下限はありませんが、資本金があまりに小さいと融資申し込みにおける審査で悪影響につながる恐れがあるため、ある程度の額を用意しましょう
- 会計年度:財務諸表作成の区切りとなる期間です
印鑑の作成
法務局での登記申請を紙で行う場合、印鑑届書を提出する必要があります。そのため登記申請の前に印鑑の作成も必要です。
電子申請の場合は印鑑届出が任意であるため、必ずしも必要とは限りません。ただし会社設立後も印鑑が必要な場面は多いため、会社設立前に印鑑を作成するのが一般的です。
定款の作成・認証
続いて定款の作成および認証を受けます。
定款とは会社運営におけるルールをまとめた資料です。その性質から、会社の憲法とも呼ばれます。
株式会社を設立するためには、法人登記の前に定款を作成し、公証役場で公証人による定款認証を受ける必要があります。合同会社など持分会社の場合も定款そのものは必要ですが、認証を受ける必要はありません。
定款に記載する事項は以下の3種類に分けられます。
- 絶対的記載事項:定款に必ず記載しなければならない事項です。絶対的記載事項に漏れがあると定款が無効になります。
絶対的記載事項は以下の通りです
・商号
・事業目的
・本社所在地
・資本金の額
・発起人の氏名または名称及び住所 - 相対的記載事項:定款に記載がなくても問題がないものの、記載されていない場合は効力を発揮しない事項です。項目の例を紹介します
・取締役等の任期の延長
・利益の配当に関する事項
・会社の存続期間 - 任意的記載事項:定款へ記載する・記載しない、どちらでも問題のない事項です。具体例を紹介します
・役員報酬の決定方法
・株主総会に関する事項
・事業年度
必要事項に不備や漏れがあると、定款の認証を受けられません。定款作成のルールを入念に確認した上で作成し、認証を受ける前にも内容に問題がないかチェックする必要があります。
出資金を払い込み
法務局へ登記申請をする前に、出資金(資本金)の払い込みも必要です。定款認証と順番が前後しても問題ありません。
会社設立前は法人口座が存在しないため、発起人の個人口座に払い込みを行います。
出資金の払い込み後、以下の書類を用意する必要があります。
- 払い込みを行った口座の通帳 以下のページ
・表紙
・通帳表紙の裏面(支店名・口座番号・口座名義人などが記載されたページ)
・振込が記載されたページ - 払込証明書:登記申請における必要書類のひとつです
登記申請書類の作成・申請・審査
会社の本店所在地を管轄する法務局で登記申請を行います。登記申請に必要な書類は以下の通りです。
- 登記申請書
- 定款
- 登録免許税納付用台紙
- 発起人の決定書
- 発起人全員分の印鑑証明書
- 就任承諾書
- 法人の印鑑届出書
- 資本金の払込証明書
- 「登記すべき事項」を記載した書面又は保存したCD-R
内容に不備がなければ、登記申請から10日程度で手続きが完了となります。なお、会社設立日となるのは登記申請を行った日です。
税務関係の手続き
会社設立自体は法務局での登記申請が受理されれば完了となります。しかし会社設立後も必要な手続きが存在します。そのひとつが税務関係の手続きです。
本店所在地の所轄税務署に、以下の書類を提出する必要があります。
- 法人設立届出書
- 給与支払事務所等の開設届出書
以下の書類は必須ではありませんが、会社設立後に法人設立届出書等と一緒に提出するのがおすすめです。
- 青色申告の承認申請書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
会社設立にかかる費用
会社設立には一定の費用がかかります。今回は株式会社と合同会社、それぞれの設立にかかる費用を紹介します。
まずは会社設立で必ず発生する、法定費用と呼ばれる費用の金額です。
株式会社 |
合同会社 |
|
定款用収入印紙代 |
40,000円 ※電子定款の場合は不要 |
40,000円 ※電子定款の場合は不要 |
定款認証手数料 |
30,000円~50,000円 |
不要 |
謄本手数料 |
1ページ250円 合計2,000円程度 |
不要 |
登録免許税 |
資本金の金額×0.7%または150,000円 いずれか大きい方の金額 |
資本金の金額×0.7%または60,000円 いずれか大きい方の金額 |
合計 |
22万~ ※電子定款の場合は18万~ |
10万~ ※電子定款の場合は6万~ |
株式会社と合同会社では、会社設立費用に10万円以上の差があります。
法定費用に加え、株式会社・合同会社ともに以下の費用もかかります。
- 印鑑作成や印鑑証明書代などの諸経費:10,000円程度
- 電子定款の場合 PDF編集ソフトやICカードリーダーなど:数千円~数万円程度
会社設立を専門家に代行依頼する場合の報酬相場は、株式会社・合同会社ともに5〜10万程度です。
会社設立がしやすくなった?2022年の法改正について解説
2022年の法改正により、以前に比べると会社設立がしやすくなったといえます。具体的な理由は以下の3つです。
- 定款認証手数料の改定
- 代表者住所、ネット登記情報が非開示に
- 起業に失敗した時の失業給付期間が延長
それぞれ詳しく解説します。
定款認証手数料の改定
2022年の法改正前は、定款認証手数料が一律で5万円でした。法改正により、以下のように改定されています。
- 資本金の額等が100万円未満:3万円
- 資本金の額等が100万円以上300万円未満:4万円
- 資本金の額等が300万円以上:5万円
定款認証手数料が引き下げられたため、会社設立時の費用負担が小さくなっています。
代表者住所、ネット登記情報が非開示に
以前は法人登記情報を閲覧できるネット上の有料サービスで、代表者住所も閲覧可能な状態でした。
2022年の法改正により、代表者住所はネット上で非開示となりました。ネット上での住所開示に抵抗がある人は少なくないため、法改正により会社設立がしやすくなったといえるでしょう。
なお法務局では代表者住所の閲覧も可能です。
起業に失敗した時の失業給付期間が延長
雇用保険の受給期間は原則として離職翌日から1年間です。この期間を過ぎると雇用保険の基本手当を受け取れません。
しかし法改正により、離職後に創業した場合は、起業から廃業までの3年間を受給期間に含まないという特例が生まれました。受給期間の延長により、離職後の起業にチャレンジしやすくなっています。
会社設立後の業務負担軽減にはオンラインアシスタントサービスの利用がおすすめ
会社設立はメリットが多い一方、デメリットもあるため会社設立の必要性は十分に検討することが大切です。会社設立によって事業の社会的信用を高め、事業のしやすさが高まり、理想のビジネスプランの実現に有効でしょう。
デメリットとしてバックオフィス業務の増加は予想されますが、外注化で事務作業における負担を減らすことが可能です。
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