法人税等調整額とは?計算方法と仕訳を解説
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決算書に書かれている項目の1つに「法人税等調整額」があります。あまり聞きなれない言葉ですが、企業が取りまとめる企業会計と税務申告を行うための税務会計において生じる資産や負債のズレを解消するために用いられます。
この記事では、法人税等調整額の基本的なポイントや計算方法、仕訳の行い方などを解説します。
目次[非表示]
- 1.法人税等調整額とは
- 1.1.税効果会計とは
- 1.2.企業会計と税務の処理の違い
- 1.3.調整の目的
- 2.調整対象
- 2.1.一時差異
- 2.2.繰延税金資産と繰延税金負債
- 3.税効果会計と実効税率
- 3.1.実効税率
- 3.2.繰延税金資産と繰延税金負債の計算
- 4.法人税等調整額の勘定科目と仕訳
- 5.法人税等調整額の基本を押さえ、正しく納税を行おう
法人税等調整額とは
法人税等調整額とは、企業会計と税務会計のズレを解消するために用いるものです。企業会計は決算書を作成する目的で行い、税務会計は税金の申告書を作成するために行います。
企業会計と税務会計では、資産・負債・収益・費用・資本に関する勘定科目の認識に違いがあるため、生じてしまったズレを解消するために法人税等調整額という項目が設けられているのです。
法人税等調整額は損益計算書における勘定科目の1つであり、マイナス表示になることもあれば、プラス表示になることもあります。法人税等調整額が発生するときは、確定申告書の別表4に記載します。
税効果会計とは
税効果会計とは、企業会計と税務会計の差を調整する目的で行います。法人税などの税金は、企業が事業活動を通じて得られた利益に課せられますが、企業がとりまとめた損益計算書の利益はあくまで企業の損益を示すものであり、税務上のルールを正しく反映させているとはかぎりません。
そのため、税務上のルールをもとに法人税などを修正する一連の手続きを税効果会計といいます。具体的には、法人税等調整額という勘定科目を使って金額を調整します。
企業会計と税務の処理の違い
企業会計においては、例えば機械装置を10億円で仕入れた場合に何年使用できるかを自由に計上できます。5年間使うとすれば、毎年2億円の経費を計上することになります。
事業を行っていく面では特に問題となりませんが、法人税などの税金を申告する際には企業が好き勝手に経費を計上するわけにはいきません。機械装置などの減価償却は法律によって何年かけて償却すべきかが決められています。
機械装置の種類によって法定耐用年数は異なりますが、仮に10年で償却することが決まっている場合、1年間で経費として計上できるのは1億円となります。この場合は1億円の差が生まれてしまうので、税額の調整を行う必要があるのです。
調整の目的
法人税等調整額により企業会計と税務会計のズレを調整する目的は、企業が正しく法人税などを納めることを目的としています。税効果会計を行わなければ、本来企業が納めるべき税金との差が生じてしまうので、今後の事業活動にも影響を与える部分があり、正しく調整する必要があります。
税効果会計を行うことで、本当の当期純利益がわかり、企業の財務状況を正しく把握できるようになります。
税効果会計の対象となる会社は、すべての企業を対象とするものではありません。上場企業や金融商品取引法の適用を受ける非上場会社、会計監査人を設置している会社などが対象であり、その他の会社が導入するかは任意となっています。
調整対象
会計と税務の処理において、差異が解消される見込みがないものを永久差異、解消される見込みがあるものを一時差異といいます。法人税等調整額では、この一時差異が調整の対象となります。
一時差異
一時差異とは、会計に関する認識や計上するタイミングによって生まれるズレのことです。将来的に解消される差異が対象であり、具体的には賞与引当金や退職給付引当金などがあげられます。
将来減算一時差異
企業会計と税務会計との差が解消されたときに課税所得が減る効果があるものを「将来減算一時差異」といいます。具体的には、減価償却の超過や繰越欠損金の発生などが当てはまります。
将来加算一時差異
企業会計と税務会計の差が解消されたときに、課税所得が増える効果をもたらすものを「将来加算一時差異」といいます。具体例としては、資産評価益の否認や積立金方式による圧縮記帳などがあげられます。
繰延税金資産と繰延税金負債
繰延税金資産とは、将来的に法人税などを減らす要因となるものです。将来減算一時差異に含まれるもののうち、ズレが解消されたときに法人税などの金額を減らせるものは、繰延税金資産として計上されます。
一方、繰延税金負債とは将来的な法人税の金額を増やす要因となるものです。将来加算一時差異に含まれるもののうち、ズレが解消されたときに法人税が増えるものは、繰延税金負債として処理されます。
税効果会計と実効税率
税効果会計を行うことによって、資産や負債などのズレが解消されることになりますが、具体的な法人税額などを計算するときには「実効税率」を用います。実効税率は、法人が事業活動を通じて生み出した利益に対して、実質的に負担する税率のことを指します。
将来減算一時差異や将来加算一時差異によって計算された金額に実効税率をかけ合わせることで、税金がどれだけ増えたり減ったりしているかが分かります。
実効税率
実効税率の計算方法は、「{法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率}÷(1+事業税率)」によって計算されます。事業税率には、地方特別法人税率も含まれるので注意しましょう。
東京都の場合、資本金が1億円以下の普通法人では、実効税率は30.62%となっています。実効税率が対象とするのは法人の利益に対してであり、固定資産税などは含みません。
具体的に納める税金の種類は、法人税・地方法人税・住民税・事業税・特別法人事業税の5種類です。これら5つの税金の総称を実効税率と呼びます。
繰延税金資産と繰延税金負債の計算
繰延税金資産を計算するときの具体例を見ていきましょう。減価償却の計算において、当期は500万円を計上したとします。しかし、税務上は1年間で200万円までしか計上できなかった場合、実効税率を30.62%とすると以下のような計算になります。
(500万円-200万円)×30.62%=91万8,600円
この場合は91万8,600円が繰延税金資産となるので、法人税等調整額として計上されます。一方、繰延税金負債の計算例についても触れておきます。
当期に2年目の寄付金として100万円を支払ったとします。この寄付金は企業会計では2年目に計上されるものですが、税務会計では1年目に計上されるもので、実効税率は30.62%としたときの計算式は以下のとおりです(寄付金は全額を計上できるものとします)。
(100万円-0円)×30.62%=30万6,200円
税務会計では30万6,200円が費用として計上されますが、企業会計では計上されずに0円となります。2年目は企業会計上、100万円が計上されるので差し引くと繰延税金負債は0円となり、ズレが解消します。
法人税等調整額の勘定科目と仕訳
前の段落で紹介した繰延税金資産と繰延税金負債について、実際に仕訳を行うと次のようになります。まず、繰延税金資産の場合から見ていきましょう。
借方 |
貸方 |
---|---|
繰延税金資産 918,600 |
法人税額調整額 918,600 |
91万8,600円が繰延税金資産として借方に計上されており、増加分は法人税額調整額として貸方に計上して仕訳が行われます。一方、繰延税金負債については次のような仕訳となります。
借方 |
貸方 |
---|---|
法人税額調整額 306,200 |
繰延税金負債 306,200 |
30万6,200円が繰延税金負債として貸方に計上され、増加分は借方に法人税額調整額として計上する形で仕訳を行います。
法人税等調整額の基本を押さえ、正しく納税を行おう
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